世の中、流通網が発達し、インターネットで現地直送の味覚が居ながらにして食べられる時代になりました。例えば、かつては産地でしか食べられなかった生シラスもスーパーの店頭にありますし、磯の珍味フジツボをネット通販で売っていたのにはびっくりしました。しかしながら、そんな時代にもまだ産地限定という味覚は残っているようです。そのひとつが北海シマエビです。

　北海シマエビは名の通り、北海道の比較的浅い湾や汽水湖に生息しています。有名なのは道東にある尾岱沼ですが、サロマ湖でもとれるようです。とはいえ希少なエビのため、漁期もごく限られています。冷凍物ならともかく、初夏の漁期に出かけなければ新鮮なものは食べられません。さらに生の北海シマエビ、すなわち踊り食いをするなら、まさにその場所に居なければ食べることができないのです。

　尾岱沼にある民宿で踊り食いをさせてもらいました。ピチピチとはねているエビを頭からむしって食べるのはちょっと残酷かなとも思いましたが、身に弾力があってとても美味。以前食べたゆでた北海シマエビがやや泥臭かったのと違い、くせはありませんでした。漁が毎日あるとは限らず、漁期だからといっていつでも食べられる保証はありません。だからこそ、踊り食いに出会えたのはラッキーだったといえます。むろん、踊り食いを肴にいつもより余分に日本酒をいただいたことを付け加えておきます（笑）