長野県上松技術専門校木工科の講師をした時の
実習風景を掲示板の書き込みにしていましたので、
ここに掲載します。


明日から行きます 投稿者:しばた 投稿日:2002/08/18(Sun) 20:37 No.4
皆さん今日は。明日8月19日から約1ヶ月間恩師のいる長野県木曽郡上松町にあります”上松技術専門校木工科”に手伝い行きます。http://www.avis.ne.jp/~agematu/index02.htm
自宅から片道2時間のドライブを楽しむ事になり、朝は眠いでしょうが1ヶ月ですから頑張りたいと思います。プロの木工家を目指す方なら知らない人はいないだろう有名な学校で生半可の覚悟では入学すら出来ない狭き門の学校です、著名な作家もたくさん輩出しています。私は3年前に上松技専のある木曽谷の山向こうの伊那谷にある伊那技専を卒業しました。冬は片道3時間で上松には通えませんでした。
狭き門と言う事では同じでして、入学の3年前から情報収集、担当教官への根回し?、この学校に入る為の学校にも入り、入学試験の面接ではプレゼンテーションまでして入学できたのでした。
そこの先生が上松技専に転勤(数年置きに移動しています)になり、昨年は依頼されながら出来なかった講師として今年はお手伝いする事となりました。学校は1年間ですが、アッという間に終わってしまい奥の深い木工技術のほんの入口しか体験することしか出来ません。卒業した後もこれらの先生は良く面倒を見てくれます、この機会に新技術を得ようと楽しみにしています。今計画中の作品などに採用する新手法を得られる事と思います。今年はどんな学生が集まっているのか明日が楽しみです。毎晩この掲示板にその日の様子を書き込みたいと思っていますのでお楽しみに。では明日。


行って来ました 投稿者:しばた 投稿日:2002/08/19(Mon) 21:49 No.5
皆さん今日は。上松技専での講師初日を終えて帰って来ました。まずは学校までの道のり案内を。
R20沿いの本家諏訪神社前を過ぎ、諏訪湖畔を回って塩尻峠を越えます。信玄と謙信が死闘を繰り返した古戦場で昔は難所だったとか。塩尻の街に入るとすぐにR19になります、地元ワイナリーが続き(美味しいです)、しばらくすると木曽路へと向かいます。地場産業の漆器工場、店舗が続きます。眼下には木曽川,JR中央線を左右上下に見ながら昔の街道宿をやり過ごします。谷も森も深くなる頃に幕府から続く木曽檜の御用林が見えて来ます。ここには森林浴発祥の地である赤沢自然休養林があり、学校はそこ迄の道の途中にあります。木曽谷は深く狭く険しい所で一番狭い所では助走すると反対側岸まで飛べそうな錯覚をする程です。学生数32名(女性10名)平均年齢は多分20代中から後半と思います。
皆さん社会経験を積んだ後に思いを新たに木工の世界に飛び込んで来た人達です。私も同じ類の動機で入学したわけです。今日は木工機械のメンテナンスで殆ど1日終わってしまいました。台風の影響か小雨のじめじめした中での初日でした。明日からは学生達が今製作している作品内容などを報告したいと思います。では明日。


2日目です 投稿者:しばた 投稿日:2002/08/20(Tue) 22:05 No.6
皆さん今日は。今日は良いお天気で上松から見る空は狭いですが森林浴しながら仕事している様で気持ちいいです。今日も午前中は木工機械のメンテナンスです、刃物を交換したり研いだりしていました。
午後は機械を使い出した学生さんが危険作業をしていないか監視?をしていました。機械は危険なので2,3ヶ月は単独では使用させず、監視付きとなるのです。毎年長野県の木工科では入院するような怪我人が出ます。木工機械は大きな回転刃を露出させながら作業するので誤った操作、不注意等で事故を起こしかねません。木工屋さんにはこれらの事故で小指のない人が多いのです!。怖い怖い、気を付けねば。今製作しているのは無垢材の框組整理箱(和風小型チェストみたいの)です。小さくとも家具製作の基本構造が多く盛り込められ、買えば高価になる様な手の込んだ高品質の家具です。卒業前の学校祭で展示販売されますが遠方からも来て抽選でないと購入出来ない程人気があります。さて明日はどんな報告をできますでしょうか?


