・・・この話はフィクションです。

実際の夫婦仲、世界情勢、アンドロメダ星人とは関係ありませんので、ご注意ください。

 

 

一組の仲の良い夫婦がいた。

同じ日に生まれた完璧な幼馴染というヤツで、保育園も一緒、小・中・高と学校も一緒。もちろん大学も。

運命の神様の気まぐれなのか、席替えしても二度に一度は隣同士になったり。

学校の成績も似たようなモンで、奇跡的にも近親憎悪とは縁遠く、当然のコトのように二人はいつも一緒だった。

 

そして当然の如く二人は結婚した。

 

結婚してから半年。

二人は仲睦まじく暮らしていた。―――或る日の朝食まで。

或る日の事。

妻が作った愛の溢れ返るすぎなほどに溢れかえった朝食。

膳に並べられた上手そうなメニューを見て、お世辞のような本音を並べ立て、夫は味噌汁をひとすすり。

 

いつもより、少ししょっぱかった。

 

そのコトを妻に告げると、妻はごめんなさい・・・・と自分も味噌汁をひとすすり。

 

いつもと、たいして変りはなかった。

 

妻がそのコトを夫に告げると、しかし夫は頑固に首を横に振る。

たしかにこれはしょっぱい。

だが妻も頑として頷かない。

いいえいつもとおなじよ。

互いに、しょっぱい、しょっぱくないと言い合っていたが、やがて口論は傾いた方向へと走っていく。

 

―――そういえば、小学生の時あなた○子ちゃんとばかり遊んでいたわね。

―――そういうお前だって、中学のとき×夫からラブレター貰って喜んでいたじゃないか。

―――そういう貴方は高校生のとき―――

 

保育園の頃からはじまって、つい最近までの互いの粗捜し。

なにせ、生まれた時からずっと一緒の二人だ。探せばほこりを叩くよりもぽろぽろと出てくる出てくる。

 

やがて、激情にかられて夫は妻の顔を殴った。

あ。と思ったときにはすでに遅く、妻は赤くなった頬を抑えて、うるうると瞳に涙をためて―――

 

―――フライパンで反撃してきた。

 

 

 

 

病院のベッドで、包帯ぐるぐる巻きのまま、夫はぼんやりと思った。

家庭には主婦の武器が多すぎる。物理的にも精神的にも。

 

夫は、退院すると堺の裏マーケットに脚を運んだ。

もと中学の同級生でヤクザをやってる悪友から聞いた店だ。

そこで、輸入品のトカレフを一丁購入する。

 

夫は黒光りする凶器を懐に忍ばせて、久方ぶりの家に帰った。

ちなみに妻は一度も病院に見舞いに来なかった。

 

ぴんぽーん。

チャイムを押すと、しばらくして騒がしい足音が響き妻が走ってくる。

 

―――ふふ、これさえあればいくら家の中だって。

 

と、夫は懐からトカレフを引き抜く。

妻を撃ち殺す? そんな物騒なことは出来ない。ただ脅すだけだ。うふふふ。

やがて、妻が玄関に姿を現した。

信じられないことだが。

肩にはロケットランチャーを担いで。

 

―――あら、あなたお帰りなさい。

―――・・・あの、それはなんです?

―――あらやだ、あなたが銃を買ったって情報はすでにリークしているのよ。

 

恐るべきは井戸端会議ネットワーク!

恐るべきはオバタリアンの横の連帯!

夫は負けを認めた。トカレフを地面に落とす。

妻は夫を許さなかった。問答無用でミサイル発射!

 

―――その日、或る家庭の玄関と共に一人の男が爆発した。

 

 

 

・・・そのニュースは日本中を駆け巡った。

全国の夫は立った。非道なる妻に対し。

全国の妻は立った。愚かなる夫に対し。

 

日本は二つに割れた。

夫と妻に。

夫が飲んだくれて夜遅くに帰れば、妻は容赦なく玄関の鍵を閉めた。

妻がへそくりを隠せば、夫は愛犬の鼻を使って直ちにそれを発見した。

夫が不倫をすれば、妻は決定的証拠を掴んだ挙句に高額の慰謝料をふっかけた。

妻が内緒でシャネルのバッグを買えば、夫はそれを盾に高級ゴルフバッグを買ったりした。

 

夫と妻の戦争は激化する一方だった。

実は平和そうに見えても、けっこう激化だった。

 

その中に。

日本の内閣総理大臣が、ついに己の妻の横暴にキレた。

怒りに任せ、自衛隊を発動させる。悪魔のような妻達を粛清するために。

対して。

日本人に嫁いだ某国軍総司令官の娘が、ついに己の夫の愚考にキレた。

それを聞いた父馬鹿で有名な某国軍総司令は、怒りくるって日本に対して戦争を仕掛けた。

 

日某戦争。

そして、それは周辺の国々を巻き込んで、第三次世界大戦へと!

 

・・・そんな折。

地球から遥か彼方のアンドロメダ星雲から。

アンドロメダ星人の王子が地球と友好関係を結ぶためにやってきていた。

 

注:ちなみにこの話はフィクションです。

 

世界大戦が一番激しかった時期。

突如、空から降って沸いたUFO(未確認飛行物体)を、某国の戦闘機が容赦なく撃墜した。

 

怒り狂ったのはアンドロメダ星人たち。

自分たちの王子を殺されて、遥か彼方の銀河系。その蒼き星地球に対して戦争を仕掛けた!

それを迎え撃ったのは、地球人ではなく火星人。

てっきり自分らのトコに攻め込んできたと思った火星人は、アンドロメダ星人の宇宙艦隊を迎撃した!

 

注:繰り返しますが、この話はフィクションです。

 

そして・・・銀河大戦勃発!

 

 

 

一組の仲の良い夫婦がいた。

涼しげな白い病室。つい先日までは、ちょっと耳を澄ませば戦闘機の音やら銃撃やらが聞こえて来たものだが。

第三次世界大戦は、一週間ほど前に終結した。理由は『馬鹿らしいから』。

―――そういえば、なぜ世界大戦など起こったのだろうか?

世界情勢にあまり詳しくない妻は、首を傾げながらリンゴの皮をむく。

ベッドの上で、何故か全身を包帯で覆われた夫に対して切り分けたリンゴを差し出した。

嬉しそうにそれを頬張る夫。

その一組の夫婦はとても仲睦まじげに、幸せそうであった。

多少、夫の全身に巻かれた包帯が痛々しいが。

 

一組の、生まれた時から一緒で仲の良い夫婦がいた。

二人は当然のことのように幸せだったとさ。

 


「スケールのデカイ話」

とか言われて思いついたのがコレ。・・・ちょぉマズイかも(苦笑)。

本当は、「スーパークラウド人」とか見たいなFF7のSS書こうかと思っていたんですが・・・あれ?


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