札幌旧道庁々舎
昭和十二年三月、父の勤める鉄道病院転任も為、花の時節の門司から雪の札幌へと移り住んだ。今思えば広く豊かな風光の札幌で六年間に及ぶ少年期を「のんびり」と過ごしてしまい今以てオポチョニステックな気分 が失はれず残ってゐる。困ったものだ。この絵は昭和六十年頃、家族と共に札幌を訪れた時のものと記憶している。この頃の札幌は巨大化し、もう既に懐かしい姿の大半を失ってゐた。
少年の頃の札幌は人口二十万余。広い道路と整理された区画。緑の多い美しく瀟洒なコロニアル風の近代的街並の地方都市であった。この赤い煉瓦造りのスマートな旧道庁の建物はサッポロビール会社の赤煉瓦の建物と共に対象的な、時計台や豊平館のコロニアルな白い建物とを併せて、私にとって少年期の想い出として心に残る古い昔の札幌の象徴的な存在なのである。




