彼はもうじき死ぬ。

(そうだよ、死ぬんだ)

別に悲嘆とか絶望とかそういった類のものはない。

 

 

――死。

自らの存在が消えるということなのかもしれない。
彼にはそんなことは分からない。

たとえそうだったとして、どうということはない。
生まれ変わって別のものになれるとしても同じだろう。

 

 

 

***

 

 

 

俺の名は由家恭二。
名前からわからんこともないだろうが、元公家さんらしい。
しかし、家はそこら辺の中流家庭で、そんなことを俺が実感した覚えはない。

――ああ、そんなことはどうでもよかったな。

少なくとも、今の状況では。
唐突かもしれないが、俺はこれから死ぬところだ。

死因は――予測だが――失血死か外傷性ショック死といったあたりだろう。
まあ、意識がぼんやりしている中でショック死もないだろうが。

「恭二ッ! 恭二!」

耳元で仄香(ほのか)が俺の身体を抱きながら叫んでいる。
血まみれの俺を抱いているんだから、当然仄香も血で汚れている。

――お前それ、お気に入りの服なんだろ? 離れた方がいいぞ。

そう言ってやりたかったが、口が動かない。
そういえば、こいつ――仄香――とも長い付き合いになったと思う。

 

いや――短いか…

 

 

 

俺が生まれた1984年の冬。仄香に会ったのは病室の中、だった。
俺が生まれる数日前に仄香は生まれていて、親同士が友達だった縁で顔を会わせたらしい。
当然俺はそんなこと覚えちゃいないが。

「恭二君とこの子、よく似てるわねぇ」
「そうそう、他人とは思えないくらい」

母親同士、そんな会話が交わされるほど、生まれたばかりの俺と仄香はよく似ていたらしい。
――ひとこと断っておくが、仄香は実の姉だったとかいうくだらんオチはないぞ。
俺に言わせりゃ、赤ん坊なんてどれも顔の見分けなんぞ付かないもんだ。

 

 

 

***

 

 

 

時間は足早に過ぎ去っていた。

しかしそれは、動かない少年とそれを抱く少女の周囲で、だ。

少女の方は動かないそれを呼び続け、時間という意識など無いに等しかったし、少年の方はといえば、

”時間を長く感じる、ってのは、こういうことか・・”

とか、呑気なことを考えていたりしたからだ。

 

人々の喧噪と雑踏の中で、2人だけの時間がゆっくりと過ぎ去っていく――

 

 

 

***

 

 

 

俺は昔から、我の強い子だと言われていた。俺自身そう思っている。
何度も親から聞かされていたりして、有名な俺の逸話にこんなのがある。

 

 

それは俺が5歳の頃だった。

俺は父親と街中を歩いていたとき、こんなことを言い出したらしい。

”あのテレビのチャンネル変えていい?”

俺の指さしたものを見て、親父は仰天したとか。
俺が指さしたもの――それは街頭テレビだったのだ。
ほらアレ、ビルの一面に据え付けてあって、人通りの多い通りとかに配置されているアレだ。

こともあろうに、それのチャンネルを変えてほしいと言い出したらしいのである。
なんでかと言うと――

”見たいアニメ番組があと3分で始まってしまうから”

だったそうだ。我ながら呆れるが。
まあ、そこまでならその辺のガキと一緒だっただろう。

”恭二、あれはな、テレビ局とビルの管理者が両方のぷろもーしょんのためにたいあっぷしてるから変えられないんだよ”

親父はそういう実務的なことを言って俺をなだめようとした。親父はそういう奴だ。
しかし俺はそんなことでは収まらなかった。

”じゃあ、その”びるのかんりしゃ”ってひとに言ってくる”

とか言って、そのビルの中に入っていって――
結局、その街頭テレビのチャンネルは変わってしまったらしい。

どうも、俺がビルの管理者とおぼしき人物に直談判して変えてしまったらしいのだ。
後で親父の聞きに行った所によると、30分ぐらいならいいだろうと特別に認めてもらったそうだ。

 

 

俺は我が強いというのは認める。
しかしこれはそういうんじゃなくて、ガキで恥知らずだっただけじゃないのか。
――今だったら恥ずかしくて絶対にそんなことできるわけがない。
親は”5歳ごろは恥ずかしがる時期だ、それなのにお前は〜”とか言う。しかしそれは俺が単に馬鹿だってことじゃないのか。

 

 

ああ、馬鹿だ。これは間違いない。
いや、あるいは――

これは俺の勝手な意見だが、世間で”我が強い”とか”自分を持っている”とかいうのは単純で馬鹿ということなんじゃないだろうか。
そうじゃない方が世間では役に立つ人間だし、世の中はそうじゃない奴が上手くやっていけるようにできてるしな。

