少年はただ走り続ける。町と町を繋ぐ街道を何かから逃げる様に走り続ける。

まだ12、3歳の少年だ。彼は孤児院から抜け出して来たのだ。彼にとって孤児院はすごく良い所だった。義母はやさしく友達は良い奴だ。
彼が逃げてきたわけ・・・・それは彼を引き取りたいという家族が出てきたから。いままでの生活はなくなり、家族ができる。
しかし、少年にはわかっていた。養子などとは名ばかり、結局は一生使える召使いを手に入れようとしているだけだと。

少年を引き取りたいという家庭は、母親一人に娘一人という家族。男の子がいなく、跡継ぎがいないとは言ってはいるが子供がいないわけではない。

「なんで・・・俺だけこんな目にあわなきゃいけないんだよう・・・」
数年前、両親は多額の借金を作り、何処かへ失踪した。一人息子である少年を残して。
まだそのころ、幼かった少年は心に深い傷を負う事になる。

そして、その傷は少年の中で再び開こうとしていた。

走り続けていた彼は道から外れた原っぱでばったりと倒れる。
もう町からはかなり離れたはずだ・・・・・
みんな心配してるだろうか?
いろんな事を考えていたが次第に瞼が重くなってくる。
彼はそのまま眠りに就いた。

「父さん・・・、母さん・・・?」
気がついた時、自分は一人。
いつも隣にいる両親の姿は存在しない。
いつも見慣れた荷物、家具もなかった。
あるのは自分が寝ていた布団と・・・・自分だけ。
「なんで・・・どうして・・・僕だけ・・・」
次第に辺りが真っ暗になる。
その中でただ泣く事しかできなかった。


(大丈夫・・・・心配しないで・・・・今はあなたは一人じゃないから)
「だれ?」
辺りを見回す、暗闇の中に一粒の光・・・・
(さあ、勇気を出して。新しい道へ進んで)


 少年はゆっくりと目を開ける。
(夢・・・・・?)

夢の中で自分に話しかけてきたのは誰だろう・・・・
疑問に思いながらもぼやける目をこすって起き上がる。・・・・ふと、気がつくと、少年には、シーツが掛けられていた。
そして横を向くと、16、7歳くらいの少女が横になってスヤスヤと眠っていた。

(この人がシーツを掛けてくれたのかな?夢の中の声もこの人?)
少年は少女に不思議な感覚を覚える。
そうしているうちに少女は目を覚まし、起き上がる。
じっと、二人は見つめ合う。少女が先に少年に話しかけた。
「大丈夫だよ。君を連れ戻しにきたわけじゃないから」
「な・・・・なんで、・・・」
少年は声が荒くなる。
「う〜ん、なんていうか・・・心の声が聞こえたと言うか・・・」

少年は不思議と少女に恐れはなかった。
心の奥から何か温かいものが伝わる。
「でも・・・・逃げてばかりじゃだめだよ。確かに君が心に受けた傷は深くて治らないのかもしれないけど、それをいつまでも引きずってたら新しい一歩が踏み出せないよ?」
「お、お前なんかに何がわかる!!!第一なんでお前が俺のことを知って・・・・」
言葉が途切れる。また心のなかに温かいものが伝わってくる。
少年は内心わかった。この少女は自分の心のなかに入り込んでいる・・・と

その考えを読んだかのように少女は話始める。
「私のこの力、人の心に入り込む力・・・・いろんな人に嫌がられてきた。だから・・私はこの力を使わないことにしてた・・・けど、もっとこの力を使いたいって思ったの。心の中で苦しい思いをしてる人を助けるのに使いたいと思ったの。自分自身が心の中でつらい想いをして来たから・・・今、私はあなたの力になってあげたいと思ってる」
「・・・・・・・」
「これからどうするの?」
どうするか・・・・考えてない・・・・・・
「町に戻るのもよし、どこか他の町に行くのもよし、どちらにしても私がついてるから」
少女は少年ににっこりと微笑む。
(私がいるから・・・・・・)

二人はただ道を進む。少年の選択肢は始めから一つしかなかった。
『町に戻る』
このまま、他の町に行っても子供二人でどうこうなるものではない。結局、少年には町に戻るしかないのである。
けど・・・その一歩が踏み出せない。

心の中に暗い・・・過去の出来事が浮き上がってくる。
しかし、すぐに温かいものがそれをかき消してくれる。
隣を見れば少女は微笑んでいた。



夕方になってくる。一休みのために木の影で休んでいた。もう次の町まですぐ。
出発しようとした時・・・・・少女は胸を抑えて苦しそうに倒れる。
「!!ど、どうしたの?だ、大丈夫?」
少年はすぐに少女をおぶりすぐ近くの町の病院へと急いだ。




「君たち一体何処から来たんだい?」
病院の先生はやさしそうな人だった。
だが少年はその質問に答えられない。何処から来たかを言えば孤児院に連絡がついてしまう。
少年はただ首を横にふるだけだった。
「その子はもともと体が弱い子みたいなんだよ。すぐにでも家に返してあげないと・・・・」


少年は一晩少女のそばに付き添う。時折、苦しそうな顔を見せる。
少年の気持ちは一つ・・・『少女を助けたい』・・・けど・・・・・・・・
頭の中でいろんな考えがグルグルと回る。
いつの間にか涙がこぼれた・・・・

(大丈夫、私がいるから・・・・・・・・・一人じゃないから・・・・)

「先生、この町の隣町の孤児院に連絡して下さい・・・・・僕達はそこから来ました・・・・」

馬車で迎えが来る。少年と少女はもとの町に戻る。
少女は町についてから、家族が引き取って行った。
少年は引き取られるまで一週間孤児院で最後の時を過ごす。

あの少女は何処から来たのか・・・
なぜ自分を助けようとしたのか・・・・
いったい何処の誰だったのか・・・・

もう知る術はないと思っていた。

一週間後、彼の母になる人がむかえに来てくれた。
緊張しながら家へと向かう。
「ここが今日からあなたの家よ」

家のリビングで義母はもう一人の家族を紹介してくれた。
「あなたのお姉さんよ」

リビングのドアから白い服にロングスカート着た少女が現れる。




(これからもずっと一人じゃないから・・・・)




ろう・ふぁみりあの勝手な感想〜


うわあ。
ちょっと、ドキドキ〜♪
なんだろ、なんか知らないけどドキドキしました、この小説読んで。

うーん、なんだろ。よくわかんないけどドキドキ。
面白かったっていうか、それよりも胸がどきどきするっていうか〜。なんだろ?

これから「始まる」ってイメージがあるからかなぁ?
う〜〜〜! よくわからないですけど、なんか好きです。この物語っ!

これから少年と少女はどうなるんでしょう?
・・・とはいえ、続きものじゃないので、残念ですが。でもその分色々な想像が頭に浮かんで・・・ああっ!

ううっ、fateさん、ステキな30000HIT記念ありがとうゴザイマスー!