3日目です 投稿者:しばた 投稿日:2002/08/21(Wed) 22:59 No.7
皆さん今日は。今日は涼しいと言うより寒く、出かける時には13℃しかありませんでした、この辺りでは今日から秋になったと確認できるような日があります。そうです今日からもう秋です。午前中は学生さん達が講義なのでその間は鉋の仕込みをしていました。鉋は購入してきたままでは使う事が出来なく、刃の研ぎ、台への取付、台の面出し等の技が必要です。技術専門校では色々なイベントがあり、その中に地元の森林組合?が企画した木工品展示販売会に出品します。学生達自身で出品作品をデザイン、制作しますがそのラフデザインを昼迄各グループに分かれて検討していました。私はと言えば只興味本位に回って歩き話を聞いて回るのでした。午後からはやはり機械加工の安全監視と材料加工方法の指導をしたりしていました。学生32名に対し先生2名では全てに目が回らず、誤った操作、手順で作業する人が出てしまうようです。学生達は最初に誤った方法を身につけると直すのが容易では無くなるので注意が必要なのでした。昨日の框組整理箱について。(ミニ家具講座です)框組とは箪笥(タンス)チェスト(多段引き出し)などの側板を漢字の”口/日/目”などの形状を枠で作り間を薄板などで埋めた構造を言います。強度充分で軽く材料を無駄にしない方法で高級品の殆どに使用されています。それに対し”板差し構造”は全てを無垢材で作ります、重く高価な物になります。もう一つ”フラッシュ構造”は口/日/目などの枠を安価な材料で組み、両面全体を合板でサンドイッチした物です。普及品、一部高級品でも採用している方法です、叩くと所々でボンボンと音がしますので分かります。この框組は両側板を引き出しが入る前板の枠と後ろ枠とを連結させて組上がっています。框組の枠への装飾、間に入る板の木目を選ぶなどして様々な表情を作る事が出来ます。学生達の框組整理箱には本体を載せる台(台座)と天板への装飾(支輪)が付きますので小型でも風格の有るデザインとなります。では今日はここまでです。


4日目です 投稿者:しばた 投稿日:2002/08/22(Thu) 21:09 No.8
皆さん今日は。今朝は久しぶりにR20沿いから北アルプスの槍ヶ岳から穂高連邦まで見えていました。
松本盆地周囲の山腹から湧いてきた雲が風に流されて、塩尻峠を越えて諏訪湖に霧となって降り注ぐ現象を横目にしながら今日も上松までの2時間15分のドライブです。木工科の実習風景の画像を週末にはアップしますのでお楽しみに。4日間学生さん達の機械操作を監視?、指導した成果が少し見えて来た様に見えます。操作姿勢が安定して来ましたし、自分がどんな作業をしているのか意味が分かって来たように思えます。全員集まって聞いた説明では分かったつもりでも、個別に作業する時には忘れたり間違えたりします。個人指導すると良く理解して貰えます。特に天然素材である木材は反りがあったり、綺麗な木目を生かした加工をするなど時々で操作が違うので難しい所もあります。この書き込み報告には返信大歓迎です、木工に興味有る方の質問も遠慮無くどうぞ。では又明日。


5日目です 投稿者:しばた 投稿日:2002/08/24(Sat) 11:15 No.10
皆さん今日は。昨晩は疲れて書き込みできませんでした。往復190Kmの通勤は疲れます。5日目は先生に頼まれまして学生さん達相手に話をしました。.私の技専での様子、製作した作品の話し。.独立開業から現在までの経過。.私(ウッドウイル)の作品の説明とコンセプト。学生達は何らかの形で木工と関わった生活を今後続けようと願っていますが、それを実現するのは簡単ではありません。そんな意味で卒業3年、現在進行形の私の話は学生達にとって参考になったかと思いますがどうでしたでしょうか?
普通の日本人が家具椅子等に囲まれて生活するようになってからまだ3,4世代しか経ていません、普及しだしたのは大量生産使い捨ての安易な製品でした。自然回帰、本物志向、色々な意味で自然木の良さを手作りで良心的に製作し、永く使い込む。この様な意識が人々に芽生えはしていますが、現実にそのような製品価格は量産品の数倍もしてしまいます。消費者は意識はあってもそのような買い物をする習慣が根付いていないので購入する方はまれです。そこに意識の先行する木工家とビジネスとして成功させる為の高い壁が生じているのです。私も頑張ります、学生さん達もめげづに頑張れ!!。


6日目です 投稿者:しばた 投稿日:2002/08/26(Mon) 22:35 No.11
皆さん今日は。臨時講師も2週目となりました。少しは学生達の特徴がつかめてきました。それにつられて質問も気軽にしてもらえるようにもなりました。今集中的に機械操作をしている学生達は明らかに上達したようです。この後又別のグループが操作をし始めるので同じように習熟して貰えたらと思っています。
機械操作は短時間で習熟できますが、手工具はそうは行きません。やはり一番難しいのは鉋です。
1枚の板、部材を削るのは何とか出来ても組立上がった作品の平面を出す。直線を出すなどの操作に入ると鉋の仕込み具合、削る技術の未熟さで削っても削っても削れない?事があります。刃が均等に研げていて良く切れる事、正確な位置に取り付けられている事、鉋台が必要な凹凸状に調整されている事。
鉋は刃ではなく台で削ると言われる程台の調整が微妙なのです。馴れると10〜20ミクロン厚の鉋屑が出るようになりますがそれは台が10〜20ミクロン以上に正確に調整されている事でもあるのです。
学生達はまだその精度の意味に気が付いていない人が多いようです。鉋の続きを明日もしたいと思います。
 Re: 6日目です ぷっしゅろっど - 2002/08/27(Tue) 16:58 No.12
 しばた 様、皆さん、こんにちは。往復190Kmは大変ですね (^^;。鉋は本当に難しいですね。刃を研  ぐにしてもやはりいい砥石と腕が無いと切れない、又はすぐに切れなくなってしまいますし...
 鉋台の調整が悪いと、刃に荷重が掛かりますし、花鰹?も厚みにムラが出てしまいます。きっちり調整 できたときの木の仕上がりや、向こうが透けて見える花鰹がほんと綺麗ですね。