俺はそうだったから、いつも損ばかりしてきた様な気がする。

要するに、馬鹿だったということだ。

 

 

 

「恭二はバカだよ」

よく仄香にそう言われた。
言われた時は純然に腹が立ったが、あれはあながち間違ってなかったらしい。

俺は昔から札付きの問題児で、どこでも教師からは疎んじられた。
とにかく協調性がない、という。

小学生の時は少数派だった。
全体のまとまった雰囲気というのをぶち壊すようなことを平気で言い、和を乱す。
何かの話し合いで多数決を取るときにはかならず少数派。
教師としては扱いづらい存在だっただろう。
そんな奴と遊んでも楽しくなかったのか、友達はほぼいないに等しかった。

――仄香を除いては。

 

「恭二ってなんでそんな風なの?」
「何がだ?」

学校の帰り道、仄香に聞かれた俺は、何だか分からなかったのでそう答えた。
あれは確か、中2の頃ではなかっただろうか?

「クラスのみんなと一緒になんかする、って嫌いでしょ?」
「…嫌いだ」
「だから、それがなんでかなーって思って」
「俺の性格だ、しかたねーだろ」
「そーいえば小さい頃から恭二って、そんなんだよね。冷めてる、て言うか」
「余計なお世話だよ」

俺はいつもぶっきらぼうで素っ気ない。
そんな話をしているうちにそれぞれの家に着く。
まったく因縁としか思えないが、俺と仄香の家は近い。

「んじゃ、また明日ね」
「会わねーことを祈ってるよ」

正反対の挨拶を交わす俺たち。
もちろん仄香はンなことで傷ついたりするタマじゃないが。

俺と仄香はそれぞれの家に向かっていく―――途中、仄香が思い出したように振り向く。

「あ、アンタんとこの親、あさって出張でしょ!?」
「メシ作ってやる、か?」
「おお、さすがあたしの相方。 のみこみ速いじゃん♪」
「……好きでやってるわけじゃねーよ」

 

こーゆー間柄であったにも関わらず、俺たちのことが噂になったことはなかった。
俺の冷淡な態度がそういう噂を一掃していたのだろうとも思う。
本当のトコは……どうだっただろうか、俺には分からないが。

そういう関係も悪くなかったし、仄香も嫌いだと思ったことはない。(うざったいと思ったことはあるが)
俺はそこそこ成績もよかったから、傍目から見れば満ち足りた生活だっただろう。

 

それなのに…

――俺は、いつもどこかで焦っていた。

やるべきことがあるはずなのに、それを放ったらかしにしている――
面倒くさいことに、俺はそのことを自覚していたのだ。

 

 

 

そして俺は高校に入学した。
高校は生徒同士の繋がりが希薄な分、俺には暮らしやすいところであった。

勉強しなくても怒られないし(仄香以外には)、そこそこやって、最低限授業に出てれば進級出来る。
それに何より、クラスの団結云々とかへの協力を強制されない。
(そのかわりクラスで浮く、という所だけは相変わらずだったが)

まあ、やりたい放題だ。
教師に反抗したりはしなくなったが、代わりに言うことも聞かなかった。
もちろんクラスの欠席日数はダントツトップ。

非行少年というわけではなかったが、ある意味では完全な不良だった。
教師は俺の事を空気のように扱っていたし、例によって友達はいなかった。
俺の方も、別にそういうのは嫌じゃなかったので、今に至るまで2年間そんな風だ。

仄香の方はと、よろしくやっていたようで、友達も多くなった。
(お陰で、女子には知り合いが増えるという副産物があった)
よくも俺とこう正反対の道を進めるなと感心してしまう。

 

 

 

そして――

仄香は受験生になった。

俺は結局、大学は受験しない。
卒業したらフリーターにでもなろうかと思っている。
”やるべきこと”はまだ見つかっていない。

 

 

…はずだった。

 

しかし今日――

仄香は受験生として予備校に。
俺は仄香をバイクで送りついでに街をぶらついている。

2人で予備校の近くの裏路地に差し掛かった。
裏路地といっても後ろめたい感じはなく、俺達の他に通行人もいる。
ちょっと出れば大型のショッピングモールとかもあったりして、様々な年齢層が混在する道だ。

そこでだった。

「恭二、あれって・・・」

仄香がこっそりとある方向を指した。そこには人がいた。
そいつはボロボロの服を着て、ボサボサの髪で、ボロ屑の様にうずくまっていた。
只の浮浪者だ。俺はそう思った。

「この街も結構ぶっそーだからな、最近は」

別に浮浪者なんぞを気にかける俺ではない。
とっとと歩いていこうとした。
ところが、浮浪者がまだ気に掛かるのか、仄香が動かない。

「何やってんだ? 置いてくぞ?」
「…うん」

俺に急かされて、仄香が歩を進めた。

「なんか可哀想だね、あーゆー人」
「人には人の事情があるもんだ。可哀想でもなんでもねーよ」
「…冷血漢」
「たりめーだ」

そう、そいつにはそいつの事情があるのだ。
たとえそいつがどんなにヤバイ状態にあろうとも、そいつの人生だ。
他の連中が変にどーにか出来ることではないし、していいとも思わない。
だからこそ、まったく可哀想じゃない、と思う。

