コラム COlumn4


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1003「蛙鳴く声・短歌」
1002「自分への・短歌」
1001「言葉は衣食住である」

1003【蛙鳴く声・短歌】

5月9日付の朝日新聞長野版の文芸欄「信州歌壇」(草田照子選)に筆者の短歌が佳作として掲載された。
その作品を転載し、併せて「自歌自解」を書いてみたい。
  蛙鳴く声に誘はれ眠気さし
    アラビアンナイト読み止しにする  義人
「アラビアンナイト」は「千夜一夜物語」と訳され、わが青年期にダイジェスト版か一部分を読んだ記憶がある。
「読み止し」という言葉については以前から知っていた。ネット検索すると「しおりを挟んだ状態や机に積んである途中までの本を指します。これは読書の過程や状態を表す言葉であり、特に「読破」や「完読」「読了」などの用語と関連しています」とある。
「読み止し」という言葉は口語調で優しく、意味も温かく柔らかで示唆に富んでいる。多くの教訓や含意やヒントを含んでいると思われてならない。
「人生は書物である」というメタファー(比喩)。人間の生き方や考え方について、「読み止し」の語意や語音を当てはめてみたい。
日々の暮らし、創作するわが詩歌の在り方など・・・小さい不満はあるものの、間違ってはいないから、このままこの状態で生きていてよいだろう。
「読み止し」という言葉を用いると、筆者は反射的にメタファーの表わす世界を思い描くのだ。生き方や考え方について取り敢えず栞を挟んでおこう。これでよいのだと・・・(2026/5/10)

1002【自分への・短歌】

4月25日付の朝日新聞長野版の文芸欄「信州歌壇」(草田照子選)に筆者の短歌が二席入選として掲載された。
その作品と草田氏の講評を転載し、併せて「自歌自解」を書いてみたい。
自分へのご褒美という言葉あり
自分に甘い時代と思う  義人
草田照子「よく聞く上の言葉。その分、普段の暮らしの閉塞感や苦労もあるかもしれないが、作者のような見方も当然、ありだろう」。
「褒美」は、よく頑張ったから褒めてつかわすと、上層部から金品が附与されることをいったが、
「ご褒美」は最近の言葉で、育児や日常茶飯事をこなして大変だったと、自分が自分に与えるものをいう。
ご褒美手帖やご褒美シールも売っていると聞くからおどろく。
現代の閉塞感やストレスは大きく、時代における感覚の「今昔比」はできないが、商業主義に乗っかった「ご褒美バーゲンセール」はひんしゅくものだ。
「蛍雪の功」といって、貧しくて苦しい環境にありながら蛍の光や雪明かりのかすかな灯りを頼りに学問に励み、その努力が結果として実を結ぶという勉学の熟語がある。
不安感や圧迫感を乗り越えてこそ穏やかな未来があり、それこそが自分自身へ与える褒賞ではないだろうか。
余計なお世話かもしれないがそんな考え方の今日この頃である。(2026/5/4)
1001【言葉は衣食住である】

言葉は衣食住である。「衣」でいうなら紋付袴、パジャマ、リバーシブルの三種類。「食」でいうなら握り寿司、茶漬け、三時のおやつの三種類、「住」でいうならパワーマンション、草庵、棟割長屋の三種類の言葉がそれぞれ挙げられる。

人間の衣食住はさまざまで言葉を背負って生き、言葉によって生かされている。自身のボキャブラリーの圏内から立ち上がることしかできないだろう。

わたしはリバーシブルのブルゾンを着て茶漬けをすすり、草庵に閉じこもって一日を終わる。ブルゾン、茶漬け、草庵はそれぞれ物であり言葉である。言葉から言葉が派生する。

一日の生活のなかの三種類の言葉の圏内をさまよい、それぞれの言葉のメタファー(比喩)をさがす。

実生活ではないメタファーの世界に漂うことがわたしの文芸活動である。

広義のメタファーとは隠喩、直喩、提喩、換喩の比喩表現をいうが、そもそもは暗喩を指す用語だ。

『ウィキペディア』には次のように載る。

「メタファーは、言語においては物事のある側面をより具体的なイメージを喚起する言葉で置き換え、簡潔に表現する機能をもつ。わざわざ比喩であることを示す語や形式を用いている直喩よりも洗練されたものと見なされている。

メタファーにもいくつかタイプがあるが、一例を挙げると「人生ドラマだ」のような形式をとるものがある。

メタファーは日常的に頻繁に用いられているもの、話している本人も気づかずに用いているものから、詩作などにおいて創造される新奇なものまで、様々なレベルにわたって存在している」。

メタファー(比喩)とは言葉の置き換えであり詩歌の創造でもあり、言葉とは事物でもあるだろう。

メタファーは、ヴィクトル・シクロフスキーが提唱した、

ロシア・フォルマリズムの芸術説である、日常見慣れた表現形式に或る「よそよそしさ」を与えることによって異様なものに見せ、内容を一層よく感得させようとする「異化効果」に連結する。

異化効果もメタファーの一表現であろうか。

わたしは現代詩も連句も俳句もメタファーの方法を用いてきたが、これからもこの方法を用いて創造してゆくことだろう。(2026/5/4)

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