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道路公団民営化問題に関する私の主張
(2002.8)
 

岩井参議院議員のHP、自由の広場[掲示板]への私の投稿内容を中心に加筆してまとめたものです。
 

目次
 

投稿内容(青字は討論パートナー投稿部分) 参考 H15.12.22 政府・与党案など、その後の経緯 New!!2004.1
道路関係四公団民営化の第三者委員会での議論が佳局を迎えています。 委員会のHPで公開される議論のなかで、根本的な疑問があります。
 
道路(ここでは高速道路)は誰が運営・管理すべきものかということです。
公団方式で有料道路で建設してきた理由は、財源難のなか建設を急ぐからということだったはずです。公団方式は今で言えば、PFIの会社を立ち上げ、民間資金で建設・運営することになりますが、最終的には、本来の道路管理者(国あるいは都府県)に引き渡す、BOT(Build-Operate-Transfer)方式であるべきです。
 
ところが、委員会での議論は、民営化会社が永久に所有し、当然永久に有料(償還後は料金は安くなりますが)ということになりつつあるようです。
 
民営化され、政府の株式を完全に手放したら(JR東日本がその状態)、適正料金は誰がコントロールできるのでしょうか。
民間会社の「適正」料金は競争がもたらしますが、高速道路の運営は考え方によれば独占状態です。民営化されたJRは大都市では私鉄とか都市間では高速バスとか航空とかがまた全体としては自家用車が競争相手になります。これらは交通「手段」間の競争ですが、道路は交通「路」です。高速道路のネットワークが不足している我が国では、お互いに代替路線となる高速道路どうしの競争相手はいないといって良い。東名高速と中央高速が競争で奪い合うのは東京名古屋間全区間を利用する車だけです。途中のIC間を利用する車の方が圧倒的に多い。競合路線を強いて言えば、東名と将来開通する第二東名ぐらいでしょうか。
また、交通機関の特性を考えた場合、道路を利用する自家用(トラック)車(乗り合いバスは別)とそれ以外の鉄道、航空とは競争の舞台がそもそも違います。ドアツードアなど、自家用車でなければならない交通目的というものがそもそもあるのです。
 
ですから、もうけすぎの会社(で放漫経営)となる恐れが十分にあります。だから、地方不採算路線を抱き合わせるというのは、憎むはずのプール制の考えです。
 
償還後有料のままにするかは民間会社でなくとも道路管理者でもできることです。道路交通量管理の観点からロードプライシングをとること、高速性を維持するための料金抵抗を負荷すること、あるいは議論があった高速道路の特別な維持管理費用を受益者負担させる(維持有料の考え)こと、などです。この維持有料の事業を効率化させるため、そのときPFI会社を立ち上げることは考えられます。
いずれにせよ、民営化議論のなかでは、本来の道路管理者の責務等の立場を明確にしておく必要があります。
 

HP:首相官邸ホームページからリンクされる道路関係四公団民営化推進委員会のHPには議事録等が公表されている。

 

PFI:Private Finance Initiative・・・・公共事業を民間の資金、活力で実施する制度

BOT:PFIで建設した施設を運営、償還後、本来管理者に移管する方式

 

 

 

 

 

 

民営化会社(高速道路株式会社)は独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構が公団から引き継いで保有する道路資産を借り受け運営する。45年で償還後は道路管理者に移管し、無料開放する。

高速道路の必要性とは別議論なのに(8/24)

今井委員長 そういうことになると思うんですが、国がどうしてもこれをやりたいというときに、新しい会社借金でやれるのはこの限度ですと、そうすると、それを一緒にして合併方式みたいにやるか、そんなものは要らないと国だけでやるかということになってくると思うので、やはり新しい組織がやれるものは、新しい組織がゼロだというわけにはいかないんです。やれるものについては、新しい組織がルールをつくって、優先順位を決めて考えなさいという閣議決定を与えられているわけだから、その範囲内で私は考えているつもりなんですけれども。[ 第11回会合(平成14年8月7日)議事録より]  
今井委員長の上記の発言にもありますが、議論している「新しい会社」が高速道路全体のことを考えているわけでなく、「借金でやれる」のはどこまでかであって、それ以外は「合併方式」とか「国だけでやる」のかに言及し、本来の道路管理の責任のあるものの決めることだと整理しているのです。
ですから、この委員会が個別の高速道路の是非を判断する立場にあるというのは誤解であって、(民営会社が)有料道路・全国プールとして実施できるのはどこまでか、が議論の対象となっているのです。
 