そいつの目を見ないようにして、俺と仄香は浮浪者の脇を通り過ぎた。
ところが、意外な事が起きた。

 

「…なあ……」

 

そいつが俺達に声を掛けてきたのだ。
俺は少々びびったが、冷静に(仄香、無視だ無視)のサインを送った。
――が。

「はい、なんですか?」

仄香は俺のサインを無視して、浮浪者に答える。
ひょっとしたら、それが間違いの元だったのかもしれない。

そいつは立ち上がってきた。

「…だな? ……な?」

何かぶつぶつと呟いていた。
何か、確認を取っているような感じだが、あまり聞き取れなかった。

立ち上がったそいつは、20代後半といった感じの顔をしていた。
顔を歪めてにやりと笑った。それは凄絶だった。俺は嫌な予感がした。
こーゆー場合、何が起こるのか…

そいつは腰の後ろに手を伸ばした。
そしてすぐにまたすぐに戻す。その手に持ったモノがきらりと光った。

 

 

包丁。

その刃先は、仄香。

後は自動的だった。
俺は隣にいた仄香を、体当たりで吹っ飛ばした。
直後、焼けた鉄を脇腹に突っ込まれたような痛みが走った。

…刺されていた。
かなり奥まで入ったとすぐに分かった。

仄香はまだ何が起こったか分かっていないらしい。
おそらくそっち側からでは、俺と男がぶつかったぐらいにしか見えなかったのだろう。

「ど、どうしたの? 恭二?」

俺を刺してなお、そいつは笑っているのに気がついた。
その視線の先には……まだ状況を理解していない、無防備な仄香がいた。
おそらく、奴の次の獲物。
俺から包丁を引き抜くと、俺は倒れるだろう。きっと、仄香は動転して、まともに動けはしない。

――させるか。

そう思った瞬間、俺の身体は再び自動的に動いた。
最初に動いたのは喉だった。

「うがああああああああああっ!」

俺は叫び、身体をよじって自ら包丁を引き抜いた。
朱く熱い血液が脇腹から吹き出す。それは恐ろしく熱く、かつ勢いよく迸った。

「!?」
「きゃあああああああああっ!」

仄香が悲鳴を上げ、男が僅かに動揺の色を見せた。
もちろん俺はそれを見逃さない。

バコッ!!

俺は、普段の運動神経からは想像できない程のパワーとスピードを発揮させて、男を殴り飛ばしていた。
男はおもいっきりのけぞり、きりきり舞いしてから地に倒れた。
血塗れの包丁が、そいつの手から離れ落ちる。

「…ぬあッ!」

顔を押さえながらも、男は立ち上がった。
辺りを一瞥し――包丁を拾い上げる――つもりだろうが俺はそうさせなかった。
…飛びかかって、包丁を奪い取ってやった。

「恭二ッ!?」

仄香がひきつった声で俺を呼ぶ。

「大丈夫なのッ!?」

大丈夫なわけがない。が、俺は答えず、目の前の男に包丁を突きつけた。
傷がじくじくと痛み、目の前がふらふらしたが、ここで怯むわけにもいかなかった。

「うらぁッ!」

やけくそだった。
俺は包丁を振り回した。
全然当たらなかったが、

「…くそっ!」

男は毒づくと、背を向けて走っていった。
そして、路地の奥に消えた。

俺の身体からは力が抜け―――そのまま後ろに倒れた。

「――恭二ッ!?」

 

 

 

そして――今に至るワケだ。

 

 

***

 

 

 

(くそっ! くそっくそっくそっ! ――畜生がッ!)

街中を走る足は止めないまま、彼は何にともなく罵っていた。
――どうしてこうも自分の思うようにいかないのだ!?

