まゆ蔵の隅で
私が岡谷市の小井川区に住み着いて、はや四十年近くが経ち、その間の岡谷の変わり様には全く驚かされる。
昭和三十年頃は岡谷の製糸業が下火になったとはいえ、まだ川岸、下浜、小井川地区には多くの製糸工場にはつき物の繭蔵が各所に見られたのに次第に姿を消し、今から約十年前にはむしろ珍しい存在となった。
平成七年十月頃、小井川区の山和製糸、次いで同区の吉田館の繭倉が時代の流れには抗し切れず相次いで姿を消すことになった。私もその近所に四十年近くも住めば岡谷生まれの人以上に愛惜の情が湧いて来る。
やがては壊される繭倉のひと隅にかつて時代の脚光を浴び、持て囃された糸取り車と繭篭が白壁をバックに無造作に夕日を浴びて放置されていた。人間の一生にも無情の流れはあると思うが、何事にも栄枯盛衰の無常は付きものなのか?
「廃Ⅲ」と言う題で県展に出した油彩50号の作品です。