[上田]「高速道路がなくてもいいのか」という表現で対立を煽るような傾向があります。これでは冷静な議論は難しいでしょう。40兆円という債務をどう解決するのか。ここが民営化の論議のポイントで、高速道路を作るか否かというのは実は議論の焦点ではない。
 
高速道路を作る是非と有料制の議論がごちゃ混ぜになっています。
有料道路と道路一般の是非の議論ではアプローチが違います。
 
道路一般を作るかどうかの判断には、費用便益分析で考えますよね。有料道路でも同じですが、今の公団方式(民営化されても同じ)では、便益項目には通行料しか入りません。通行利用料金の総額で、建設費とその利息、維持管理費を返せるかだけの判断です。
 
非有料の全国幹線道路と言うことになると、税金で作りますから、便益には個々の自動車の走行便益以外にも地域開発あるいは全国ネットワークの利益も入れなければ、建設の是非が判断できません。
ゴンゾーさんのおっしゃる北陸道もそれら役割があるのですが、公団道路で作られたので、通行料で償還できるのか?等の狭い見方しかできない不幸があります。
 
通行料以外にも便益を認める(直轄方式とするか公団に税金を投入する)ことにし、料金単価(現行は全国一律約25円/km)を北陸道などは安くできるとします。そうしたら、下の国道の8号線ばかりでなく高速北陸道にも交通量が適正に配分され、それが道路網としては一番だと考えます。道路というのは、通行料を徴収するのが目的でなく、必要な車に多く通ってもらうのが最大の目標ですから。
 
もちろん、個々の車には高速利用の便益が生じますから、それを限度に料金を設定したらよいのです。ゴンゾーさん情報だと、それは現行料金よりはかなり低額のようです。
 
   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新直轄方式で高速道路を整備する27区間を定めた。

[岩井参院議員]高速道路は、各路線が国幹法に明記してあり、法律改正をしない限りこれを止めるわけには行かないのです。…法律上そうなっているのです。…道路公団がやらなければ国直轄でやるだけです。
 
国道は文字通り、原則は、国が直轄して建設管理する責任があります。公団方式は単に財源調達など作り方の問題だけではないでしょうか。今回の公団方式の行く末の結論に関わらず、法律で決まった国道の建設は、国道管理者の国に最終責任があります。ただし、法律を変えて、国民から作らなくて良いと言われるまでは、ですが、現在はその瀬戸際の状態だと思います。道路公団がこのまま悪者になって、国道そのものまでが同罪となってしまいそうなのが心配です。
 
今回のは「民営化」委員会で、首相指示で株式上場まで考えるとなっています。
ところで、有料道路事業のような超ハイリスクのPFIは民間会社の仕事としてふさわしいものでしようか?
 
30年(とか50年)先までの収入を担保する交通量予測が不可欠ですが、それは不可能と言って良い。強力な国においてもこのバブルの崩壊というものを正確には予測できなかった。公団をこの先、民間会社(PFI)に引き継ぐとして、国と会社との間の交通量リスクの分担をあらかじめ決めなければなりませんが、どうするのでしょうか?
 
JRの場合は収入だけでなく、費用の大半にも乗客数は比例しますから、乗客数の少しぐらいの変動であれば、企業努力で収支差を大きくするしがいがあります。社長OBの松田委員も得意げですが、その通りです。
 
(自社所有とした場合の…ここが重要ポイントです)道路の場合は、費用の大半は建設費の元利払いです。利子率の変動は企業努力ではたいしたコントロールはできません。一方の収入の通行料は利用交通量に比例しますが、それは企業努力によるよりは地域全体の交通量とかつまるところは景気とかに左右されます。また他の、猪瀬委員指摘のSAなどの営業収入はこれまた利用交通量に大きく依存します。もちろんサービス改善などで収入増が少しはあることは否定しませんけれど。
 
結局のところ、収入の多寡を決める大部は企業努力と無縁ですし、それから定額に近い費用をまかなう収支構造の事業では企業活動にふさわしいのか?という自問になります。前に言った「もうけすぎになり、放漫経営になる」おそれも引継条件とその後の運によっては十分考えられます。開通済み7000kmの優良不良混合の引継資産からの営業成績は新会社の企業努力とは関係が薄く、新規路線への対応が企業成績を左右しますから、通常の経営者だったら、新規投資には、ネットワーク完成直前などの交通量増が明らかな場合を除き、消極的に対応するのでしょうね。
 