最初の狙いはあの妙に幸せそうな娘だった。
あの娘の生命を終わらせて、それで終わりにするつもりだったのだ。
しかしそれがどうした、脇にいた男に邪魔されてしまうばかりか――そいつは――

 

 

 

彼は脚本家だ。
テレビやラジオなどの作品ばかりを請け負っていたから、放送作家と呼ぶべきかもしれない。
しかしそれ以前に、一週間ほど前にペンは折っているから、『だった』なのだが。

彼の名を言えば、知っている者が街中でもちらほらといるだろう、そんな作家だ。
処女作がヒットし、全国ネットで放送され、ちょっとしたブームにもなった。
つまり、いわゆる新進気鋭という奴で、マスコミ各界の絶賛を受けながら文壇に踊り出た逸材であった。

ただの一発屋ではないかとの批評も交わされた。
しかし、2作目も順調に視聴率を伸ばしていき、彼を疑問視する人間は少なくなった。
続く3作目の成功によって、20代の女性を中心とした人気と地位は確立された。
TVのバラエティー番組にも度々出演するほどになり、まさに順風満帆だった。

 

――表向きは。

 

では裏からはどうだったか。
人生の黎明期と(端からは)見えた一面、その実、精神は衰弱しきっていた。
市販の睡眠薬を常用せねば眠れなくなっていた。
食事などほぼ毎日のように嘔吐し、慢性的な栄養失調が続いた。
そして1週間前、発作的にマンションを飛び出した。

包丁を片手に。

 

 

 

元々彼は、作品を執筆するなどあまり好きではなかった。
そんな彼を放送作家に向かわせたのは、こんな単純な理由。

(一度名前が売れれば収入も安定してるし、それに何より芸能界だしな)

彼は自分にそこまで文才は無いと自覚していた。
しかしまた、自分が賢いと思っていたし、実際彼は賢かった。
彼は放送作品をヒットさせるためには、何よりも時代の流れ、その時代の人間が求めるモノを、と考えた。
そのため彼は、数多の既存ヒット作品の要素を積極的に取り込んだ。
よく言えば時代の集大成、悪く言えば大規模なパクリだ。

幸か不幸か、彼にはそれを成功させるだけの才能があった。

かくして、”ヒットするために生まれた作品”は当然の様にヒットし、彼の名を文壇に押し上げた。
しかし、ここから既に彼の転落は始まっていた。

 

 

処女作の熱気が醒めた後だった。
彼は、ひとつの問題にぶち当たった。

2作目が、まったく書けなかったのだ。
しかしそれは、明確な”自分の作品”を持たない彼にとって、ある意味当然であった。

”それなら・・・”

彼は処女作の世界観をそのまま持ち込み、作中人物やシチュエーションをすり替えて”2作目”とした。
なにしろ、元が2年間をつぎ込んだ作品だ。そう簡単にバレたりはしない。
その作品によって、彼の名は広く一般に知られるようになった。
本人のTV出演依頼も徐々に増えていった。

 

しかし。

 

当然の如く、3作目のアイデアなど浮かぶはずなどない。
さすがに以前の作品の使い回しなど、もう通用しようはずもない。
ここに来て、彼は苦悩した。

周囲は彼に、当然の様に前2作を上回る作品を期待している。
しかし、彼には〆切を守り、さらに大衆のニーズに応えるものを創り出すことは最早不可能だった。
不可能だが、やらなくてはならなかった。
それほど労せずに手に入れた地位とは言え、失うのは怖かった。
もし自分がそれを失ったときどうなるか、そのよく分からない恐怖が、彼を執筆に向かわせていた。
だが、2年間で創り上げたものと同等以上のものを、はるかに短い時間で創り出すなど、どだい無理な話であった。
TVへの出演や雑誌の取材以外は一切自室にこもり、原稿を書き続ける。
食事などはほとんど摂らず、頭がぼんやりしてきたら薬によって強制的に寝た。
彼自身、いくら地位のためとは言え、なぜ自分がここまで無理をするか理解できなかった。

 

いくらか〆切をオーバーしつつも、彼の第3作目は出来上がった。
彼が血を吐く程の想いを込めた作品は、多少荒削りながらも良い出来という所に評価が収まった。

 

 

 

3作目の執筆が終わり、彼は憔悴し切っていた。

(とりあえず… 終わったか…)

そんなある日。
それでも少しは力を抜けるようになって、TVなんかを付けてみたりする。
今までは、自分が出演している番組ぐらいしか見ることができなかったのだが。

しばらく見ていると、自分の作品の話題がちらっと顔を出した。
(作品の事なんか忘れるために見たのにな)
――彼は苦笑した。
画面では解説者と思しきおじさんが、視聴者の微妙な心理を、ユーモアと適度なストーリー性で捉えているのがヒットの云々、などと勝手なことをのたまって、アナウンサーがそうですねと頷いていたりする。
彼は再度苦笑し、他の番組を見ようと――

 

 

 

”これからも、どんどん書き続けて行って欲しいですね”
”次回作に期待しましょう”

 

 

 