7日目です 投稿者:しばた 投稿日:2002/08/27(Tue) 22:33 No.13
皆さん今日は。ぷっしゅろっど さん今日は、この書き込みが参考になれば幸いです。今日も鉋について話したいと思います。作品も完成に近づいて来ると仕上げ削りという鉋がけ作業がありますが仕込みの正確でない鉋ではこの削りが出来にくいのです。この作業で仕事が進まずに焦り、気落ちし、間違った方法で問題解決する学生が同期でもいましたが、ここが踏ん張り所です、難しくともしっかり仕込みを終えて作品を正確に仕上げたい物です。鉋の仕込み(調整には)の中の”刃の研ぎ”について。鉋の刃は中心70、80%を直線に残りを刃の両端で肩が下がる様に丸めて研ぎます。削った面の刃と刃との境目に段さを作らない為です。刃の断面は平面に研ぎます。直線に研ぐのは難しく、まして丸く研ぐのは更に難しいのです。研いでいる内に砥石の平面が崩れてきます、そうすると思った様には研げずに刃が崩れてきますので今度は砥石を平面にする研磨が必要になります。これも手間暇掛かる仕事です。更に刃の裏面を正確にピカピカの平面にしなければなりません、家具用の鉋は刃の裏側に裏刃という逆目を防止する刃が付いています。この刃の両面も研ぎますが互いの刃の裏側どうしが完全に密着しなければなりません。家具に使う木材は木目の流れる方向が複雑です、それらを平滑に削るには裏刃が正確に仕込まれている事が必須です。鉋の台から出た刃の出っ張りと台と裏刃も平行でなければなりません。これらは刃の研ぎの一部ですが、この研ぎが出来る様になって卒業する学生は同期では数人しかいませんでした。これらの仕込みを言葉で教えるのは10分もあれば出来ますがそれを自分の物として体で覚えるには数年かかるようです。明日は”台”の仕込みについて話したいと思います。


8日目です 投稿者:しばた 投稿日:2002/08/28(Wed) 21:36 No.14
皆さん今日は。帰り道に通る塩尻峠から見る八ヶ岳はシルエットとなり、天を仰ぐ天狗(天狗岳)が気持ちよさそうでした。今日から学生達の鉋の仕込みを個人指導する事にしました。仕込みが出来ていない事を理解していない為に大幅に時間を無駄にしてその割に仕上げが充分では無いからです。学生の中には未熟さを恥じて鉋を見せない人、プライドが高く助言を受けない人...難しいですね。今は出来なくて当たり前です、堂々と助けを求めて下さい、卒業したら人には聞けませんよ!!。昨日も書きましたが言葉の説明では無く、実際に仕込みを行いながら説明し、削れるまで行い学生達にその切れ味を体験して貰います、そうすると削れなくなった時にどうすればよいか実感として理解する事が出来ると思うのです。
鉋の仕込み”台”。家具に使う鉋(平鉋)は粗仕上げ/中仕上げ/仕上げと3種類に大別されます。
荒仕上げ:表面の不整面を平面に近づける/材料を薄くする。中仕上げ:表面を平らにします。仕上げ :最終的に表面を滑らかな平面にします。鉋の削る材料と接する面を下端(したば)と呼びますが、基本は下端全体を平面にします。荒仕上げ:刃の近くと台尻(後)の2ヶ所以外は窪んだ様に0.数ミリ削ります。中仕上げ:台頭(先)、刃の近くと台尻の3ヶ所以外も同じく窪ませます。仕上げ :荒仕上げと同じ2ヶ所以外は窪ませその深さを荒仕上げの約1/3程度にします。これらの調整は専用の台直し鉋を使って少しずつ削りながら行います。では台直し鉋の調整は???。鉋は材料と点とでしか接触していないのです。特に仕上げ鉋の下端調整の精度は専用の直線定規を重ねて光が漏れないレベルにする事が必要です。鉋の名人は5/1000mm(5ミクロン)の薄い鉋屑を出します、馴れた家具作家(私含む)で10/1000〜20/1000mmですがこれは下端から鉋屑と同じ厚さの刃先を出すように調整し、下端の平面度が鉋屑の厚さより更に高精度に調整されている事になるのです。これを目と勘で行うのです。明日は何人の学生さん達の鉋が生き返るでしょうか?


