フレッシュマンセミナーとは
大学初学年の学生にたいし、現代数学の大きな流れを垣間見る機会を与えるセミナーである。
いろいろな研究分野で活躍する先生(講師)・数学の最先端で研究している 大学院生(チューター)・そして大学学部生たちが、大学の枠組みを超えて集まり、 4日間にわたり寝食を共にしながら 数学の楽しさや素晴らしさを語り合うセミナーである。 セミナーは1999年から2008年(現在)まで毎年一回、これまで 計10回行うことができた。 2002年以降は日本数学会教育委員会の公的行事となり数学会から学生の宿泊費の援助を受けいる。
セミナーの進め方は、初日夕刻集合。 各講師のセミナーによる題材についての簡単な説明のあと、 夜からセミナー開始。
2日目終日と3日目の午前まではセミナー。 3日目の午後から4日の午前まではセミナーで学んだ内容について学生が各自発表を行なう。 セミナーの題材は大学初学年の学生にとってはかなりレベルの高いものである。
(http://www.math.kyoto-u.ac.jp/~mugen/yatsu.html にこれまでのセミナーの内容がある)
しかし、セミナーの最後になると大概まとまった発表ができる。 時間の制約により自然にセミナーは毎日夜遅くまで続けられるが、 学生たちはこれを負担に感じるどころか、 楽しんでいるようである。
参加者は皆数学好きではあるが、いわゆる優秀な学生とは限らない。 なかには大学の講義に落ちこぼれ気味の学生もいる。
いろいろなレベルの学生、あるいはいろいろなバックグランドをもつ学生が、”数学好き”という共通意識で結束して議論を重ね数学理論を習得していくことに 大きな充実感をもつようである。大学初学年における数学教育は講義を通じてのものだけで あるから、このような他者(先生、先輩、同輩)とのコミュニケーションを通じて数学を学ぶことの 楽しさを早い時期に感じるとることは有意義なことではないだろうか?
さらに他大学の学生や大学院生との交流を通して自分の数学的力量をより広い 枠組みの なかで客観的に判断する機会をもつことも大切である。 ある大学の数学科という、狭い社会の中では井の中の蛙になりがちである。
チューターとして参加する大学院生にとっては、後輩の学生ととことん付き合って 数学を考えることが、これまでの学びの理解を深めるようである。
通常自分の研究のみに従事している大学院生にもこのような教育の機会を与えることは、 将来の大学教育の質を向上させることになるとも考える。
講師にとっては他大学にどのような大学院生や数学好きな学生がいるかをみることが 有意義であろう。数学好きな若者たちのセミナーに注ぎ込む情熱を見ると日本の将来にも 希望が持てるような気がしてくる。
セミナーは八ヶ岳南麓の豊かな自然の中で行われる。 毎朝の目覚めを迎えてくれる 小鳥たちのさえずりやセミナー室の窓に流れ入る 森の木漏れ日が 知らず知らずのうちに数学で疲れた脳を癒してくれるようだ。 論理的思考の究極ともいえる数学といえども人のすることであり、 恵まれた自然環境のもたらす心の調和がこのセミナーのもう一つの大きな支えであるといえる。
国立大学法人化あるいは少子化など数学研究教育の環境が厳しくなりつつある現状において、 大学の枠組みを超えた研究教育環境を構築する試みのひとつとしても考えている。 より多くの方々のご理解とご協力をお願いしたい。