彼の動きが止まった。

そうだ。
自分はまだここで終わりではなかった。
まだ次がある。
そしてその次がある。
さらにその次がある。
次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次の次が、ある。
いつまでいっても次がある。いつまでこうしていればいいのか。
多分死ぬまで終わらない。
いっそのこと逃げるか?
いや、そんなことは以ての外だ。出来るわけがない。
いくらまがいものだらけで創り上げたとはいえ、千載一遇とも言えるチャンスで手にしたこの地位。
そこから転げ落ちた後、そこには何が待っているのか。
おそらくそこには何も待ってはいない。
待っているとすればそれは底無しの空虚。
彼はそれが怖かった。
例えば、作家の道を放棄したとして、作家のそれに匹敵するような、”彼”を証明するアイデンティティーは得られるだろうか。
否、彼にはそう思えなかった。
何もない彼の何もない人生。その中で見つけたたったひとつの彼という存在の証明。
他人とは違う自分、唯一無二と言い切ることのできる何か。
だからこそ、血を吐く思いを耐えるだけの力を彼は持っていた。
しかしそれはいつまで続くだろうか。
そして、義務は永遠に続く。

(……………………)

空虚か死か。
どちらかしか無いが、どちらにも救いはなかった。

 

 

 

そして現在(いま)。
彼は街を走っている。
その両手を朱く染めて、走っている。

マンションを飛び出してから一週間。
彼は結局、死を選んだ。
しかし彼は、最後に何かしてから死んでやろうと思った。
彼は考えた。
自分を追い込んだものに復讐を遂げてから死んでやろうと。
さて、彼をここまで追い込んだのは何であったか。

それは”物語”だ。
くだらない”物語”のためにペンを取り、どうでもいい”物語”を書いた。
そのために自分はこうして、死のうとしている。

その”物語”に復讐するためにはどうすればよいか。
簡単だ。”物語”が詰まっているものを壊せばいい。
それは何か。それは人間だった。
そいつを壊す――つまりは殺して、しかる後、自らも死ぬ。
彼の人生という名の不出来な”物語”、それにさっぱりとした終わりを迎えるために。

彷徨った挙げ句流れ着いた街で、彼は包丁を買った。
ぼろぼろの格好でスーパーに出向いたので店員が怪しんでいたが、もうそんなことは問題でも何でもない。
後は適当な路地に座り込んで獲物を待った。
十分に”物語”をため込んでいそうな人間――幸せそうな人間を。

 

 

 

(畜生ッ!)

しかし彼は失敗した。
――あの男は何だ!?
なんということだ!
”物語”を壊すどころではない。
あの邪魔した男――生きるか死ぬかは知らないが――は少女を守った英雄として語られるだろう。
それこそ”物語”だ!
彼としては許し難い、最も愚かな失態であった。

(もう1人、誰か――)

もう誰でも良かった。
――殺したい。
このままでは…

「いたぞ!アイツだ!」

唐突、後ろから聞こえてきた声に、彼は振り返る。
警官だった。
猛烈な勢いで彼に迫ってくる。
彼も慌てて駆け出すが、捕まるのは時間の問題だった。

(嫌だ!)

何もなすことが出来ぬまま、拘束され、連行される。
彼は人生の敗残者として大衆に晒され、貶められる。
彼が没落してゆく様を、彼自身が見届けなければならぬのだ。

――それは彼にとって、地獄すらぬるい程の苦痛であろう。

(そんなことがあってたまるか!)

全力で走りながら、彼は辺りを見回す。
すると左手方向に、5階建て程度のビルがあった。
そしてその脇には、屋上に繋がる非常階段。

(しめた!)

彼は迷わず踏み込み、階段を駆け上がる。
当然警官達も追ってくる。

「おら待てッ!」
「逃がさんぞ!」

屋上までなんとかたどり着く。
そして、少し遅れて警官達も屋上になだれ込む。

彼を見て、警官達は一様に息を呑む。

「・・・・・・ふふっ」

彼は笑っていた。
屋上の端に立ちながら。

「ひ、ひはははははははははっ!」
「お、おい待て!」

その一歩は至極あっさりと。
警官が制止するより速く、彼は宙に身を翻した。

「ひゃははははははははははははははははは――――!

 

 

 

彼が笑いながら落ちていく。

そして地面に激突する瞬間、彼が何を考えていたのかは分からない。
何ひとつ為すことが出来なかった自分の人生を悔やんで、苦笑していたのだろうか。
自分が死ぬことで、最後に世界に一矢報いられることに笑っていたのだろうか。
もしくは、ただただ理由なく微笑っていたのだろうか。
そんなことはもう誰にも分からない。

 

そこにあるのは、夢破れた哀れな死体だけ。

――そして場面は、少年と少女のもとへ戻る。

 

 

 

***

 

 

 

そんなこんなで。

 

俺は死ぬ。コイツを守るために。

俺は後悔していない。
そうだ、後悔なんぞするものか。するはずがない。
俺はずっとそれを望んできた。

”大切な何かを守って、そのために死ぬ”

