《十五分間の幽霊》 それは、ある小学校での噂話。 『夜中の二時から二時十五分までの間、時計台の前に幽霊が出る』 そんな、どこにでもあるような噂話。 もちろん、実際に見たことがあるわけじゃないし、確かめることも出来ない。 子供にとって、夜中の二時なんて言う時間は寝ている以外の行動をしたことがないし、 大人にとってそんな噂自体、よくある話と思っている。 だから当然、その噂が真実であるかどうかは誰も知らないでいた。 そんな中、その噂を確かめようとする人間が現れた。 その小学校の六年生の、評判の悪ガキ三人組である。 その噂を確かめたい。そんな子供らしい好奇心が沸いてきたのだ。 おそらく、それが一人だったら出来ないだろうし、二人以上いても そうそう出来るものではない。 それが、リーダー格の少年の言い出しから話が進んで、行くことが決まったのだ。 その後、少年たちは段取りを決め、家を抜け出す作戦を練り、実行の日取りを、 夏休みの最後の日に決めた。 /\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\ 夏休みの最後の日になった。 少年たちは親が驚くほど真面目に宿題を片付け、そして、夜中の一時四十五分に 校門の前に集合した。 全員が集まったことに三人とも満足し、また安堵し、閉まっている校門をよじ登った。 そして、目的の時計台の前にたどり着く。たどり着く、と言っても、 それは校門を入って、グラウンドを横切り、校舎の前に来ればたどり着けるものだが。 もう一つ言えば、それは時計台、と言うほど立派なものでもなく、本来はよくある ポールの上にある時計に、何年か前の卒業生が卒業記念にと時計台に装飾し、 時計台としているものなのだ。 少年たちが待つことしばし、時計台が二時ちょうどを指した。 その瞬間、少年たちは後ろに人の足音を感じ、びくっと体を震わせ、振り返る。 振り向いた先にいたのは、一人の老人だった。 何をしている、と老人は言う。 少年達のリーダー格が、幽霊を確かめに来ている、と返す。 老人はふむ、とうなずいた後、おもむろに時計台へと上っていった。 何をするのかと少年達が見ていると、老人は時計の針を十五分進めた。 何故そんなことを、と少年の一人が問うと、老人は幽霊が出ないようにするため、 と答える。そして、幽霊は二時から二時十五分の間に出るのだろう、と付け加えた。 老人が降りてきてから、少年達と老人はただ座って十五分過ぎるのを待った。 その後、老人は再び時計台に上り、時計の針を十五分戻し、帰り道に気をつけろ、と 少年達に言って、去っていった。 そして、少年達もいい加減に帰ることにした。 /\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\ 次の日、学校が始まった。 例の三人も朝起きるのに苦労しつつも学校へ行き、終業式等を済ませ、 そして下校する途中、グランドで校長に会った。 意外と校長と仲のよい三人は、昨夜の事を話した。 一通り話を聞き終えた後、校長はその老人の特徴を問う。 普通なら夜中に学校に忍び込んだことを諭すはずだが、少年達はそんなことに 気づかず、老人の特徴を話し始めた。 少年達が老人の特徴を話していくと、校長の顔色が変わっていく。 最後には震えてきた校長を見て、さすがに少年達も校長の様子がおかしいことに 気づき、大丈夫かと声をかけた。 しばらくそんな言葉も届いていない様子だったが、落ち着いてきてから 校長は言った。 それは、去年死んだ先代の校長と同じだと。 −幕− あとがきと言う名のいいわけ どうも、TKSです。 今回、目指してみたのは、ずばり「台詞が無い」小説です。 と、言ってもどうも失敗している気がしますが。 また、詳しい説明は一切端折りました。最低限の文章で必要な情報を 伝えよう・・・っていう訳だったんですけど、これもまた失敗しているような 気が・・・ って、失敗ばっかりですね。うーむ、これは人に贈っていいものなのでしょうか・・・? まあ、贈りますけど。 では、機会があればまたお会いしましょう。
ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜贈っていいです(断言)。
いやぁ、もういいモノありがとサンクスですっ。
ちょっとした怪談ですねぃ。でも、恐怖よりも内容が良かったなぁ。
すぱっと読めるし、なによりセリフがない―――とゆか、人名の出てこない文章って、オイラ的にツボだったり(自分でもよく書いてるし)。なんとゆーか、固有名詞がない小説って、なによりも客観的に読めるから読みやすいんですよ。
名前があるとそれだけ設定もあって、その設定に自分を照らし合わせ―――つまるところ“感情移入”してしまうんですよね。
いやそれもそれでいいですけど、そういう小説ってちと疲れたり。
面白い小説は、その疲れもまた気持ちよくて楽しくなったりするもんなんですが。
さてさて、TKSさんどもでした〜♪
“すぱかの”も楽しみにしてますよー!