9日目です 投稿者:しばた 投稿日:2002/08/29(Thu) 22:01 No.15
皆さん今日は。昨日とは逆に塩尻峠を松本方面に下って行くと北アルプスが一望出来ました。針ノ木岳/燕岳/常念/蝶ヶ岳/穂高/乗鞍迄の何れも人気の3000m級の山です。あの稜線歩きを4年もしていませんね、気持ちいいですよ!。今日も鉋の個人指導を5人程しました。自分の鉋で刃の巾一杯の薄くて均等な鉋屑が出た時はそれは嬉しい物で感動します。最初の鉋屑を実家の母親に送った人も知っています、当の親は何の事やらでしょうね。昨日も就職の面接試験に行った学生は指定されて鉋と鉋屑を持参して行きました。それを見るとプロには力量が一目で分かります。鉋の仕込みの話を長々と書いてしまいました。文章での説明はこれくらいが限界でしょうか?。ほんの部分的な仕込みの説明でしたが”鉋は精密機械”だと言う事は理解していただけた事と思います。明日の鉋の個人指導には予約が入ってしまいました。少しは学生さん達に受け入れられて来たようです。では明日。


10日目です 投稿者:しばた 投稿日:2002/08/31(Sat) 00:19 No.16
今日は。1ヶ月の臨時講師も約半分過ぎ、機械操作も安定してきて難しい鉋の仕込みも1/3の学生に個人指導する事が出来ました。2個めの製作に入った学生はより高度な仕口(構造)を採用した家具に挑戦しますが、その為には今までより高度な技、道具、治具などが必要になります。その事に初めて気が付く人が多く前作とは違う意味で又もや難しさに直面するです。がんばれ学生さん達。来週はその道具を仕込む為の定規の手入れとその方法を教えて見ようと思っています。今週出来なかった実習風景の画像のアップも週末に行いたいと思っています。


写真アップしました 投稿者:しばた 投稿日:2002/08/31(Sat) 23:14 No.17
皆さん今日は。上松技専での機械加工による実習風景の写真をアップしましたのでご覧下さい。出来れば手加工、組立の様子なども追加したいと思います。http://www.lcv.ne.jp/~woodwill/agematu.htm


11日目です 投稿者:しばた 投稿日:2002/09/02(Mon) 20:28 No.18
皆さん今日は。臨時講師も3週目に入りました。信州でも暑さがぶり返し実習中は汗だくになります。
最初の頃は機械加工の基本操作、危険防止などを主に指導していましたが、今日などはより具体的な加工方法を教えて下さいなどと学生さんに要求されるようになりました。知っている事は全て教えて上げますよと気を(木を)良くしている私でした。平行して鉋の仕込み、研ぎの指導も行っています。実習室のゴミ箱が鉋屑の山でだんだんふわふわして来ました。最初は細くて短い鉋屑、今は薄くて広くて長い鉋屑です。鉋の仕込み、研ぎ/ノミの研ぎ、削り方/鋸の使い方なども質問されるようになってきました。
耳で聞いた説明では分かりませんね、具体的な作業の中で個別に説明すると良く分かって貰えます。
ではまた明日。


12日目です 投稿者:しばた 投稿日:2002/09/03(Tue) 22:24 No.19
皆さん今日は。長野県知事選で田中氏が訴えていた”夜明け前”に戻してはならない!。この言葉は島崎藤村の小説のタイトルですが、この小説の有名な書き出しが”木曽路はすべて山の中である”から始まるのでした。そうなのです!その中を毎日ドライブしています。今日は鑿(ノミ)について少々。鑿の仕込みは簡単です、頭にしっかりリングをはめ込み、切れるように研いで、刃の裏側を平らにすれば良いのです。でもまともに研げるのに毎日研いでも2,3年はかかるかな?。さてその使い方なのですが、学生達は今難しい仕口を採用した。小型和風整理棚を製作しています。天板と側板の接合に左右の指を互い違いに組み合わせたような構造ですが、その加工には半分が機械、半分が手加工で鑿を使います。
鋭いナイフ状の刃先で書いた墨線ピッタリに木材を切り落とすのですが、そうするにはやはり職人の技が必要で、教科書通りではうまく行かないのでした。刃先を支持する角度、玄翁(げんのう)の当て方、途中までの加工と最後の1発を決める削り方、作業姿勢、材料の固定方法、当然刃物が良く切れる事などなど見本動作を見ないと理解出来にくいのです。そんな事で今日などは数人にこの作業を実地で説明したのでした、そうすると前と後では仕上がりが格段に違ってきます。その辺を沢山の学生に説明できればと思っています、そこのMy wayの学生さん聞いていますか??知っていて損はしませんよ!!。
では明日。