いずれにせよ、民間会社の大規模有料道路の経営環境には不透明(=困難?)なものが予想されますし、国土幹線道路の場合は、その成否は国の責任にもなるので、私鉄でも出来る鉄道経営のJRと同じだというような考えは捨てて、慎重になるべきです。
 
 

 

 

 

高規格幹線道路(高速道路全体)14,000km(本四、圏央道など含み)

うち、11,520kmが高速自動車国道(すべて日本道路公団施行だった)

またそのうち、9,342kmが整備計画路線(供用約7,000kmあまりを含む)

供用済、事業中以外の1,999kmが未着工。今回の議論の対象となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

1999kmのうち27路線が新直轄方式で整備(国交省直轄で、日本道路公団あるいは民営化会社の有料方式でなくなる)

委員会では国鉄改革の時は巨額の国民負担があったが、今回はなるべく国民負担をゼロにしたいとしています。
 
でも、国鉄は政治路線の始末と労働組合の非生産的労働などの全ての浪費の結果ですが、高速道路は、有料道路としては失格でも、国土に必要なインフラとしては残ります。料金徴収を続ければ、あとの運営費だけでは赤字とならないそうです。
 
結果として無駄になった、国鉄の赤字路線とは別物です。
 
国民負担と言っても、もし道路特定財源からでも少しずつ返せば、全国的にみたら道路利用者(受益者)負担になり、不公平感は少ないはずです。当初、財源が少ない状態で「急ぐから有料で」と言って始めたので、時代が変わったいま、(一部不採算路線のみでも)有料会計を清算して、道路財源で、国債を償還するごとく、返すのであれば、道路は税金で作るべきだとする基本にかえることになり、理屈は通るはずです。
 
民営化会社が経営努力で返すべきとしているのは、東名名神等の混雑路線の利用者が地方非採算路線の借金をせっせと返せ、と言っているのと同じなのではないでしょうか?
 
   
[岩井]道路公団はそのままにして、内部改革を徹底する・・・・・、という案も当然あって然るべきでしょう。
 
いままでの道路公団の欠点を克服しようとしないで、すぐさま完全な民営化を目指すというのは、革命的ではありますが、工夫のなさに疑問を感じます。
 
「公団」を英訳すると、「Government company」となります。政府官庁組織だけでは政策を実行するのに足りないから、カンパニーすなわち会社的運営の公団を設置したのです。でも、できあがった公団はどれも「会社」という名からは遠い存在でした。だから、今、道路四公団を本来の「会社」に戻すことが重要ではないでしょうか?
 
各公団にはそれぞれの法律が定められています。その中にはその公団の業務が事細かに定められていますが、逆の見方をすると、定められていない業務は出来ない、してはいけない、ということになります。会社的運営はこのことからも不可能に近い。一般の会社と同じく、業務は原則自由に定款等で定められることとし、政府から公的業務を任されるところから、義務あるいは禁止事項を例外的に定めたらよいと思います。
 
道路公団で一番大きな「不制定=禁止」業務は、SAなどでの商売です。それが出来ないから、子会社(的なもの)を設立し、そこと公団本体の連結決算がないので、不透明状態を生む温床となっています。猪瀬委員指摘の子会社問題と同じですが、さらにIC周辺開発などにも積極的に対応すれば、より大きな社会的効果を生み、かつ、公団採算の改善にもなります。
 
本来の通行料金の設定でも同様です。定期利用料金、途中退入線(自由)料金などもその例ですが、混雑時(高)料金などは民間会社的な発想がなければ出来ません。鉄道でも航空でも需給関係で料金が決まっています。たとえばオフピーク時は団体運賃などで実質ディスカウントされています。高速道路に適用して、夜間料金、地方路線料金、長距離逓減料金(混雑・閑散区間抱きあわせになるので)などでディスカウントすれば、高速道路の空き容量の有効活用になります。その分交通量が大幅に増え、収入増になればよいのですが、それほどでなく、収入減になってしまう場合でも、地域全体の道路利用の合理化になるので、公的助成の理由にもなりますし、公団内では、幹線区間の混雑時期時間帯のピーク割増料金の設定で埋めることもできます。いくらプール制だからと言っても、料金まで一律(25円/km)というのは策がなさすぎます。一般の会社であれば、この料金決定に知恵を絞るのが経営そのものです。
 
「混んでいるのになぜ高いんだ?」への回答は、公的機関としての公団では無理で、カンパニーの公団でないと対応できません。
 
カンパニーの公団の競合相手は下をとおる一般道路です。「政府」会社である必要は、自社高速道路とその地域の国県道あるいは他の公共交通機関が一体的交通政策のもとに運営される必要があるからです。政府と無関係の完全民間会社になってしまったら、国あるいは県が並行する競合一般道路の整備をすることにより、会社高速道路の交通量が減少し、経営が立ちいかなくなる場合も考えられるでしょう。
 
