破壊ロボット


 

ボクはどうして生まれてきてしまったのだろう?

この場所に今のボクが生まれてきたとき、何もなかった。

 

絶間ない人間と、人間の争い。

ボクは僕を失った。

そして

 

荒廃した世界。瓦礫の中でボクは生まれた。

 

いくつかの偶然 

―― あの日、あの場所に一つの半導体がなかったら。

あの日ここに古ぼけたボディーがなかったら。

あの日、雷がこの地に鳴り響いてなかったら。――

・・・ボクはその産物にすぎない。

 

はじめて、モニターに飛びこんできたのは灰色の空。

残骸と化した建物に切り取られた、部分的空。

剥き出しの鉄くず、コンクリートの瓦礫。

 

大都会にある近代的建物と呼ばれていたもの。

ボクはもとの姿も知っている。壊れたときも知っている。

 

そうしたものに埋もれた、小さな小さな空。

その時はあっという間に過ぎていく雲しか見えなかった。

その日はたぶん、それで一日が過ぎたのだろう。

―― その日だけじゃない。

いったいどれだけの時間ボクはそうやって過ごしていたのだろう ――

「人間」で言うところの時間。

ボクにはそれは関係なかった。

それが永遠というものであることも、ボクの知識としてははじめからあった。

それがどんなものかは知らなかったけれど。

 

ボクはなんで生まれてきてしまったのだろう?

答えなんて得られることはない。

ボクはただ、空を見つづけていた。

 

どのくらい時が流れたのだろう。

わからない けれど、ボクは立ちあがった。

きっかけはちょっとしたことだった。

雪・・・。

雪が降ってきたんだ。

ボクの上に。

それが雪だという知識はあった。

昔。

ボクの形が今とはまったく違っていた頃。

あの人が教えてくれたこと。

そのとき、ボクは立ちあがりたいと思った。

機能したことのない機関を使う。

右手、左手、右足、左足・・・。

機能させる必要のなかった機関に、必要性の波が押し寄せる。

立ちあがったとき。

それは新たな第一歩だった。

モニターに入って来たのは相変わらず、荒廃した世界。

もしボクが「荒廃」なんて知識がなかったら・・・。

それはボクにとってかけがえのない世界になっていたかもしれない。

でも、ボクは知っていた。

確かに「平和」なときがこの世界にも存在したことを。

 

そよ風にゆれる街路樹、そこで翼を休めるちいさな鳥。

朝の光を浴びて、活気づいていくオフィス街。

季節の移り変わりを感じさせる店のショーウィンド。

路地裏であくびをする猫たち。

昼時に弁当を売りに来る、おばちゃんのワゴン車。

 

・・・ナクシタ瞬間ヲ今モ忘レラレナイ。

昔、ここには確かに生があった。

 

ボクはなんのために生まれてきてしまったのだろう?

 

 

―― それでも。

 

 

ボクは見つけた。

ボクとは違う生命の息吹を。

それは星の瞬きが生み出した、最初で最後の奇跡。

ミクロの世界の奇跡。

海の中にそれはいた。

 

ボクにはわかった。

このためにボクは生まれたんだ。

 

その「人間」の目には見えないであろう奇跡を

ボクは握りつぶした。

・・・最初から、なかったら、荒廃する、こともない。

 

ボクの思いとはうらはらに。

 

奇跡は徐々に海を満たした。

ボクの思いとはうらはらに。

ヒトは再び現れた。

 

ボクはもう、ナクシタクナイ。 

ナクシタクナイカラ、ハジメカラ ナカッタコトニスル・・・。

 

そうして、何度目の破壊が起ころうとしているのだろう、この世界に。

 


挨拶

あ、あれ〜!?

アンハッピーなエンドになっちゃったよ?!

どうしよ〜(汗)なんでだ〜!!?

・・・この子を誰か倒してください。ああ〜しまった〜なぜじゃ〜〜〜。


ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜


ううむ、優さんってこーゆーの書けたんですねーって皮肉でなく。
「RB」がライトだから(裏に人間と妖精の確執とか深い因縁があるにしろ)、ちょいとショッキングかも。

ああ、でも例の中篇SFも、こんな雰囲気でしたねぃ。そーいえば。

正直言って、オイラが苦手ってゆーか嫌いとかいってしまうような物語ですけど。
でも、こういうのを読むのは好きですって矛盾してるなぁ。

「物語の中くらいハッピーエンドで終わろうよ」ってのがオイラのモットーなんで、物語として読むなら嫌いですって本音だろうがなんだろうが言うべきじゃないかもしれないけど。
でも、こう、なんつーか「考えさせられる」小説ってのを読むのは好きです。
なにせ、無駄にモノを考えるのが好きなやつですから(笑)。

とにかく。
オイラ的にはイヤだけど、それでもこの話は・・・スゴイ! ってのは違うなぁ。なんとゆーか。
うーん、えーと、素晴らしい。って、のも違うし。
むー、けど、すごく心にぐわわーっ、とか来ました。

ロボットの思考回路ってかな。
想いってゆーかな。寂しさとか、悲しさとか、それを無くすために「破壊」という答えを導き出した歪んだ論理とか。
ほんと、すっごく「読ませてくれる」物語でした。

ホント、良いものを頂いて、ありがとございましたー!


ちなみに、おまけも頂いちゃいました。


INDEX

おまけ