13日目です 投稿者:しばた 投稿日:2002/09/04(Wed) 21:25 No.20
皆さん今日は。学生の中にも仕事の速い人、ゆっくりな人/飲み込みの良い人、そうで無い人/要領の良い人、じっくり考え込む人。色々ありますので一作目がまだ終わらない人、二作目の組立に入った人などの差が出て来ています。多くの作品を作りたくて少し粗くても先を急ぐ人、納得するまで丁寧に仕事する人、長い目で見てどちらが成功するかどうかは分かりませんね。職人たたき上げの先生が言うには目先の利く人は早々と自分に見切りを付けてしまい止めてしまうが、初めは手が遅く飲み込みが遅くともじっくり取り組む人は自分で気が付かない内に腕を上げ結果的に良い仕事をする様になると言っていました、分からない物ですね。今日は先頭を切る学生が2作目の組立をしましたが、スピーカーエンクロージャーとは違い接合させる箇所が多く複雑で段取りの悪さから危うく失敗する所でした、この接着組立作業は木工の中で3本指に入る緊張する場面です。私が学生の時の失敗も全て接着組立の時でした。無意味に完全密着を狙った精密細工は接着剤の水分を吸って膨張する木材には無謀な物であったと思い知らされたのでした。今日の経験は忘れる事の無いとても貴重なものとなるでしょう。明日はちょっと脇道にそれようかと思っています。


14日目です 投稿者:しばた 投稿日:2002/09/05(Thu) 22:08 No.21
皆さん今日は。学生さん達は現在、鑿を使った作業が多いので指導も自然と鑿の事になります。
仕込みは前に話したようにシンプルですが鉋に比べ刃先の面積が少なく、柄があるので平面に研ぐのは難しく切れる刃を付けるのが難しいのです。切れない刃物を力で押し込むので仕上がりは期待できません。又、鑿の作業姿勢と扱い方はプロと素人の差が歴然と出てしまいますので基本を教える事も重要ですが、そう言った事は若者にはなかなか受け入れ難く本人は後で恥ずかしい思いをする事になります。
さて脱線の話ですが、皆さんは”削ろう会”という集まりをご存じでしょうか?大工、建具屋、家具職人等の木工に携わる人たちが集まり”可能な限り薄い鉋屑を出す”等の競技会を開き関連する業界人がそこで意見交換、技術交流を図ると言う会です。NHKで紹介されたので今は結構有名な会です。その競技で優勝した人が何と上松技専木芸科の先生でした。私も興味を持っていたので早速お話をさせて貰い砥石などを見て貰う幸運に恵まれました。この週末が今年の競技会だそうで勿論先生も参加します。
将来は競技参加希望ですので先生に鉋屑を見て貰おうと今日は少しサボって自分の鉋の仕込みを真面目にやりました。結果は10/1000mmでしたが明日は更に薄くなるように挑戦しますが何せ測定器が無いので測定出来ない!!。鉋台の表面と刃先を10/1000mm以下に平らにして10/1000mmだけ刃を出して10/1000mmだけ木を削るのです、結構はまりますよ。因みに昨年の最高成績は3/1000mmだそうです。鉋屑というより殆どフィルムみたいな物ですね、凄すぎます。皆さん鉋と砥石と測定器で50万円前後の費用をかけているそうでこれも凄すぎます。いつかHPのお知らせで削ろう会”優勝”なんてお知らせをしたい物です。ではまた。


