| 戦国風雲抄 製作秘話 |
−全ての始まり− 「戦国風雲抄」製作のきっかけは、サークル合同で行われた合宿でTSSのTraJanさんの自作ゲームを拝見した事からでした。ですが「これくらいならなら私にも作れる」と思ったというわけではなく(笑)、「同じシステムでも何かしら工夫をすれば、立派なゲームになる」「馴染みのある舞台なら、もっとエキサイティングになる」という事を感じたからです。そのゲームはAH「History of the World」を元に、日本の武士の歴史を再現した物でした。単にシステムを流用しただけでなく、様々な工夫で日本らしさ・武士らしさを入れていました。さすがはTraJanさんです。こういう良いゲームを目の当たりにすると何か燃えるものがありますね。そういうわけで自作ゲームを作るという気になったのでした。作る気にはなったのですが、それから何ヶ月かは全く自作ゲームは作りませんでしたけど(笑)。よくある事です。 ところでその合宿の後、SSBでは北陸のHBC(北陸ボードゲームサークル)の所へ遠征に行きました。そこでこちらの希望のゲームをプレイさせてくれるという事になりましたので、私は前から気になっていた「エル・グランデ」を希望いたしました。私の周りの方は持っていらっしゃらないので、ぜひプレイしてみたかったのです。実際遠征時には希望通りエキスパンション(名前は忘れましたが)付きの「エルグランデ」をプレイしました。舞台はスペインらしいのですが、スペインを幾つかのエリアに分けてあって、そこに騎士を配置していくだけという、ある意味簡単なゲームでした。ですが実際プレイしてみると、十分に考えないと為す術無くゲームが終わってしまいます。ランダム要素はほとんどありませんので、自分の戦略だけが命という感じでした。面白かったです。プレイ時の緊張感は今まで経験した事の無い物でした。 ふと「このゲームを元に自作ゲームは出来ないだろうか」という考えが浮かんできました。合宿でプレイしたTraJanさんのゲームみたいに日本を舞台にすればもっと面白くなりそうだというのも感じました。ただこのアイデアもその段階で終了する予定(というか、自然とそうなってしまうのですが)でした。 |
−日本版への移行(構想)− 実際に私がプレイした「エルグランデ(とそのエキスパンション)」から日本版への移行を考えてみました。「エルグランデ」はちょっとゲームに慣れた方にはとても面白いゲームなのですが、初心者向けにはちょっと面倒な部分がありました。そこで日本版では初心者が楽にプレイできるようなゲームにしたいと思っていました。 ゲームシステムですが、「エルグランデ」ではまずプレイヤーはカードを表にして出します。カードにはそのカードの強さを示す数字と、手許に置ける騎士の数と、特殊能力が書かれています。これを1人ずつ順番に1枚ずつ表にして出していきます。全員同じカードを持って始めますが、同一ラウンドでは同じカードを出せません。これに関して、日本版では複雑な手順になるのとカード枚数が多くなるのを避ける為、1セットのカードをランダムに配るという事にしました。これにより、配られるカードには重複する物は無くなりますし、カードも1セットで済みます。「エルグランデ」は1人20〜30枚のカードがありましたので、これだけでもいろいろ楽になります。また順番に表にしてカードを出すのは止めて、全員裏にして出して、一斉に表にする事にしました。これはこの方が何を出したのか分からないというドキドキ感が良さそうだと思ったからです。「エルグランデ」は緊張感は十分なのですが、ドキドキ感がちょっと弱いと思っていました。 「エルグランデ」は2段階の手間をかけて盤上に騎士を配置します。まず「袋の中から取り出して手許に置く」、そして「手許から盤上に配置する」という2段階です。袋の中から手許に置く騎士の数はそのラウンドで使用するカードに書かれています。ですのでこれは変わりようが無いです。で、手許から盤上に置くには、カードに書かれているカードの強さを示す数字の大きい順に多く配置できます。私がプレイした時には5人でしたので、大きい数字のプレイヤーから順番に5個、4個、3個、2個、1個という具合に置いていきました。またこの順番は騎士を盤上に配置する順番でもあります。これは相対的な物ですので、場合によっては中間くらいのカードでも5個配置できたりします。ただ手許にある騎士が4つしか無かったら、5個出せるといっても4つまでしか出せませんけど。で、日本版では2段階というのは面倒なので止めて、1段階で済ます事にしました。これにより相対的な何かという物が無くなってしまいましたが、あまりに他人の行動を気にするというのも初心者には大変だろうとの判断です。まあ順番は相対的に決まりますので、それだけでも十分というのもありましたし。 「エルグランデ」は盤上に王様がいまして、この王様のいるエリアに隣接するエリアにしか騎士を配置できません。