酒仙もどきの面白秘話 「注文を取らない一杯飲み屋」 2002年秋、宮崎県日向市
旅先で酒を飲もうというとき、お店選びというのは重要なポイントになります。今でこそインターネットが普及し、かなりコアな情報まで前もって入手することができるようになりましたが、つい数年前までは地方都市に泊まった場合、酒場の情報をまったくないというケースも少なくありませんでした。
宮崎県中部の日向市もそんなまちでした。幸い一軒目の店は日向地鶏を食べさせてくれる家庭料理店に入ることができ、それなりに満足しながら次の店を物色しました。ほろ酔いの私の目に「焼酎道場」の文字が飛び込んできたので、吸い込まれるように入っていったのです。そこは、地元の人たちでにぎわう一杯飲み屋だったのですが、今考えると一風変わったお店でした。
芋焼酎のお湯割りをコップ酒で頼み、それをちびちび飲んでいたのですが、突き出しもなければ料理の注文も一向に取ろうとしません。今思えばメニューらしきものもなく、壁に品書きが張ってあっただけだったようでした。それでも隣り合わせた地元のおっちゃんや水商売風の女性と四方山話に花を咲かせるようになると、もはや料理などどうでもよくなってしまい、とうとうコップ酒二杯だけ飲んでご機嫌で店を出たのでありました(笑) |