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グアテマラ織りの魅力を知ってから、グアテマラに出国するのが楽しみになった。何しろ半年に一度はグアテマラに行かなければならないのだ。それが全く苦痛ではなく、待ち遠しくなった。
最初に行ったのはチチカステナンゴの市だったが、曜日によってあちこちで市が立つので、その曜日に合わせてグアテマラに行くようになった。
一度の滞在時間は3日間しかない。グアテマラシティーに着いたらすぐその日市が開かれている町に移動し、次の日は別の町に行くというスケジュールで、織物市通いが続いた。グアテマラでの移動はもちろんバス。どこへ行くにも、ぎゅうぎゅうのボンネットバスに揺られて旅をした。
織物市が開かれる主な町は、チチカステナンゴの他に、ウエウエテナンゴ、パナハッチェル、ケッツァルテナンゴ、アンティグア等だ。それ以外にも、グアテマラシティーの市場にも織物が置いてあったし、途中の小さな町に立ち寄って、織物を作っている家を訪ねたりもした。
市が開かれている町には、どこも二回以上行ったが、一番よく行ったのがウエウエテナンゴかな。何となく交通の便が良かったのと、比較的町が大きくて買い物もしやすかったからだ。
それから中華料理屋が2軒あるのも嬉しかった。こういうところの中華料理屋は、たいてい中国人の華僑が経営している。グアテマラ料理もいいが、日本人としては、たまに食べる中華料理はご馳走だった。
ウエウエテナンゴには、常設の市場に織物が置いてあって、そこにもたくさんの織物があったので、どうしても曜日が合わない時は便利だった。
ウエウエテナンゴでいつも利用していたホテルは激安で、値段は確か1泊1ドルだったと思う。翌朝ホテルのレストランで食事をしたら1ドル25セントで、値段を聞いて椅子から滑り落ちそうになった。
その安ホテルでは、苦い経験もある。
そのホテルでは大抵2階の部屋に案内されるのだが、その時は1階の部屋に通された。中に入ると消毒液のにおいがプ〜ン。いやな予感がしがた。とにかく安いので文句は言えない。我慢して寝ることにしたが、夜中に体中が痒くて目が覚めた。
ズボンを脱いでびっくり。両足に無数の赤い点。ダニか何かにやられたのだ。数えてみたら片足で40箇所以上あった。これが全身にあるのかと思うとぞっとした。この時はたまたまウナコーワがかばんに入っていて役に立ったが、とても朝まで寝ていられなかった。
景色が綺麗だったのが、パナハチェルだ。この町はアティトラン湖という湖に面していて、比較的有名な観光地だ。外国人の数も、他の町と比べて多かったように思う。
ガイドブックによると、アティトラン湖畔には温泉が出るらしい。天然の露天風呂があると書いてあったので探してみた。
湖畔に小さな汚い水溜りがあったので手を入れると生暖かかったから、多分そこのことだろう。入れないことは無いが、かなりの勇気が必要だ。
それよりも興味を持ったのは、地元の人たちが湖で釣りをしていることだった。
空き缶に釣り糸を巻きつけて、岸から投げて釣っていた。餌はミミズだったと思う。小さなフナのような黒い魚が釣れていた。
「どうするの?」と聞いたら、
「コメール」食べる、と答えてくれた。
ちょっとやらしてもらったが、実にシンプルな釣りだ。
「大きな魚はいないの?」と聞いたら、手を肩幅くらいに広げて、
「シー」いるよ、と言っていた。ホントかな。
メキシコシティーにいる時は、グアテマラに行くたびに沢山の織物を買った。沢山と言っても1回400〜500ドルで、20〜30枚程度だ。これは日本へのお土産になると思ったからで、何度か実家に船便で送った。メキシコシティーの日本人も興味を持って、中には買ってくれる人もいた。
そんなグアテマラ織りの布だが、今手元に3枚残っているだけだ。2枚は色違いの同じガラで、バスタオルくらいの大きさだ。アンティグアで買ったものだが、木綿にいくらか羊毛が織り込んである。本当はベッドカバーがほしかったが高くて買えなかったので、サイズの小さいのを2枚買った。2枚とも家の壁にかけてあるが、なかなか味があって見飽きない。
もう1枚はどこで買ったか忘れたが、どこかの町から更にタクシーで行った田舎の、民家のギャラリーのような所で買ったものだ。
A4紙くらいの大きさで、何年も前の綴れ織りの切れ端だが、これが結構いい値段だった。
綴れ織りというのは、裏表全く同じガラの織物で、織るにはかなりの技術がいるらしい。機会があったら鑑定団に出してみようかと内心思っていたが、実家の母親が洗濯してしまい色があせてしまった。
それでも存在感のある、素晴らしい布切れだ。
青空の下、いくつもの屋台が並ぶ織物市は、初めて見た時は圧巻だった。そんな感動を求めて、何度も市に足を運んだのだ。色々な織物との出会いがあったが、それらはほとんど、今どこに行ってしまったのかわからない。
今グアテマラに行けば、またあの時と同じ織物が買えるのだろうか。メキシコにいた4年の間でも、グアテマラの織物の品揃えが、どんどん観光向けになっていると感じていた。手織りが少なくなり、機械織りが増えてきたのだ。それに応じて、織物の値段もどんどん高くなっていった。
今、あの感動を求めてグアテマラに行くとがっかりするかもしれない。
でもあのボンネットバスや、田舎の町の雰囲気は変わっていないことを、時々勝手に願っている。
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