これによって近いエリアで熾烈な争奪合戦が行われるのですが、日本版は初心者向けという事もあり、カードに記した居城のあるエリアとその隣接エリアに配置可能という事にしました。居城エリアはカードに書いてあるので、間違える事は無くて安心です。 また「エルグランデ」を面白くしている要素に塔があります。これも簡単にプレイ出来るように無くしました。盤上だけでも苦労するのに、塔にまで気を遣うというのは面倒だと思ったからです。 そんなわけで「初心者向け」「面倒なのは嫌」という言い訳によって、とてもシンプルなゲームの構想が出来あがりました。「エルグランデ」の面白さは半分程度しか伝わらないような気もしますが、逆にシンプルな事で争点がしっかり見えてくるような気がします。という所で、このゲームの構想は一時停止しました。 |
−合宿にて− それから約1年後、2度目の合同合宿が企画されました。それに際し、合宿で仲良くなった富山のながわさんから「各自自作ゲームを持ってきませんか」というお誘い(今思えば罠でしたね)がありました。この時点ではまだ1つも作っていませんでしたが、「エルグランデ」の日本版は合宿までに何とかなりそうだという段階まで構想が進んでいましたので(まあ他のゲームはそこまで構想が進んでいなかったというだけですけど)了承する事にしました。 ひょんな事からゲームを作る事になったのですが、私は絵とかグラフィックとか全く駄目ですので、テストプレイ用にとてもシンプルなマップとカード、ユニットを用意しました。日本地図は四角だけで構成され、ユニットは色だけがついていて、カードは必要な情報のみが見にくく書かれています。そのテストプレイ版は既に手許にありませんが、ぜひ公開したいと思うくらいシンプルです(笑)。 何とかゲームを製作しましたので、まずはソロテストプレイしてみることにしました。持って行って何か重大な欠陥があるとさすがに厚顔無恥な私でも恥ずかしいだろうと思ったからです。で、この時のテストプレイはさすがに面白さを感じませんでした。「必ずしもシンプルイズベストではない」と思いました。特にカードの出来は不十分で、カードに魅力がありませんでした。ただゲーム自体はカードが良くなれば結構面白くなりそうな感じだというのが救いでした。この「カードが良くなれば面白くなりそうな感じ」というのはいまだに感じます。 それから何回かカードに変更を重ねて合宿の日を迎えたのですが、さすがに合宿でいきなり見せるのは恥ずかしいと思い、まずはSSBでテストプレイしてもらう事にしました。合宿の日の午前、謎の豪邸に集合して4人で1回プレイしました。結構思っていた程は悪くは無かったです。ここであまりに悪かったら合宿には持って行かないつもりでした。で、結局合宿にも持って行って6人プレイしましたが、こちらはなかなか面白かったです。これなら後は簡単な修正程度で完成するだろうと思っていました。 そんな所へまたまたながわさんが登場しまして、「コミケで売りませんか」という提案(いつもの罠ですね)をされました。完成に近いと判断していた私は「ながわさんがグラフィックを作ってくれるなら」という条件の下、了承しました。いつもこの気軽な了承が後悔を生むのですね。 |
−完成へ− そんなこんなで、グラフィックを富山のながわさんが担当し、システムを信州の私という、インターネット時代を象徴するような遠隔製作が開始されました。 グラフィックはすぐに完成しました。私が作業したわけではありませんので、「すぐ」だと感じたのでしょうね(笑)。実際は大変だったと思います。昔の日本地図を基に、長方形なマップが完成しました。またユニットも戦国時代らしい物が完成しました。ユニットは数が多かったので、苦労されたと思います。細かいですが、使い勝手の良い立派なユニットになりました。これならプレイする気になるような出来です。 システムですが、ルール自体は完成していてここから変えるつもりはありませんでした。しかし、カードに関しては合宿で使った物はどうも良くない感じでした。「応仁之乱」時代は特にカードの良し悪しの差が大きく感じましたし、その他の時代もそういう傾向にありました。そこである程度完成している最初のカード群とは別に新規カード群を作る事にし、同時に改良していくという形にしました。これは保険の意味合いが強かったですね。最初のカードはどちらかというとカードの能力差を少なくするように意識し、新カードはある程度面白さを重視した作りになっていました。 そういう訳で2つのカード群を何回かテストプレイし、どうにか新カード群の方がバランス的にも面白さ的にも良さそうな感じにまで持ってくることが出来ました。新規カードに旧カードのバランスを徐々に加えていった感じで作りましたが、出来はどうでしょうか。この辺り、思い入れが強すぎて私には評価する事が出来ません。 さて、販売するとなるとゲーム名を決めなければなりません。今までは「エル・サミュライ(仮)」と呼んでいましたが、なかなか良い名前がありませんでした。コミケまで時間が無くなり、もう「エル・サミュライ」で良いかという時にくわさんから「戦国風雲抄」と「天下を継ぐもの」という2つのゲーム名の提案がありました。「戦国風雲抄」というのはそのままズバリの名前でした。まさに「戦国」のエッセンスを「抄」したゲームだったからです。で、とても気に入ったのですが、「天下を継ぐもの」という題名も気になりました。そこで両方付けてしまう事にし、「戦国風雲抄−天下を継ぐもの」という名前に決まりました。 そういうわけでコミケット62で販売する「戦国風雲抄−天下を継ぐもの」が完成しました。 |