15日目です 投稿者:しばた 投稿日:2002/09/07(Sat) 00:33 No.22
皆さん今日は。今日の帰りはR19木曾街道名物の事故で全面通行止め、2時間暇つぶしをして出ましたがそれでも4時間もかかってしまいました。今まで声をかけても殆ど反応の無かった学生さんが2人も突然質問をして来ました。話をするといい人でした!分からないものですね。今日は組立の手伝いをしました。小型の作品ですが学生にすれば初体験、接合面が複雑に多数有るのでそれらを隙間とずれ無く
接着剤が固まらない内に素早く行う必要があり何人かがサポートしますが本人は汗だくで肝を冷やします。段取りが重要と強く言ってあったのですが甘かったと本人曰く、こうして覚えていくのでした。
脱線の話しの続編。合間を見て10/1000mm以下の鉋屑が出るように調整しましたがダメでした。20/1000mmがでれば仕事上は完璧なのですが、これは競技会上での特別の話です。例の優勝先生が明日の競技会の為の鉋の刃の研ぎを始めたのでじっと観察していましたが、やはり腕も使う道具も段違いでした。通常木工刃物を研ぐには”荒/中/仕上”の3種類使いますが、より完璧には砥石の面直し用にもう1個使います。私は更に6個使っていますが先生は私の倍使っていました。用途別の砥石を2個ずつ、仕上げ用に3種類各2個ずつです。使う砥石は全て完璧に平面出しを行う必要があります、研ぎ終わって砥石から手を離すと刃物が砥石上に立ったままで、その刃物を持ち上げると砥石ごと持ち上がる、先生が言うにはこれが競技会への出場最低資格だと言っていましたので私は合格です。3年前から砥石が持ち上がっていました。しかしそこからが別世界の領域になるのでした。来週は先生の結果を交えながら続編を続けたいと思います。
脱線その2。
TV番組の北の国からが今日と明日の放送で終了するそうですね。私の田舎は富良野から車で4,50分の所です、番組で何時も背景に見える山は大雪山連邦の外れの十勝岳ですが山を頂点とすると扇を広げた一方が富良野、反対側が私の育った地ですから、番組開始時から食い入るように画面を見ていました。子供達が夕焼けに追いかけられるように家路に向かって走る姿、農作業の描写、心に焼き付く四季の美しさは紛れもなく私も共有するものです。出来れば避けて通りたい人の性などを番組はさらけ出すので見ていて辛いのですが、人の暮らしの原点があると視聴者は感じ入った事と思います。私もそんな思いで見続けてきました。明日もしっかり見るつもりです。


16日目です 投稿者:しばた 投稿日:2002/09/09(Mon) 21:06 No.23
皆さん今日は。私の臨時講師も16日目で最後の週に入りました。学生さん達は技術を習得する他に大事な事があります。卒業後の進路の事です。ニュース等では知っていましたが就職活動にはインターネットが活躍しているようです、。木工家はローテクの人が多いのですがこれからはそんなこと言っていたら化石になってしまいますね。学生の多くは就職希望が多数ですが中には直ぐに独立開業を狙っている人もいるようです。皆さん最終的な目的は独立のようですので希望がかなう様に諦めず木工を続けて欲しいですね。私の同期20人で独立2名/関連業種就職3名という厳しい現実があります。今日も鑿(ノミ)の指導が多かったです、切れない刃物を力任せで無理矢理に削ろうとするのです。研ぐのが大変、早く終わらせたい等々の理由でついついやってしまうのですが、体は疲れて正確な加工が望めず怪我の危険も増します。結局直ぐに研いで切れる状態で仕事するのが一番ベストなのです。手工具はよく手入れされてこそ力を発揮するのです。と言いながらも普段は手が回らない道具の仕込みを指導の合間を見てしている私でした。基本加工の訓練が終わってから1作目、2作目の作品製作と行っていますが、そろそろ自分の力量に気が付いたり、仕込みの重要性を知ったり、道具の良否などにも気が付いたりで傍目からはいっぱしの木工屋さんの卵に見えます。そうそう、学校には入学を検討している人たちが大勢下見に来ています。私もそうでしたが実習中の学生さん達がとても優秀で腕の良い人達に見えて、自分に出来るかどうか不安に駆られて学校を後にするのでした。ではまた明日。

17日目です 投稿者:しばた 投稿日:2002/09/10(Tue) 21:07 No.25
皆さん今日は。最近は学生達の刃物を直接研ぐ事が多くなりました。理由は、学校から支給される刃物は前年度卒業した学生が研いで返すのですが7,8割の学生は平面に研ぐ事が出来ずに返します。
まだ研ぐ事が上手に出来ない学生達がその丸い刃物を平面に研ぐ事は極めて難しいので一度平面を出してその感触をつかんで貰う事にあります。もう一つは正確に研いだ刃物の切れ味と、自分の刃物との比較をして貰う事にあります。今日は長時間研いだので親指が未だ痺れて痛いですね。
今回の臨時講師を引き受けた理由の一つが塗装技術の向上の為のアドバイスを受ける事でもありました。現在の作品で”ウレタン黒色エナメル塗装艶有り”を施したエンクロージャーがあり、大変好評をいただいていますが、この塗装でも難しく手間が掛かり実施している業者は少ないと思います、更にお客様の中にはピアノ塗装(ピアノ仕上げ)を希望される方もいらっしゃいます、あらゆる塗装の中で一番高級で難易度が高く非常に手間暇が必要な方法です。その塗装方法をマスターすべく指導を受けながら試し塗りをしていましたが、ほぼ技術を習得する事が出来ました。塗装面には自分の姿がまるで鏡の様に綺麗に映し出されます、次回の新製品と試作品に採用して紹介したいと考えています。今週で講師は終了ですが来週2日間また上松に行きます。アンテーク家具塗装の第一人者が塗装の指導に来るので一緒に訓練させて貰う事になりました。ではまた明日


