ノートルダム・ド・パリ
もう三十年も昔のこと、年末年始をパリで過ごすべく当時の玄関口羽田を飛び立った。
三十一日夜、リドのショウとシャンパンに酔いシャンゼリーゼを徘徊、除夜のカウントダウンが終わると街を走る車は一斉にクラクションを鳴らし歩道を賑やかに行く人々の間からボナネ(新年おめでとう)の声が湧き起こった。その中から容姿美しきパリジャンヌが近づいていきなり私を抱きしめてボナネと云ってキスをした。驚いた私はボナネと云ったかメルシイと云ったか記憶がない。美しい人は温もりと微笑みを残し紳士と腕を組みシネマの一齣の様に雑踏の中に消えて行った。夢かと思ったが同行の先生方に羨ましがられて現実と知った。翌朝シテ島のノートルダム寺院を訪ねた。新年のミサ曲の美しいコーラスが聖堂内に満ち溢れ、巨大な円窓のステンドグラスを透して光彩の束が射し込み荘厳な雰囲気の中での敬虔な想いに暫し時を忘れ心を洗われた。




