8.遠くから眺めてみよう
~パッケージ~

 これまでJavaのプログラムを10cmの近さから虫眼鏡で見てきましたが、今度はぐっと離れて、1km先から双眼鏡で覗いてみましょう。

フルネームで呼んでちょうだい

 あなたの机の中は整理整頓できていますか? この引き出しはきれいにファイリングした書類、ここは文房具、ここは説明書、などきちんと分類整理できていたらどんなにいいでしょう。
 Javaのクラスも、ただゴロゴロあっただけでは収拾がつきません。そこでクラスをしまっておくパッケージというものがあります。



 パッケージp1にはクラスAとBとCがあります。 クラスBでAを利用する場合のように、同じパッケージ内であれば、単に「A」とクラスの名前だけで使えます。
 ところが別のパッケージから使用したい場合、「p1.A」のように、クラス名の前にパッケージ名とピリオドをつけてやらなければなりません。

 私が住んでいる集落は、有賀さんがとても多く、次が名取さんです。 今井さんも結構います。(お年よりは屋号で呼んだりします。)  パッケージを村、クラスを家とすると、この村には同じ苗字の家はあってはならないのです。 つまり、パッケージには同じ名前のクラスが二つ以上あることが許されません。 パッケージp1のクラスAといえば、たったひとつのクラスが特定できなければなりません。

 Javaが提供するたくさんのクラスもパッケージで分類されています。 文字列のクラスStringはパッケージjava.langに含まれます。 他にもたくさんのパッケージが提供されています。

 クラスをどのパッケージに入れたいかは、そのクラスの定義の先頭で、package文で指定します。 もし何も指定しなかった場合は、どのパッケージにも属さないのかというと、そうではなく、無名パッケージに入ります。

箱入り娘とおてんば娘

 クラスAをパッケージp1に入れるためには、その定義の頭に

package p1;

をつければよいのです。簡単でしょ。気をつけるのは必ず一番先頭に指定すること。 (ただしコメントは関係ありません。)

 同じパッケージp1内のクラスBでクラスAのオブジェクトを作るには

A obj;
obj = new A();

とすればよいし、別のパッケージp2内のクラスDでは,フルネーム「p1.A」で

p1.A obj;
obj = new p1.A();

とすればよいのです。 村中では「Aさんやーい」と呼べばよいのですが、よそ村からは「p1村のAさんやーい」と、村の名をつけて呼ばなければならないのです。

 おっと!!ここで注意しなければならないことがあります。 よそ村のDさんが「p1村のAさんやーい」と呼んでも、Aさんに返事してもらえないどころか、怒られてしまうことがあるのです。
 つまりクラスBはいいのですが、クラスDについては、上のやり方をすると「クラスAは使えません!」と怒られてしまうことがあるのです。 それにはクラスAの定義を次のようにします。

引っ込み思案のクラスAの定義

package p1;
class A {
 :
}

 classの前にはなにも付けません。 Aは「よそ村から声をかけられても知らん顔」となります。 下の図のように、別のパッケージからは使用できません。



ではクラスDからp1.Aを使えるようにするにはどうしたらいいのでしょうか。

社交はクラスAの定義

package p1;
public class A {
 :
}

 そうclassの前にpublicを付ければよいのです。 これでAは「よそ村の人に声かけられればすぐに答える。」となります。

 下のように、Aはどこからでも、つまり、どのパッケージのどのクラスからでも使用できます。

フルネームは面倒くさい

 クラスDがpublicなクラスAを使うとき、一々パッケージ名p1を頭につけてp1.Aとしなければならないのは面倒です。 こんなときクラスDに

import p1.A;

を追加すると、D中に現れるAはパッケージp1内のAを意味することになり便利です。

 クラスDはこんなかんじ。

package p2;
import p1.A;
public class D {
 :
}

 この中で

A obj;
obj = new A();

とするとクラスAは、p1内のクラスAになります。

 実はパッケージの効能に、クラスの名前の衝突を気にしなくてよい、というのがあります。
 もちろん同じパッケージ内では同じ名前のクラスがあってはなりませんが、別のパッケージであれば関係ありません。 もしパッケージp2にクラスAがあった場合、Dからは同一パッケージ内なので単にAで使用可です。 パッケージp1のクラスAは、先ほどやったようにp1.Aですね。下の図のようになります。



 もしこれを単にAと呼んで使いたいときは、クラスDに

import p1.A;

を入れればよいです。
 つまり、うちのp2村にもAさんがいるけど、これからいう「Aさん」はp1村のAさんだからね、と宣言しておくわけです。

 importに関してもうひとつ。 クラスDでパッケージp1内のすべてのクラスを、面倒なp1.を付けずに使いたい、という場合です。このときはDで、

import p1.*;

としてください。こんなかんじ。

package p2;
import p1.*;
public class D {
 :
}

 importに関してさらにもうひとつ。
 Javaの標準ライブラリには、先ほど挙げたようにjava.langやjava.utilなどのたくさんのパッケージがあります。 この中でもjava.langというパッケージには、基本中の基本となるクラスが含まれているので例外的に、一々

import java.lang.*;

を指定する必要はないことになっています。

どちらがお好み

 パッケージp2から、パッケージp1のクラスをいくつか使う場合、あなたのお好みはどちらでしょう?

タイプ1タイプ2
package p2;
import p1.*;
public class D {
 :
}
package p2;
import p1.A;
import p1.B;
import p1.C;
public class D {
 :
}


 タイプ2は、使用するクラスをすべてimport文で明記しています。 これは読むときにはありがたい、プログラム中突如出てきたクラスがどのパッケージに属するかがすぐわかるからです。
 でもプログラムを作るときは一々指定するのは面倒くさい、第一修正も多くなりそうだし、いやだな、という方は、タイプ1をどうぞ。
 どちらでもお好みの方をお使いください。

さかさまでもユニーク

 さてパッケージ名ですが適当に決めたら名前の衝突が起こりそうです。 そこで、ドメイン名をさかさまにしたパッケージ名を使うことを勧められています。

 たとえばドメイン名がxxx.comであれば、com.xxxがパッケージ名になるわけです。 ただしこれひとつでは都合が悪いので、この下にサブパッケージという形で、com.xxx.businessやcom.xxx.formなどを作るわけです。 その下にまた作ってもかまいません。

 通常ひとつのクラスはひとつのファイルに対応します。 クラスをしまっておくためのパッケージは、ディレクトリに対応します。 つまりパッケージ名のピリオドで区切られた部分は、それぞれディレクトリに対応します。 comの下のxxxの下のbusinessの下にビジネス関連のクラスを作成し、comの下のxxxの下のformの下に画面関連のクラスを作成するというようにすれば、 きれいに整理できます。

 ディレクトリには階層関係がありますが、パッケージ名にはないので注意しましょう。
 パッケージcom.xxxとパッケージcom.xxx.businessは別物です。それぞれに属するクラスには何の関係もありません。

 またこれに関連して

import java.awt.*;

とした場合、パッケージjava.awt内のクラスは対象となりますが、 たとえばパッケージjava.awt.event内のクラスは対象とならないので注意してください。