18日目です 投稿者:しばた 投稿日:2002/09/11(Wed) 21:13 No.26
皆さん今日は。臨時講師も後2日間を残すだけとなりました。1作目の作品を終えて2作目に入った作品も終わりかけている学生もいますが、未だ1作目が終わらない学生もいます。その差は何でしょうか?
上松技専に入学する前に道具を使った経験がある、どんな物でもよいから自分の手を使って何かを作った事がある。そんな体が覚えている感覚かも知れません、機械が加工してくれてもその理屈がなんとなく理解できる人と、入れると出てくるからそれで良し、そんな風に考える人とでは違いが出るのです。
技専とは以前の職業訓練校です、昔は職人気質の先生が言う事を強引に聞かせて先生と同じように作業をさせていた様です。そうして即戦力の職人を養成していたのです。今の学生には職人になろうと言う人はいません、独立した作家になろうとしているのです。今の先生は専門の教育大学を出たインテリ先生で、時代に合わせて強引な教育などはしません。さて皆さんどちらが良いのでしょうか?。不安定な状態で材料を固定してかまわず鋸を引くとビリ付くだけでまともに切る事は出来ません。今の先生はそれを咎めたりはしませんから学生は気にせず気楽に作業していますが、昔の先生なら悪くすればゲンコツ物でしょう!木工などの基本動作と技は頭の世界で考えるのでは無く、先人の知恵をお借りしてそれをまねる事から始めるのが一番と今の私は考えるのでした。卒業して3年ですから学生の考えも分かりますし、今回の事で先生の立場も良く分かるようになりました。はっきり言える事は学生達には覚えようと言う強い意志が必要で、自由放任の中から自覚して行動しなければ上達は難しいと言う事です。さて後2日間、どんな協力を学生達にして上げられるでしょうか?


19日目です 投稿者:しばた 投稿日:2002/09/12(Thu) 21:26 No.27
皆さん今日は。1週間程面倒を見ていた学生の鉋が今日初めて使えるようになりました。薄くて巾広の鉋屑が出た時には嬉しそうでした。正確に仕込まれた鉋は逆目(木目が逆の方向)でも全く支障無く削る事が出来ますが、それを初めて実感したわけです。プロ用の鉋は買ってきて直ぐには全く使う事が出来ません。面倒で正確な仕込みが必要です。馴れた人でも丸1日は必要な作業です。今日は学生達の就職ガイダンスがありました。希望条件に合わせて職安が各人に合った求人票をリストアップしてくれ、個別に相談に乗ってくれるのです。学生数より企業数が格段に多いので幸いですが学生達が望む企業はなかなか無いようです。殆どが工場のライン現場か専門職の単純作業などです、工房家具風の一貫した製作に関われるような仕事は見つかりづらいです。ウッドウイルの様な個人工房又は小規模な会社形態の工房などが就職の理想なのですがそういう工房は経営が苦しくとても人を雇えないですし、潜り込めても奇人変人の個性豊かなオーナーが多いので折り合いが付かなく辞める人が多いようです。学生達はどの様にして木工の社会に入っていくのでしょうか?技を覚えるのと同様に難しい関門です。明日も鉋の仕込み指導があります、仲間の鉋が調子良くなってきて慌てて申し込んで来ました。この4週間で半年分以上の刃物の研ぎをしているようで私の指先はひび割れ、ささくれ、痺れ、おまけに爪まで研いでかなり可愛そうな状態です。もう1日です、頑張りましょう!!


こんばんわ 投稿者:福嶋 投稿日:2002/09/15(Sun) 00:32 No.29
上松技専の福嶋です。今日はありがとうございました。見学する前はもっと広い工房を予想していたのですが以外に狭く限られた空間で効率良く作業されてるんだなと感じました。知恵と努力と体力の賜物ですね。SPも聞かせてもらって良かったです。普段はノートパソコンのCD&SPでしか音楽を聴かないので音には疎いのですが、いい音はそれだけで感動できるんですね。平井賢のCDはボーカルがそこで歌っている様でした。あれから帰る途中、両角金物に寄りました。自分とレオ(西山)で七寸を一本ずつ買いました。まけてはくれなかったですが・・・ではまた火、水とお会いしましょう。 
 Re: こんばんわ しばた - 2002/09/15(Sun) 23:58 No.31
 福嶋さん今日は。書き込みありがとうございます。自宅敷地内の工房と自宅2階の開発部屋兼試聴室 で何とか製作しているウッドウイルでした。将来の木工作家(アーティスト)志向なのですから音楽に限  らず体感できる物には本物を求めるべきなのでしょうね、私も心がけている事です。皆さん、七寸とは刃 の長さ210mmの両刃鋸(ノコ)の事です。片側に横切り刃、もう片側に縦切り刃が付いた日本独特の鋸 です。精密な細工が必要な仕口加工に優れた道具で、置いている職人が通う道具屋さんを紹介したの でした。腕もそうですが道具の良否でも大きく差が出るので道具選びも大事な技の内です。値引きして くれなかったのは残念でしたね。
 来週2日間だけ塗装の勉強に上松に受講生として行きます。皆さん、アンテーク塗装仕上げのスピーカ ーは如何ですか?又技専で会いましょう。