それこそが俺が17年間望んで来たことだ。
今までは薄ぼんやりとしたものとしてしか見えなかったが、今ならはっきりと見える。
そう、それはなされたのだ。

俺の生きてきた価値はあった。少なくともそう言える。
誰かが言っていた。
”人は皆、生きているだけの価値があることを探すために生きている”と。
だったら俺は合格だろう。誰が審査するわけではない。俺がそう思ったのだ。そしてそれで充分だ。
生きているだけの価値はあったと俺が思うことが出来ているのだ。誰も口など挟めない。

俺はふと、空を見る。
空は俺を祝福するように見事な日本晴れで、ドコにでも行けそうだった――

 

 

 

***

 

 

 

仄香は泣いている。
もはや動かぬ恭二をその胸に抱いて、泣いている。
そして、名を呼び続けている。

「恭二ッ!恭二ッ!」

仄香には分からない。
恭二が何を考えているかなどさっぱり分からない。
それ以上に、自分の頭の中すら焦燥と混乱で分かっていない。
ただ、ひとつだけ分かること。

「恭二、死んじゃ駄目だよッ!」

恭二はこのままでは恐らく死ぬ。仄香にもそれだけは分かった。
今はまだ微かに息をしているが、それが長くないことは直感で理解した。
だが、それ以外は何も分からない、考えられない。
祖父母ともに健在の仄香にとって、初めての”ごく親しいものとの死別”であった。

いや、そんな次元ではない。
その上そいつは、そのままならば死ぬはずだった彼女のために死のうとしている。
そいつのために、どうしたらよいかなど彼女には分からない。
ただ、その名を呼び続けている。それしかなかった。

「恭二、返事してよ、恭二ッ!」

どうしようもなく眼から涙が溢れて止まらない。
それにはドラマにあるようなロマンティックさなど欠片もない。
混乱に乗じてただただ流れ出るだけの安っぽい液体に過ぎない。

「恭二!」

その混乱の中で、彼女は気付いた。
彼の顔が、やけに安らかで穏やかなのを。自分のしたことに悔いなど無い、そういう顔だった。
死ぬことなどまるで気にかけていないような――

「なんでなの、どうして…?」

激痛で苦悶の表情を浮かべているのでもない。
死への恐怖に怯えているのでもない。

(どうして? 恭二はどうして……そんなに)

それは安らかで優しげで――

そう、それはまるで――仏様だか観音様だかのような、そんな雰囲気があった。

「じょ、冗談じゃないわよ…」

ひどく儚げで、それでいて確固とした何かがあって…

 

 

 

***

 

 

 

俺には分かっていた。
なぜ俺は、ああも無気力に毎日を生きていたか。

恐らく俺は、無意識下で”見つけて”いたのだ。
自分の生きてきただけの価値を持つものを。
”自分の大切な何かのために死ぬ”というそれを。
そしておそらく俺は、遠くない未来、そのために死ぬということを予感していた。
――いや、そういうふうに望んでいただけかもしれない。

しかし今日、偶然そのチャンスはやってきた。

そのチャンスを逃していたら、俺は一生後悔していただろう。
だから、俺の体はほぼ自動的に動いて、仄香の代わりになっていた。

「恭二ッ!恭二!」

耳元で仄香がわめいている。
とりあえずコイツが無事でよかったと思う。コイツまでいっしょくたに死んでいたら俺はただのマヌケだ。
コイツにはコイツの人生があって、コイツなりの”価値”があるはずだ。
仄香にはこれからどんな出来事が待っているかは知らないが……頑張ってほしいと思う。

俺は意識が薄くなっていくのに気が付いた。
そろそろお時間のようだ。

 

 

 

***

 

 

 

「恭二ーッ!」

担架に乗せられて、恭二の体が救急車に積まれていく。
仄香はそれを追った。
救急車の後部のドアが閉まる。

「誰か、ご一緒に乗られる方は!?」

救急隊員が叫んだ。
慣例でもあるし、今回の患者は絶望的だと一目見て分かったため、少しでも長くというはからいだった。

仄香は立ち上がった。

「私…行きます」

 

 

 

***

 

 

 

俺は救急車に乗せられた。
ぼんやりとした視界に、再び仄香の顔が現れる。
そうか、コイツも救急車に乗れたのか。
仄香はもう叫んだりしていない。神妙な面して口を真一文字に結んでいる。
俺の方は相変わらず(というか当然)まったく動けない。
救急車が動き始めた。サイレンが鳴る。

 

…がたんごとん。

…がたんごとん。

 

俺の身体が物体みたいに揺れる。

 

…がたんごとん。

…がたんごとん。

 

なんだかぼんやりと、世界が消えていく。


…がたんごとん。

 

それはなんだか、1回の振動ごとに消えていく。
仄香を見る。仄香は俺を見ていた。

 

 

 

***

 

 

 

