WHOの緩和ケアの定義は2002年に改訂されています。この定義の変更は、実は非常に意味のあることです。これからの医師は、新しい定義を踏まえて診療に当たることが求められます。 「緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、疾患の早期より痛み、身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな(霊的な・魂の)問題に関してきちんとした評価をおこない、それが障害とならないように予防したり対処したりすることで、クオリティー・オブ・ライフ(生活の質、生命の質)を改善するためのアプローチである。」(訳には自信がないので、原文も載せておきます) Palliative care is an approach that improves the quality of life of patients and their families facing the problem associated with life-threatening illness, through the prevention and relief of suffering by means of early identification and impeccable assessment and treatment of pain and other problems, physical, psychosocial and spiritual. ここには、命にかかわる状態でなければ緩和ケアにはかかれないとは、一言も書いてありません。しかし一般には、「緩和ケアには末期にならないとかかってはいけない」とか、「命を諦めざるを得ない人が受けるもの」と理解している人がまだ多数です。 1990年の定義では「治癒不能となった患者と家族に対しておこなうケア」と書かれており、定義変更の普及が遅れて古い定義の方がいまだに広く使われているため、誤解が多いのだと思います。 しかし現行の定義から考えると、「治らない人のため」「死が間近な人のため」の医療というとらえ方は、時代遅れなのです。古い定義は、意識して排除していき、新しい今の定義を正しく認識する人が増えて欲しいと思います。 |