20日目です 投稿者:しばた 投稿日:2002/09/13(Fri) 21:45 No.28
皆さん今日は。今日で臨時講師は終了いたしました。始めた頃はサイクリスト、ウオーカーなどが木曾街道を巡り思い思いの夏を過ごしているようでしたが、今は通りすがりの街路樹のナナカマド、ハナミズキなどが赤い実を付ける頃となり季節の移ろいを感じる分けです。昨日、遅くまで機械加工をしていた学生が怪我をしてしまいました。http://www.lcv.ne.jp/~woodwill/agematu.htmの中の写真7、手押し鉋盤による事故です。安全カバーを邪魔に思って避けようとして左人差し指先端の腹の肉と爪を1/3を削られてしまいましたが骨に異常は無く回復する怪我で本当に良かったです。初めての講師は興味深い経験でした。将来に希望を持った学生達の成長する姿の限られた期間であっても接する事が出来たのは嬉し
い事です。色々な経歴の持ち主が以前から或いは有るきっかけから木工の世界に足を踏み入れるいきさつを少し聞く事が出来ました。家具製作を担当できると思ったら他部門に配属され思い捨て難く出直した人、大手プリント合板会社から無垢材にこだわって来た人、芸術系大学で木工とデザインを専攻したが製作技術を覚えたくて来た人、等々。学生さん達!!木工は技の世界なので壁はありますが多くの先輩達が技を学び、その道で成果を上げています。初心を忘れず負けないで進んで行って下さい。プロとなりその作品を見る事が出来るのを楽しみに待っています。この書き込みを読んで下さっている方、技専の学生さん達。良かったら感想をお寄せ下さい、この1ヶ月孤独な書き込みが続いたので反応を期待したいです。1ヶ月間工房が休みでした。中断の作品やクラフトフェア出品作品、新作など今後発表して行きたいと思っています。お休みさせていただきましてありがとうございました。
 Re: 20日目です ぷっしゅろっど - 2002/09/15(Sun) 10:13 No.30
 しばた様、皆様、こんにちは。臨時講師の話有難う御座いました。ちょっと忙しかった為レスは出来ませ んでしたが、しっかり読ませて頂いております。特に道具に関しては文章だけでは難しい部分は有りま すが、大変勉強になります。体で覚えなければいけないことは、講座や講習が有れば是非受講したい  と思いますが、なかなか有りませんね。また、新作の試聴会には是非お邪魔させてください。有難う御  座いました。
 Re: 20日目です しばた - 2002/09/16(Mon) 00:10 No.32
 今日は”ぷっしゅろっど”さん。日記風の書き込み読んで下さってありがとうございます。
 日本の木工用手工具は使うのも難しいのに更に難しい仕込みという作業が必要で愛好者の底辺を狭 めている一因ではないかと思っている次第です。欧米では道具、工具、製作技術のノウハウ本が多く出 版されているにも関わらず、日本では限られた世界の人にしか伝承されていないと言う閉鎖的なお国  柄です。やっと時間が取れそうになったので例のツール、資材を使ったテストが出来そうです。又、あと 1,2週間で試聴会の日時か決められると思います。頑張って製作しますので楽しみにしていて下さい。
 ありがとうございました。


技専祭り 投稿者:しばた 投稿日:2003/03/16(Sun) 21:41 No.38
皆さん今日は。私の恩師が教官を務め、私も昨年臨時講師を務めた上松技術専門校の技専祭り(展示即売会)と卒業の為の謝恩会に行って来ました。学生達の1年間の集大成とし楽しく作品を見てきました。製作技術はまだまだでしょうが各人が持っているデザインセンスを見たくて行って来ました。作品の写真がありますので見て下さい。1年間の成果を皆さんはどう評価されますでしょうか?。謝恩会では教官、学生達の話を聞いてきました。もう1年勉強したい、過去にない充実した年であった、楽しい1年間だった。病院行きの怪我3人、期間中にお父さんになった人など各人それぞれの思いがある事と思います。気になるのはプロの専門技能者を育てる学校なのですが、卒業目前でもその自覚を持てない人、僅か1年で既に一人前気取りの人、己の未熟さに全く気付いていない人などが見られる事です。初心を忘れず謙虚に腕を磨く、私も忘れないようにしなくては。下記URLにこの掲示板で書き込んだ文書、実習風景の写真などを掲載しています。良かったら覗いて下さい。http://www.lcv.ne.jp/~woodwill/agematu.htm
ホームページのプロフィールからも行く事が出来ます。