ウッドウイル版 日立 Lo−D HS−500 スピーカーシステム






バッフル巾(前板巾)を狭く、
両サイドをラウンド曲面処理、
ウーファーはオリジナルでは未処理の
落とし込み加工でバッフル面をフラットに
近い状態にしています。


サランネットは依頼者様が納品後に
選定した生地で製作する予定です。






素材はフィンランドバーチ合板、
側板仕上げはアメリカンチェリーつき板張り
バッフル/天/底は黒色エナメル半艶塗装仕上げ

バスレフダクト開口部はラウンド曲面加工





オリジナルのネットワークやアッテネーターは排除して
独立型端子に高音ユニット(保護用コンデンサー内蔵)と
低音ユニットに直接接続されています。





依頼者様宅に設置した”現代版 HS−500”の様子




 概 要

 この作品のオリジナルであるHS−500は1969年に日立製作所が発売したスピーカーシステムで
 日立のLo−Dブランドを不動の物とした名器として名高い製品です。
 当時の家具調三点式ステレオや単品コンポ(当時コンポと言う言葉は未だ無かった)のスピーカーなどは
 フロアー型が主流でしたがブックシェルフ型の高級タイプとして発表した製品です。

 総合電機メーカーの強みで素材開発力があり工場には博士がごろごろ居る(失礼)様な圧倒的な技術力を
 総動員して開発した世界初のギャザードエッジ採用のL-200ウーファーは振動板の不要な振幅運動を
 排除して低歪みでクリアーな音質を再現。贅沢にもアルミ丸棒を削り出しで製作したホーンに
 当時としては未だ普及していなかったプラステックフィルム振動板を採用したH-70HDツイーターの高音質。
 素晴らしい音質を誇った製品でした。

 依頼者様はこのHS-500に惚れ込み補修部品対策も考え数セット保有してオリジナルのまま、
 又は改造して楽しんで来たファンの方です。しかし販売から35年以上経過してユニットはともかく
 エンクロージャーの経年劣化が目立つ事で本格的な改造を考えられる事となりました。

 現代主流の回析効果対策を考えた巾狭いバッフルによる定位や臨場感の向上を狙い、
 直方体では有るものの、定在波対策を行って吸音材使用量の減少によるスピード感や音の新鮮さ
 などを改善する。良質な素材や充分な不要振動対策に補強対策をを行った構造とするなどが
 その改造目的です。

 依頼先検討リストの中に入れていただいた当工房では、上記のお話を聞かせていただきました。
 私はHS-500発売当時は高校生で知人の日立家電販売店で家電品の修理をするアルバイトを
 行って働いていました。その店はレコード販売もしている音や音楽に力を入れている店であった為に、
 発売直後のHS-500を店頭展示して何時でも試聴できる状態でありました。
 既に自作オーディオマニアを自負する私はそのHS-500の音を毎日聞いていた訳です。
 販売店にはメーカー開発担当者が製品誕生までのストーリー(販売促進用ですが)を聞かせてくれるので
 当然当時としては誰よりもこの製品の事を熟知していた訳です。
 この私の体験が”現代版HS-500”の製作依頼を受ける事となりました。

 オリジナル状態のHS-500を支給していただき、当工房製のネットワーク回路を通して製作開始までの
 数ヶ月間試聴していました。当時を懐かしんだり、現代主流の音質の違いを認識したりしていました。
 作品完成後にオリジナル状態と新しく製作したエンクロージャーに入れ替えた両者の比較試聴を行いました。
 完成した作品のチューニングの参考にと考えた比較試聴でしたが、その作業にあまり意味はありませんでした。
 それは圧倒的に音質が違うからです。本当に同じユニットなのか??と思う程です。

 HS-500オリジナルのエンクロージャー材質は硬質パーチクルボードです。木材をチップ状に砕いて接着剤で
 固めた合板です。直方体接合面の隅木による補強以外は単純な同厚六面の直方体です。
 ”現代版HS-500”は音響用合板としては最高級のフィンランドバーチ合板を採用してクリアーでスピード感の
 ある音質です。バッフル板は
二重厚36mm/その他は18mm厚で過度な強度にならないように配慮して、
 チューニングにより補強(構造的にでは無く音響的な)を行います。
 六面体内部の殆どの面に定在波減衰対策用反射板を内蔵して各部材の不要共振をも制御しています。
 使用量を半分以上に減らした吸音材の効果も有り新鮮でクリアーな音質が再現できました。

 試聴記は依頼者様に委ねますが、 ”現代版HS-500”の音がより自然で生演奏に近いと感じます。
 最新のユニットに全く勝るとも劣らないL-200とH-70HDには脱帽です。
 比べてオリジナルHS-500ではエンクロージャー素材や構造上の付帯音が付いてそれが
 ノイズ感として聞こえたり強いフィルターやコンプレッサーを通した様な音質に聞こえるのには
 少なからず驚きを覚えた事を記させていただきます。
 又、エンクロージャーの違いによりクロスオーバー周波数やユニットレベル迄もが変わって来るのだと
 言う事を改めて認識させられました。

