医薬分業について

欧米では当たり前のように行われている医薬分業ですが、なぜか日本では普及し始めたばかりです。当院では全面的に院外処方せんを発行し、医薬分業を行っています。皆様の御理解をいただくために、医薬分業の必要性をお話しします。

医薬分業って何でしょう?

医薬分業1医者は患者さんを診察して治療に使う薬を処方せんに記載します。薬剤師は処方せんに従って調剤をするのですが、医者の勤務する病院あるいは診療所内で調剤されるものを院内調剤、経営的に独立した薬局で調剤されるものを院外調剤と呼びます。一般的には、この院外調剤が行われている医療体制のことを医薬分業と考えて下さい。

医薬分業で「薬害」をなくす

薬は古代エジプトや中国の漢の時代から命と健康を守る大切な存在でした。しかし、時には命を脅かす毒薬としての危険な一面も持ち合わせています。古来より、診療と薬の両方を扱えるのは医者の特権でしたが、それにより「薬害」や「にせ薬」などの問題がなくなることはありませんでした。
しかし、13世紀になってヨーロッパでは薬を取り扱うことを医者とは独立した人間である薬剤師に任せる法律ができ、これらの問題は一挙に解決することになったのです。現在のヨーロッパでは医薬分業は定着した医療方式であり、アメリカでも原則として医薬分業が行われています。 
薬の開発が進むとともに、反面では薬の相互作用や新薬ゆえの予期せぬ副作用による薬害がますます増えています。近年のソリブジン事件やHIV事件などがその代表でしょう。これらの薬害は医薬分業が正しい形で行われていたならば、最小限に防止できただろうと言う人もいます。

目的は患者さんの健康を守ること

人は誰でも間違いや見落としがあります。もちろん医者も同じです。あってはならないことですが、人命に関わるようなミスがないとは断言できません。服薬の安全性を高めるためには、医師とは別の専門知識を持った薬剤師が処方をチェック(薬の分量、効能、飲みあわせなど)する体制が必要です。
命と健康を守る薬を管理する薬剤師、それは医者と利益関係のない存在であってこそ、正しいチェックが行われるはずです。薬害を防ぎ、より確実に患者さんの健康を守ることが医薬分業を行う最大の目的なのです。

患者さんのメリットとデメリット

まずメリットは
① 医師と薬剤師の2人の専門家が薬剤の使用を二重にチェックすることにより、薬の効果や安全性が高まる。
② 「かかりつけ薬局」を決めることで、複数の医療機関から投薬を受けた場合でも、薬の飲みあわせなどの点検が可能となり、それによる副作用が防止できる。
③ 薬の効き目や使用上の注意、副作用などを詳しく説明してくれる。
次にデメリットは
① 医療機関で処方せんを受け取った後に調剤薬局に行かなければならないため、二度手間になる。
② 院外処方では、医療費が多少割高になる。

医療機関は薬を出すと赤字になる!?

医薬分業2医療機関側の最大のメリットは経営的な問題です。念のため申し上げますが、院外処方にすると医療機関が儲かるわけではありません。厚生省は膨れ上がった医療費を抑制するために「薬価差益」をなくすべく政策を進めています。
一昔前ならともかく、今も医者が「薬価差益」で儲けているなどと勘違いをしないで下さい。現在の一般診療所での患者さんにお渡しする薬の値段と仕入れ値の差は平均10%、すなわち100円で患者さんにお渡しする薬を問屋から90円で仕入れています。しかし問屋には消費税を支払いますが患者さんからは請求できませんので、消費税も含めると94.5円で仕入れて、100円でお渡しすることになります。さらに粉薬の包装紙、薬を入れる薬袋、薬を保管するビンや冷蔵庫、調剤のための機材、人件費などは別に必要です。これらをあわせると100円を越えてしまい、薬を出すほど損をするというのが現状です。
このような理由から積極的に院外処方を発行する医療機関が増えています。特に処方の多い大病院ほど影響は大きく、早くより医薬分業を実施しています。

医薬分業のQ&A

処方せんはどこの薬屋さんに持っていってもいいの?
薬剤師のいない薬屋さんでは調剤はできません。処方せんを受けつけて調剤を行うことができるのは保険薬局だけです。「処方せん受付」あるいは「保険薬局」の表示がある薬局であれば全国どこでもOKです。患者さんが好きな薬局を選ぶことができます。
寝たきりで在宅療養をしている場合、家族が薬を取りに行けない時はどうしたらよいの?
保険薬局では担当医師の指示があれば、ご家庭まで薬をお届けします。もちろん薬の飲み方などのご説明もいたします。
処方せんはもらったが、仕事で調剤薬局にいけなくなった。処方せんに期限はあるの?
処方せんの有効期限は4日間です。その期間内であれば旅行や仕事先など全国どこの保険薬局でも薬をもらうことができます。

よい調剤薬局を選びましょう

医薬分業3院外処方せんを全面的に発行し始めて、患者さんからいろんな話を耳にします。患者さんにとって医薬分業のメリットが何もない不誠実な調剤薬局もあり、ぜひ調剤薬局も選んでいただきたいと願っています。
あなたの行きつけの調剤薬局を、以下の点でチェックしてみて下さい。YESが多いほど、きちんとした調剤薬局です。3つともNOでしたら、そこはお勧めしません。医者を選ぶのと同じように、ぜひ信頼のおける調剤薬局を選んで下さい。

薬の効能や副作用など、わかりやすく印刷物などをもらって説明を受けましたか?

薬に関する質問をすると、きちんと丁寧に答えてくれましたか?

薬のアレルギー、他で処方されている薬、今までにかかった大きな病気などを質問されましたか?