退職給付会計と「隠れ債務」

(退職一時金、企業年金の支払予測額)−(年金資産の現在額)=積立不足

 90年代に入って、毎年のように企業年金の積立不足が発生するようになり、積立不足は年々膨らんで、”隠れ債務(借金)”といわれるようになりました。                                        
 退職給付会計制度では、企業年金資産は退職給付債務として財務諸表に計上されることになりました。     
つまり、積立不足は隠れた債務から見える債務(借金)となります。企業は積立不足があればその処理のため利益を大きく圧迫し、ひいては信用力の低下から資金調達にも影響を及ぼすこととなります。          
従来の企業年金と異なり、積立不足の発生しない確定拠出年金が注目されている理由はここにもあります。 
  

退職給付会計が与えるインパクト

 退職給付会計とは、退職金・企業年金に関する新しい企業会計上のルールです。
退職金(一時金)と企業年金(適格退職年金や厚生年金基金)については、従来、異なる会計上の処理が行なわれてきました。すなわち、企業の内部積立が主流であった退職金(一時金)については退職給与引     
当金で、企業の外部積立が主流であった企業年金については掛金拠出時の費用処理以外はオフバランスで、処理が行なわれてきました。                                            
 しかし、近年の資産運用利回りの低下、年金資産の時価下落等により、将来の年金給付に必要な年金資産の不足が生じており(積立不足)、企業の財政状態の悪化が財務諸表に正しく表示されていないというディスクロージャーの問題のみならず、投資・企業経営面からも重要な問題点となっていました。         
 このため、退職給付の支払方法や積立方法が異なっていても、実質的に同一レベルの情報が提供されるよう、退職給付制度に関する包括的な会計基準が設定されました。                            

企業年金と退職給付会計

積立不足の実態が企業年金の
帳簿で明らかになる

年金債務と積立金の差額を退職
給付引当金(積立不足)として
計上する

入社から定年までの全期間に対
応できる現時点での必要額を確
保する

年金債務には将来の勤務期間分
も含めて現時点での必要額を計上
する

従来は積立てた金額の単純合計
だったのが、運用結果を反映した
金額で計上される。そのため、運
用環境が悪いと積立不足が大き
くなりやすい。

年金資産は時価評価する

別々に計算されていた企業年金
と退職金が一本化される

企業年金と退職金(一時金)をま
とめて「退職給付」とする

退職給付会計のポイント

隠れ債務