   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

道路公団近藤新総裁は新会社の経営自主性を何よりも強く求めている。多角的経営の必要から。

[上田]40兆円という債務をどう解決するのか。ここが民営化の論議のポイント
 
40兆は50年で返せるから問題はない、とは今までの公式見解でした。理屈ではそうでしたが、交通量の伸びが当初想定したほどではなさそうなので、この返還スキームが危うくなっています。優良な日本道路公団はさておき、それ以外の三公団を加えるとその傾向が濃厚になります。
 
私も、そうであるならば、新規路線の凍結(当面?)とか直轄化はうなずける話です。
 
でも、その40兆円は郵貯の原資からの財投資金であることに、金融の世界から見て、留意する必要があるのではないでしようか?40兆円をこれからきちんきちんと返されたら、巨額の郵貯資金は行き場を失いますよ。現在タダ(のような金利)でさえ、金融需給がダブダブで、長期金利が史上最低なのにです。世の中、成熟社会で、確実・優良な投資先を求めている状態ですから、成功する民間ベンチャーがあらわれるまでは、高速道路投資は不可欠なはずです。
 
道路公団は、財投とか他の政府保証債とは別に、無保証の財投機関債(道路公団債券)を一部売り出し、何とか市場でさばけている現状からは、市場性から見て、財投資金を受け入れる資格はあるし、その機能も期待されるところです。問題は他の三公団の内容が悪いことです。その一つの首都高を石原知事が東京都で引き受けると言っているのなら、そうあるべきです。本四公団なんかは地元要求で作ったようなものなので、地元各府県の一層の資金的なコミットがあるべきです。
 
更に言うと、高速道路は揮発油税などの道路特定財源で作るべきです。道路財源は税というより、全ドライバーからの道路使用料という性格なのです。財源がそれでは不足するので、道路のために建設国債を大量に発行する。もし、市場でさばけなければ、財投が引き受ければ、上記の問題も解決します。建設国債の担保は道路資産と、毎年収入の道路財源ですから、国としての債務の問題は一切生じません。
担保がない赤字国債とは厳に峻別しなければなりません。
 
考えてみれば、現世代の者が高額の有料料金を支払って高速道路を建設し、次世代の者は償還後無料で(維持有料でも低額で)利用できるとは、世代間の不公平ではありませんか?
維持費と減価償却費は時々の世代が定額で負担するのに合わせ、建設元金についても超長期で返済するのが当然と思います。
 
   
2002-9/5の日経朝刊にJR東海葛西社長の「公団民営化の視角−『上下』『地域』判断誤るな」の「経済教室」が掲載されました。
 
氏は、道路四公団の(上下)分離(地域)分割の議論は、JRとは問題の質が異なるといいます(港湾、空港も道路と同じ上部オープンアクセスでJRとは異なる)。慧眼だと思います。
なかでも、道路を上下分離するならば、「下」は国道など全道路網を整合させた保有形態が望ましいとしています。
 
以下の私の意見も道路の保有形態(運営政策)に関し、同趣旨のものでありました。
 
[望月] カンパニーの公団の競合相手は下をとおる一般道路です。「政府」会社である必要は、自社高速道路とその地域の国県道あるいは他の公共交通機関が一体的交通政策のもとに運営される必要があるからです。
 
葛西社長はさらに、高速道路だけの上下分離だと、「上」の株式会社はその役割にふさわしい資産実体を備えたものにならないとし、上下一体のJR(東海)は地域分割され(たが)、のぞみ型高速化、品川新駅の開設などの大胆な投資が出来たとしています。
 
鉄道と道路などとの違いを適切に指摘する「森を見る」議論で、今回はまずは「経済教室」での学習が必要なのかな、と思いました。
上下分離の理由が、「下」を公的機関にして固定資産税非課税にしたいとするのでは「木を見る」議論の典型ではないでしょうか。
「上」「下」の議論で言うと、道路での「上」は高速バスなどの交通機関とSAなどでの路側利便施設運営などでないでしょうか。料金徴収あるいは維持管理業務は「下」の機関から単に運営委託される性格のものです。
JRはこの道路あるいは港湾、空港と違い、「上」の交通機関が独占ですから、その意味では参考になりませんが、葛西社長は道路の「下」は高速道路を含んだ国道全路線網だ、と言っているところに意味があるのです。