昌平 絵画 場 所  絵本美術館「森のおうち」 期 間  2008,3,19〜5,20 

昌平君、やったね。元気で描き続けて!

2003年6月、第6回絵本学会が岡谷.の地で行われた際、事務局となったイルフ童画館へその運営の手伝いのためにたびたび足を運ぶこととなりました。
折りも折り、童画館の喫茶室で昌平君とそのお仲間が2人展をやっていたのです。そして私はすっかり昌平君の画のとりこになったのです。
その繊細で、かつ、てらいのない線、透明でにごりのない色、まるでブライアン・ワイルドスミスのよう!と直感的に思ったのです。
偶然ブライアンワイルドスミス氏が絵本学会の講演者として来られることになりました。そしてワイルドスミス氏本人が昌平君の絵をご覧になり、「僕の絵とよく似ている」とおっしゃって下さったというのです。昌平くん本人も嬉しかったと思いますが、ここまで成長された昌平くんに、ご両親がどんなによろこばれたかと思いました。
いつの間にかお父さん、お母さんとも親しくお話しするようになった私は、ご両親の素晴らしさに感激するようになりました。昌平くんはDAUN症候群をもっていましたから、印象はまるでピュアなてんしのよう。少しはにかんだひとなつっこい視線を送ってくれる青年で、親しくなると温かいやわらかな手を差し出して、惜しみなく握手をしてくれるのです。ご両親は今まで沢山のご苦労をされたと思いますのに、「僕たちは昌平のお陰で沢山の人々と出会い、豊かな人生を送っている」とおっしゃる通り、どんな時も昌平君と共にあります。昌平君が絵を描くという才能を花開かせたのも、彼にどうどうと皆の中で生きることを可能にされたためだと思います。

森のおうちでたびたび原画展をして下さる、画家伊勢英子さんが、イルフ童画館で絵本原画展を開かれることとなり、やはりその折も喫茶室に飾られた昌平くんの絵を見てくださったのです。その時以来、伊勢さんは昌平くんと画家同士のおつきあいをして下さっています。そして「大人こそ絵本を」と全国で講演をされ、ことに障害をのりこえて生きる人のとうとい姿をたえず応援されている、ノンフィクション作家の柳田邦男氏(伊勢さんの御夫君)とも出会い、昌平くんを励まして下さることとなりました。

森のおうちで始めて公開された伊勢さんの絵本『ルリユールおじさん』が、日本はもとよりフランスでも評判となり、ルリユールの住む町パリ6区区役所で原画展が行われることとなった時、私たちは昌平くん親子も含め8人でパリへ旅行するチャンスにめぐまれたのでした。それは楽しい旅で、パリ6区区役所でのお祝いレセプションをかわきりに、私たちは1週間中おだんごのようにパリの街を見学したのです。一番思い出深いのは、柳田さん、伊勢さんご夫婦が「ルリユールの街」を案内して下さった事でした。
この度昌平くんのオープニングに間に合うように柳田さんと伊勢さんから、素晴らしいメッセージが届きました。伊勢さんは、ルリユールの街歩きのことをふれておられます。

この展示をご覧になった皆様が、昌平くんの生きざまに打たれ、元気をもらって下さることを心から願っています。また、障害を持つ方々が豊かに生きる事が出来る政治が行われるよう、私たちも力をつくしたいと思います。
                                                                                                 (2008年3月)