−コミケへ− ゲームが完成したのは良かったのですが、実は私とながわさんはコミケのサークル参加の抽選で落ちてしまい、折角の自作ゲームは行き場を失ってしまいました。苦労して作りましたので、何とか日の目を見せたいという思いがありました。 そんなところに合宿でお世話になっているTSSのTraJanさんから、「ウチで売っても良いかもしれないので、問い合わせてみては」というご提案をいただきました。そこでTSSのコミケ担当のYENさんにお願いして委託で販売していただく事になりました。これでこのゲームがお世話になった地域は富山−信州−名古屋と、とうとう日本列島を横断してしまいました。しかも最も距離のあるラインで。ある意味凄い話です。 コミケですが、15部用意して完売いたしました。これはTSSさんに売っていただいたというのが大きいと思います。やはりSLG界ではTSSというのはビッグネームです。TSSが販売しているというだけで面白そうに感じます。ちなみにその時TSSのブースで同時販売していたのは「戦車狂想曲」と「V作戦」でした。その2つは午前中に売り切れてしまい、午後は私のゲームだけの販売で、3時頃に完売するまでTSSの皆さんが頑張って売ってくれていたという、とてもありがたい事実もあります。本当にお世話になりました。 |
−新カード群− そういうわけで無事にコミケが終了したのですが、どうもカードに関してはある不満がありました。コンポーネントの関係で、5・6人プレイの場合は1時代2ラウンドしかできないのです。元々の「エルグランデ」は各3ラウンドでしたし、「戦国風雲抄」でも1時代3ラウンドはとてもプレイバランスが良いのです。ですが私はコンポーネント製作が下手でして、計算するとどうしてもカードに余裕がないのです。そういうわけで5・6人プレイの場合は2ラウンドのみとしていました。ですので新カードの企画案は既に胸中にはあったのです。 と、そんな所へまたまたながわさんからお誘い(罠)がありました。「新カードを作りませんか」という事でした。聞いてみるとコミケット63に出願したらしく、それに出すゲームを探しているらしいのです。「謎の豪邸」ではコミケへのサークル参加はしないつもりでしたが、いつもお世話になっているながわさんに言われたら断れません。また印刷はながわさん自身が行うので、コンポーネントに余裕があり、今回は各時代24枚のカードで製作できるとの事です。これで「戦国風雲抄−天下を継ぐもの」の唯一の不満を解消できます。また同時にサイトでカードを公開して、前作購入者の方にもこのカードを使っていただけるように出来るので、これは好都合でした。 という事で、新カード群を作る事にしました。前回入れられなかった特殊能力を入れ、また前作の分のカードにも多少の修正を加え、満足できるカード群が出来あがりました。テストプレイではカード運の差が大きく出る感じでしたが、「運の悪い人は他のゲームでも勝つのは難しい」という言い訳で、自分自身を納得させました。 そういうわけで、完成したカード群を「戦国風雲抄−戦国武将は天下取りの夢を見るか」と名付け、富山ボードゲームからコミケ63で販売しました。売れ行きがどうだったとか、怖くて聞けません(笑)。それほど悪くはなかったようです。 |
−宇宙堂版− そんなこんなで「戦国風雲抄」の開発は終了したのですが、今度はいつも行っているゲームショップ「宇宙堂」の社長から、「宇宙堂独自のゲームを販売したいから、前自作したと言っていた「戦国風雲抄」というゲームをそれに出さないか」という話を持ちかけられました。こちらもいつもお世話になっていますし、私へのリスク無し(売れても売れなくても私からの持ち出しは無い)という事で、了承しました。 ただこの宇宙堂の独自ゲームシリーズですが、「戦国風雲抄」が第1作で、この売れ行き次第ではすぐに止めるという事ですので、責任は重大です。これ以降のラインナップは分かりませんが、このシリーズでデビュー予定のデザイナーの進路を奪いかねません。そういうわけでこのゲームをまだお持ちで無い方は是非購入してくださいね(笑)。 まあ現在はこういうような状況ですが、気軽に製作したゲームなのですが、妙に後を引いています。私としても思い入れ深いゲームですので、これからどうなるか、じっくり見ていきたいと思っています。 |