救急病院の手術室。
そのちょうど前、待合室のような場所に仄香はいた。
恭二の両親にはすでに連絡してあり、2人ともこちらへ向かっているはずだ。

恭二がいる手術室を前にして、仄香は立っていた。
彼女にはもう何がなんだかよく分からない。
分からないながらも、考えている。

どうして恭二はあんな顔でいられたのか。最後だというのに――
死ぬのが怖くないのだろうか。
どこか恭二は自分の死を完全に受け入れているようだった。
何の悔いもない、という顔だった。

そこまで考えたとき、仄香にはある感情がふつふつと吹き出してきていた。
それは怒りだった。
考え無しで馬鹿な幼なじみに対する、純然たる怒り――

どうしても、この想いを恭二にぶつけなければ、と思った。
そして、手術室の中にいるはずのそいつに向かって思いっきり叫んだ。

 

 

「恭二の、バカヤローっ!」

 

 

 

***

 

 

 

――はい!?

部屋の外から響いてきた声は、手術前の俺の朦朧とした意識を叩き起こした。
もはや聴覚なんかまともに機能していないだろうに、はっきりと聞こえてきた。
恐るべき大声だった。
俺を囲む医師や看護婦達も騒然としている(ようだ。よく分からないが)。
アイツ、何考えてるんだ!?
そうしていると、またも仄香の大声が飛んできた。

「アンタは何考えてるか知らないけど、私はアンタが死ぬのなんか、絶対認めないわよっ!」

うるせーな。認めよーが認めなかろーが、死ぬもんは死ぬだろ!
第一俺はもうこの世に未練はねぇし。

「そのまんま死んで、アンタはそれでいいかもしれない!
 けど、後悔しないからって生きるのをあきらめるのは私が許さない!」

は、お前何言って…

「アンタに生きていて欲しいって思う人がいる内に、アンタが生きるのを諦めたら、それは恭二の罪なんだよ!
 恭二が生きてきた意味とか価値なんか、吹っ飛んじゃうくらいの重罪で!」

 

突然の仄香の饒舌を、俺は黙って聞いていた。
周りもどうやら静まっているらしい。

「私は・・・私は・・・あた、しは・・・」

仄香の言葉がそこで止まった。
一瞬後、扉の向こうの仄香が口を開いた。

 

 

 

「――わたしは恭二に生きていて欲しいと思う!」

 

 

***

 

 

 

そこまで叫んで、私は口をつぐんだ。
恭二に伝わったかどうかはわからない。
でも、言うべき事はすべて言った。そう思った。

「あれ…?」

首筋にちょっとした違和感。
指でそっと触れてみると、濡れていた。
もう出ないかと思っていたのに、どうやら私はまた泣いていたらしい。

 

 

恭二、死んだらホントに許さないからね――。

 

 

 

***

 

 

 

仄香は黙った。
どうやらアイツの言いたいことはすべて言い切ったらしい。

俺の周りでは、仄香の口上によって中断していた手術の準備を再開している。
麻酔もかけられるだろう。そうしたら本当に俺の意識は途切れる。
そうなったら、再び目を覚ますことがあるだろうか。

どうなるかは分からない。
しかし、俺は今この場で誓おう。
俺は、あきらめない。
何があろうと、これだけは最後まで言い切ってみせる。
誰のためかなんてどうでもいい。

生き抜くことが出来たなら、また退屈な高校生活に戻るだろう。
意味なんかなにもない、どーでもいい日常。
無駄と無意味だけで塗り固めた世界。

戻ったらまた、仄香と掛け合い漫才でもやるか。
今度は”お前わんわん泣いてたろー。俺に気があんじゃないのか?”とかからかってやろう。

そう思うと、急に仄香の顔が見たくなった。

 

とにかく。

俺はあきらめない。
これからも、ずっと。

 

 

 

 

 

"Authentic People" closed.


 

エンターティナー・クローズアップ atogaki

プログラム28

 

もはや恒例となった、エンターティナー・クローズアップ。
今回は、"Authentic People"でSSSに初投稿を果たしたプログラム28先生の登場だ。
"タイクーンの騎士"でネット物書きとしてデビューし、いまだ連載を続けるさなかの投稿。
その素顔に本誌編集者が迫る!(文中敬称略)

 

 

特に理由はないんですよ。
ただ、京都にいったことだけは少々あるかな、と。

 

 

――今日は、お忙しいところをありがとうございます。

プログラム28(以下28):いや、いいんですけど。

――早速ですが、今回の作品"Authentic People"について聞いてみたいですが、よろしいですか?

28:その前に、アイスコーヒーお代わり頼んでもいいですかね?

――勝手にして下さい。

28:すいませ〜ん、アイスもうひとつ追加お願いします!

――そもそも、この作品はいつ頃書き始められたんですか?

