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メキシコに行く前、1年間台湾で生活した。
台湾の食生活は実に豊かで、美味しいものが山ほどあったが、その中でも果物の美味しさは格別だった。ライチ、竜眼をはじめ、パパイヤ、バナナ、マンゴー、スターフルーツ、メロン、それから柑橘系の果物も、種類も豊富で美味しかった。
こんなに果物の美味しい国はないかなと思っていたが、メキシコも負けてはいなかった。特に、マンゴーの種類の多さと美味しさには驚かされたものだ。
タパチューラに飛行機で行くと、空港の手前に一面果樹園がに広がっているのが飛行機の窓から見える。広大な土地に等間隔に整然と並んでいるのは、全てマンゴーの樹だ。
日本語の授業が終わると、生徒達がよく自分の農場に連れて行ってくれた。農場では牛を飼っていたが、あちこちにマンゴーやバナナやパパイヤや、その他沢山の果物の樹が植わっているのだ。成っている実はその場で自由に味見をさせてくれた。
5〜6月のマンゴーの季節は特に楽しかった。
日本でマンゴーと言えば、赤と黄色の2〜3種類だが、向こうでは数え切れないほどの種類がある。
「これ食べてみて」と、樹になっている実を採っては次々と持って来てくれる。そのたびに名前を聞いたが、とても覚えきれない。サイズも色も味も様々だ。
「マンゴピーニャ」と言って、また一つ持って来てくれた。ピーニャと言うのはパイナップルだ。
「パイナップルマンゴ」ってどういうことかと思っていると、食べ方を教えてくれた。
「これは手でよく揉んで、穴をあけて吸うんだ。」
やってみたら確かにパイナップルの味がする。実は繊維が多く食べるのには向いていないようで、ジュースだけを吸う。樹に生えている缶ジュースのような、なんとも贅沢なパイナップル味のマンゴーだった。
メキシコのマンゴーの中で、一番美味しいと言われていたのが「ペタウルフォ」と言うマンゴーだ。これは接木でしか出来ないそうで、食べた後で種を植えても生えてこないらしい。
日系人の知り合いの家に行くと、庭にハンモックがあって、それを縛っている立派な巨木がこのペタウルフォの樹だった。実の成る時期には気をつけないと、寝ていると空からマンゴーが降ってくるのだ。その時期には、メキシコ一美味しいマンゴーをお腹いっぱいご馳走になった。
味は濃厚でいて繊細。これぞマンゴーと言う味だ。
そんなペタウルフォも、メキシコシティーでは一度もお目にかからなかった。今思えば、貴重なものだったのだな。
めずらしい果物と言えば「トゥナ」と言うサボテンの実だ。市場に行くとサボテンの葉とともに売られている。
サボテンの葉と言っても、食用のウチワサボテンで、その先に実が付くのだ。おもしろいのは実にもとげが生えていることで、とげは刃物で削り取って売っている。
それを買って帰って、皮を向いて食べるのだ。大きさはキウイくらい、実は白っぽく半透明、中には直径2〜3ミリの黒い種がびっしり入っていて、種ごと食べていた。ドラゴンフルーツと言うのがあるが、あれを小さくして、種を少し大きくした感じだろうか。日本人には好き嫌い分かれていたが、結構好きでよく食べた。味はあまり甘みはなく、さっぱりとしている。水分が多く、喉が渇いているときには最高だった。
なかなか食べられない果物では、一度カカオの実を生で食べたことがあった。チョコレートの原料になるカカオは種の部分で、その周りに果肉が付いているのだ。それが集まって一つの実になっている。
色は白っぽく半透明、味は甘酸っぱいが、そんなに美味しいものではなかった。
後日、知り合いから、アフリカでカカオの果肉を食べ過ぎてひどい下痢になったと聞いた。その人は10個以上食べたと言うが、それほど美味しいものではなかったと思ったけど。食べるというより果汁を吸う感じで、一つ食べただけだからお腹は壊さなかった。
コーヒーの果肉の赤くなったやつも食べたけど、ただ酸っぱいだけだった。
種を加工して食用にする実と言うのは、その果肉はあまり美味くないのかも知れない。むしろあくが強く、食用に向かないものが多い。
果肉も美味しく、種も食べられれば、種を残せないからかな。
国によって果物の美味しさは様々だ。メキシコ人の知り合いが日本に来たとき、彼女は日本の桃や梨やりんごの美味しさに感激していた。
無い物ねだりかも知れないが、食べ物の好みと言うのは、そんなものなのかも知れない。それにしても果物というのは、魅力のある食べ物だ。
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