 試 聴 記
 
お客様のホームページへ
 昨年の12月中旬に待ちに待った現代版HS-500が到着しました。
 HS-500が発売(1968年)されて数年後、店頭でHS-500から流れてくるLeontyne Priceの歌声に魅了されながらも
 当時高校生だった私には買えるような金額のスピーカーではありませんでした。

 それから30数年が経過し、2004年に程度の良いHS-500を知人から入手して以来、HS-500のオーソリティーである
 K&Kさんからアドバイスを受けマルチアンプで鳴らしてきました。

 http://members.aol.com/kksoundlab/
 そのおかげで現代スピーカーと比較して遜色のない音で鳴らす事が出来るようになりましたが、
 フロントのバッフル面がネットをはめる枠のため、奥に引っ込んでおり、これが現代スピーカーのようにラウンドバッフル

 だったらどんなに良いだろうとい思いから私と同年代でオリジナルのHS-500の音をよく知っているウッドウイルの
 柴田さんに制作をお願いしました。

 制作前の事前の電話やメールでのやりとりで安心してお任せ出来ました。
 
 完成した現代版HS-500は思っていたよりずっと美しく現代的でした。

 到着後3日目の状態で聞いてもらった知人のオーディオマニア2人の感想は
 『これが40年近く前のスピーカーの音 ?すごい!』と言ってしばらくフリーズ状態でした。

 それから2週間後、前出のK&Kさんにもお聞き頂きましたが、オリジナルと比較して
 『クリヤー』『ピュアー』『生まれのよさが十二分に感じられる音』 と言う評価を頂いています。

 到着から1ヶ月も経っていない状態ですが、私の感想も同様です。
 オリジナルのHS-500と比較すると低域の解像度のアップ、エンクロージャーの余分な振動が消えたための静寂感、
 広大な音場感・奥行感など素晴らしく向上しました。

 そして何より音ではなく音楽を楽しませてくれるスピーカーになりました。
 
 現在、現代版HS-500の他、JBL-4344Mrk2ALTEC A5等も鳴らしていますが
 オリジナルHS-500から現代版HS-500への変化は、 JBL-4343からJBL-4344Mrk2
 そしてALTEC A7からALTEC A5にしたときの変化より大きく満足しています。

 ますますJBLALTECの出番が減ることは間違いありません。
 後は、時間をかけてじっくりと自分の好みにチューニングして行きたいと思います。
 HS-500ユニットの優秀性を見事に引き出しながら美しい形に仕上げて頂いた
 ウッドウイルの柴田さんに感謝します。

 主な試聴CD
 ・ストラビンスキー 兵士の物語 
  パーヴォ・ヤルヴィ指揮 ドイツ・カンマーフィルハーモニー
 ・ヴェルディ レクイエム
  ニコライ アーノンクール指揮 ウィーンフィルハーモニー
 ・モーツアルト 交響曲38番
  小澤征爾指揮 水戸室内管弦楽団
 ・ベートーベン エグモント序曲
  ヴァーツラフ ノイマン指揮 チェコフィルハーモニー
 ・ヴェルディ 椿姫 アンナ ネトレブコ
  カルロ・リッツィ指揮 ウィーン・フィルハーモニー
 ・ビゼー カルメン アンナ モッフォ
  ロリン マゼール指揮 ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団
 ・ソフィー・ミルマン メイク サムワン ハピー
 ・ビル エバンス ユーマスト ビリーブ イン スプリング
 ・キース ジャレット インサイド アウト
 ・エラ フィッツジェラルド      エラ&ルイス


 仕 様
 1.ユニット:日立 Lo-D L-200 ギャザードエッジ採用の20cm口径ウーファー
        日立 Lo-D H-70HD アルミ削り出し/プラスチックフィルム採用のホーンツイーター
 2.クロスオーバー:オリジナルのネットワーク/アッテネーター/端子は未搭載とする。
           依頼者様製作のオリジナルのネットワーク回路 or マルチWayでの使用予定です。
 3.周波数特性:35Hz〜20KHz(-8dB)オリジナルデータによる
 4.入 力:20W(連続)
 5.音圧レベル:88dB/W/m
 6.インピーダンス:8Ω
 7.寸法(最大値):W300/H650/D420mm
 8.端 子:バナナ対応大型独立型
 9.エンクロージャー方式:バスレフ型(ダクト開口部ラウンド処理)
              バッフル板/背板両サイドはラウンド曲面加工
              定在波減衰対策用反射板内蔵
              試聴チューニングにより補強(音質調整用)と吸音処理実施済み
              両サイドの飾り付きサランネットが付属します。
 10.エンクロージャー材質:フィンランドバーチ合板 バッフル板36mm厚 その他18mm厚
 11.仕上げ:(側板):アメリカンチェリーつき板張り
             着色ウレタン吹き付け塗装(半艶仕上げ)
        (天/底/前板/背板):黒色エナメルウレタン吹き付け塗装(半艶仕上げ)