28:さあ、いつだったか忘れましたが。去年の年末くらいだったかと。

――はあ。何時頃でしたか?

28:えーっと、年末恒例の懐メロ特集やってましたからねぇ。たしか夜だったですよ。

――つまり、懐メロ特集を見つつ思いついたと?

28:まあ、そういうことになりますかね。

――懐メロはお好きですか?

28:いえ、嫌いですが。

――ああ、私とは趣味が合わないですね。

28:さいですか。

――ええ、まったく。それはそうとして、今回は何故現代日本モノをお書きになったんですか?是非お聞きしたい。

28:ホントに聞きたいんですか?

――本当はあまり聞きたくないです。

28:そうでしょうねえ。

――それで、どうして今回は現代日本モノをお書きになったんですか?

28:特に理由はないですよ。

――ないんですか。

28:強いて言うならその年の夏、京都へいったことだと自分では思いますね。

――私にはそうとは思えないんですが。

28:さいですか。

 

 

妙に横道にずれたくなる、人のしないことをしたがる。
それもこれも、俺が変人だからなんでしょうね。

 

 

――次は、作品の内容についてなんですが。

28:なんなりとどうぞ。

――作中に登場する街、あれはどこをモデルにして書いてらっしゃるんですか。

28:岐阜です。駄目ですか。

――駄目です。

28:どうしてですか?

――岐阜に大型のショッピングセンターやら高層ビルやらが建っているわけがないでしょう。そもそも岐阜には駅前という言葉すらない。

28:失敬な。ビルぐらいありますよ。駅前だってある。新幹線もちゃんと停まりますし。

――そうですか。てっきり過疎地かと思っていましたが。

28:過疎地ですよ。

――ああ、やっぱり。

28:実はね、まあ、架空の地方都市をイメージして書いてるんだけども、やっぱりつまるところ岐阜なんです。それ以外街をあまり知らないから(笑)

――正気の沙汰じゃないな。

28:そこまで言うことないでしょう。それは酷すぎだ。いくら何でも怒りますよ。

――それはそうと、作品の雰囲気が前作とはずいぶんと変わりましたね。

28:ちょっとすいません。俺昼飯まだなんで、この辺で注文していいですかね。

――勝手にして下さい。

28:あ、じゃあ、スペシャルランチセットAとドリンクバーお願いします。

――それで、作品の雰囲気が前作とはずいぶんと変わりましたね。

28:そりゃまあ、一人称と三人称使い分けるの初めてだし。現代日本モノってこともあるんじゃないですか。

――まあ、そこまで変わりゃ作風変わるのも当然ですね。じゃあ別に意識してたわけではないと。

28:どうなんでしょうね。

――さあ。あと時間がないんで回して行ってもいいですか。

28:どうぞ。

――今回の小説は主人公以外のキャラクター… 犯人の作家のことですが、彼に結構スポットが当たってますが、これは何故でしょう。

28:あえて言うなら、ただの悪役、かませ犬にはしたくなかったってことかな。
   人間何するにも理由がある。その人なりのどうしてもそうしなきゃならない理由ってのが。そいつを無視して話を進めるの、俺は嫌いなんですよ。

――なるほど、犯罪者にも人権はあるってことですね。

28:そういう捉え方しかできなんですか。まあいいですけど。

――つまり、ゴロツキにはゴロツキ、チンピラにはチンピラなりのまっとうな理論があると。

28:違います。

――でも、そういう視点というのは、他の作家さんには少ないですね。

28:まあこれも、俺が変人だからなんでしょうね。

――ああ、確かに変人ですね。

28:あなたに言われると癪だな。でも、人がしないことをしたがってる、って点では、確かに変人ですよ。

 

 

現代日本モノって、どうしてか、惹かれるんです。

 

 

――次回作の抗争はおありですか。

28:今のところ表だった抗争はないですね。構想はありますけど。

――まったく知りたくもないですが。一応仕事なので聞きましょう。どんな作品になりそうですか。

28:あなたもずけずけと物を言う人だな。

――どんな作品になりそうですか。

28:そうですね。今回と同じく現代日本モノだと思います。

――短編ですか?

28:短編もないことはないですけど、今書いてるのは連載物ですよ。

――ああ、時間がないので。一言で表すとどうなります?

28:"王道からずれてそうな娯楽小説"かな。

――大変よくわかる一言ですね。

28:さいですか。

――読者のみなさんに対しては?

28:ま、お目汚しでなければ、読んで下さい、程度ですか。
   あと、プログラム28に個人的私怨を持つのは勘弁して下さいとか。

――保身的ですね。

28:そうですよ。

――それでは、お忙しい中今日は本当にありがとうございました。

 


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使い魔の勝手な悪ノリへ(ああッ、すいませんすいませんッ)