何もない旅


 「やっべ〜、受験する学校の下調べぐらいしとけば良かった」

 朝、人通りの多い町を走っている中学生が一人。

 「あの〜、すいません」

 少年はのんびり歩いている青年を一人呼びとめた。

 「…はい?」

 「県立国見高校ってどう行けばいいかわかりますか?」

 青年は暗い顔になった。

 「…ここに来るの初めてなもので」

 少年は落胆した。

 「ああ〜、どうしよう。遅刻確定じゃん」

 「…でも」

 「へっ?」

 青年は微笑んだ。

 「…その高校なら知ってます」

 「なんだ、知ってるなら言ってよ〜」

 「…それじゃあ行きますか」

 「へっ、何で? 場所言ってくれるだけでいいんだけど」

 「…言葉で説明するとめんどくさいんですよ」

 そう言って青年はまた微笑んだ。

 

 

 商店街を並んで歩く。

 「…しかし、その格好は学生さんみたいですけど。今日は学校見学かなんかですか?」

 「こんな時期に見学なわけないだろ。受験、高校の推薦受験だよ」

 「…学校の場所も知らないのに推薦貰ってるんですか?」

 多少呆れ顔になる青年。

 「ああ、学校じゃあ基本的に良い子チャンやってるし」

 「…よく場所も知らない高校の推薦貰う気になりますね」

 「まあ、早めに勉強から離れられるし」

 「…呆れた」

 本気で呆れた顔になる青年。

 「うるせぇな。じゃあ、てめーは何やってんだよ。こんな所でスーツも着ないで」

 ちょっと怒る少年。

 「…旅してます」

 「旅〜?」

 予想してない答えが返ってきたような声を出す少年。

 「…ええ、行くあても無くぼんやり」

 「それじゃあ、仕事なんかついてねぇってわけか。こっちが呆れるぜ」

 してやったりという顔になる少年。

 「…そうかもしれませんね」

 「でも、働いてないなら金とかどうしてるんだよ?」

 「…最低限の食料があればなんとかなりますし、無くなったらバイトします」

 「そんなもんで大丈夫なのかね〜」

 信じていない少年。

 「…まあ、現実としてこう元気に生きてますし」

 「だけどやってみて〜な〜、アンタのような生き方」

 うらやましそうに言う少年。

 「…そうですか?」

 「だって、自由気ままの放浪の旅だろ。何にも気にしないでいいしさ」

 「…そんなに楽なものではないですよ」

 「そっか〜、楽そうに見えるけどな〜」

 「…良いもんじゃないですよ。贅沢は出来ませんし、ずっと一人ですし」

 寂しそうに呟く青年。

 「それじゃあ、何で旅してるんだ?」

 「…夢だったからですかね」

 「夢?」

 「…ええ、子供のころからの夢だったんですよ。こうやって旅するのが」

 「へ〜」

 関心する少年。

 「…あなたも若いからあるでしょ、夢の一つぐらいは」

 「ねえな」

 「…ないんですか」

 残念そうに呟く青年。

 「幼稚園からずっと勉強だったから、そんなもの考えもしなかった」

 「…まっ、人生まだ長いですし」

 青年は微笑んだ。

 

 

 二人の前に校門が見える。

 「…着きましたよ」

 「なあ、あんた」

 真剣な顔になる少年。

 「…何です?」

 「俺に夢見つかるかな?」

 「…ええ」

 「俺に夢叶えられるかな?」

 「…さあ?」

 「なんだよ、そのやる気の無い答え」

 「…叶えられるかは、貴方次第ですから」

 「まあ、確かにその通りだ」

 「…名前聞かせてください」

 「……だ」

 「…良い名前ですね。試験頑張ってください」

 元気つけるように微笑む青年。

 「俺の名前聞いてどうするんだよ」

 「…夢が叶ったときに、どこかで祝福してあげます」

 「先はなげ〜な。それじゃあありがとな」

 「…ええ、さようなら。頑張って」

 そして、青年は歩いていく。

 

 

 月日は経つ。

 電気屋の前に青年が一人。

 『日本シリーズ第6戦。九回裏ツーアウト一、三塁、監督ここでリリーフに……を』

 軽く拍手をし、立ち去る青年。

 「…見つけたようですね」

 そのままのんびり歩く。

 「あの〜、すいません」

 少年が青年を呼びとめた。

 「…はい?」


 後書きという名の反省会

 個人的には、約半年振りとなっているオリジナルです。

 キャラ作りが得意な方じゃあないのでもっぱら短編中心になりますが。

 久しぶりに書いてオリジナルの良さを痛感しましたね。

 野球が夢になっていたのは完璧僕の趣味です。

 というわけでKZDです。

 20000ヒットおめでとうございます。

 まあ、こんな代物ですが貰ってくだされば幸いです。

 では、KZDでした。


ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜

 

夢か―
オイラの夢といえば、天才科学者になることだったかな。マジンガーZとか作るような。
”天才”ってなろうと思ってなれるもんじゃ無いけど(苦笑)
ちなみにそれは中学生までの夢で、中学生になってからは子供っぽい夢じゃなくて、大人っぽい夢。

・・・世界征服企むようなマッドサイエンティストになることでした(爆)。

しかし、流石に世界征服は大望過ぎるので、まずは市街征服が基本だと某漫画を知った今日この頃。

 

20000HIT達成―――夢を、ありがとう・・・(笑)


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