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新譜紹介

2024.04.05.
 バッハ演奏の大家
 "Die Kunst der Fuge" BIS Records BIS-2531
 Masaaki Suzuki (Harpsichord)
 バッハ・コレギウム・ジャパンの音楽監督として名高い鈴木雅明氏、
 などと説明が必要ないくらい有名な鈴木氏がフーガの技法を鍵盤独奏で。
 こんな嬉しいことはありません。
 
 折しも私は昨年バッハのカンタータ全曲を相手にテンポ解釈に取り組み、
 その中でカンタータが演奏に関する情報の宝庫だと知ったところです。
 そのカンタータの全曲録音を成し遂げた鈴木氏の解釈は、
 現在日本で最も信頼できると言っても過言ではないでしょう。
 
 5月に国内版が発売予定となっていますが、
 待ち切れるわけもなく輸入盤で購入させていただきました。
 
 出版譜の全曲−2台の鍵盤編曲を含み10番の初期稿を除く―が演奏され、
 最後のコラールもハープシコードで奏でられます。
 
 一つ一つの音を、旋律を、和声を、じっくり確かめるように
 丁寧に紡ぎあげていく演奏は、聴く者を惹き付けずにはおりません。
 また随所に施された装飾が学術的作品を芸術たらしめています。
 聴くほどに深遠な音楽の世界に引き込まれていく名盤です。
 
 リュッカースの響き
 "Die Kunst der Fuge" ONDINE ODE1437-2
 Aapo Haekkinen (Harpsichord)
 フィンランドの古楽奏者が1614年の年代物で奏してくれました。
 第1曲〜第11曲と4つのカノンを、じっくりとゆっくりのテンポで弾き、
 楽器の音色を存分に味わわせてくれます。
 
 4声の鏡像フーガは Les Voix Humaines による弦楽四重奏、
 3声の鏡像フーガは Anna Gebert と Haekkinen 両氏による
 ヴァイオリン・ソナタ風の演奏となっています。
 研究所でこの2曲の独奏を検討しましたが、弦楽演奏も魅力的です。
 

2023.12.12.
 バロック演奏の大御所
 "Die Kunst der Fuge" Les Talens Lyriques AP313
 Christophe Rousset (Harpsichord)
 クリストフ・ルセ氏のフーガの技法がついに出ました。
 ジャケットには2020年の録音とありますが、
 パンデミックの影響か、3年も焦らされてしまいましたね。
 
 レオンハルト同様、フーガの技法は17曲で完成であるとし、
 かつ3声の鏡像フーガは編曲版を採用しています。
 賛否両論あるかと思いますが、実はそれが素直な解釈なのです。
 
 さすがの大御所、どっしりとゆるぎない演奏は圧巻です。
 押さえ気味のテンポながら躍動感を損なわず、
 最後の拡大カノンまでほど良い緊張感が保たれます。
 むやみに装飾をくわえないのがまた渋くて良い。
 

2023.10.19.
 さまざまな補完のアルバム
 "Bach Fragments" passacaille 1140
 Lorenzo Ghielmi (Organ)
 Ghielmi氏の補完したバッハ作品を中心に集成された一枚。
 氏による未完フーガの補完はWinter&Winter 910 153-2において
 2009年にアンサンブル演奏されていますが、
 今回のアルバムでは氏自身によりオルガン演奏されています。
 
 他の補完としてはBWV573、1001、Anh.200、991、764、753があり、
 氏の意欲的な活動振りが伺われます。
 
 Mr.J.C.より、これらの補完が La Divina Armonia 社から
 出版されている旨を知らせていただきました。
 国内の amazon でも販売されていますので、
 興味のある方は購入をご検討ください。
 

2023.10.02.
 すがすがしい快速
 "Die Kunst der Fuge" Harmonia Mundi
 Cuarteto Casals (Strings)
 2つのヴァイオリンとヴィオラ、チェロの組み合わせは、
 曲の音域を考えれば妥当な選択ですが、
 バスがないためか実にすがすがしい音色。
 
 アップテンポな演奏も、¢(アラブレーヴェタクト)の
 素直な解釈ですが、これがまた心地いい演奏です。
 最後はコラールでしっとり締めくくられます。
 

2023.09.14.
 ここぞとカデンツァ
 "THE ART OF FUGUE" Supertrain Records
 Stefano Greco (Piano)
 イタリアのピアニスト ステファノ・グレコ氏による演奏。
 グレコ氏はゴルトベルク変奏曲のコンサート演奏で知られ、
 東京で耳にされた方もいるのではないでしょうか。
 
 フーガの技法は自筆譜の曲順をベースに全曲演奏。
 学術的な表現を避けて情緒豊かに奏され、
 曲ごとに表情をつけています。
 時に大胆なパッセージやカデンツァも挿入されて花を添えます。
 聞き手の集中力を掻き立てる見事な演奏です。
 心地よい音色とテンポ
 "DIE KUNST DER FUGE" Outhere Music / Ricercar RIC453
  Les Recreations (Strings)
 2010年に結成されたホットなメンバーによる弦楽演奏。
 CDはスカルラッティ一族のソナタに続いてのリリース。
 全体として程よいテンポでメリハリのある演奏を聞かせています。
 10番や11番のキビキビした演奏がまた素晴らしい。
 
 未完フーガが途切れた後には、およそ25小節と短いながらも
 見事に構築された結びが加えられています。
 こういうボーナスは大歓迎です。

2023.05.13.
 新旧の対比
 "Webern Complete Published String Quartets
 / Bach The Art of Fugue" Passacaille 1129
  Richter Ensemble (Strings+Harpsichord)
 タイトルどおり、ヴェーベルンとバッハの作品を収めた一枚です。
 曲が進むにつれて、両者の作品が調和してくるのが心地よい。
 アップテンポでぎっしり詰まって聴き応え十分。
 個性引き立つ
 "Lemniscate / The Art of Fugue" Ramee RAM 2208
  New Collegium / Claudio Ribeiro (Ensemble)
 曲ごとに管弦の組み合わせで奏し、
 ハーブシコードがそれを支えます。
 しっとりと穏やかな演奏。

2022.06.13.
 堅実な組み立て
 "Die Kunst der Fuge / The Art of Fugue" Motette DCD MOT 15075
  Frank Volge (Organ)
 木管系の柔らかな音色を中心に穏やかなテンポで
 きっちり曲を組み立てています。
 奇を衒わず、装飾を控え、忠実かつ堅実に弾き上げます。
 曲の学術的性格を前面に出した演奏。

2022.03.10.
 ステイホームが生んだ演奏
 "The Art of Fugue" Paraty 1221.1115
  Kenneth Weiss (Harpsichord)
 バッハの鍵盤作品をいくつも手がけてきたWeiss氏が、
 コロナ禍でのステイホームにめげず、
 フーガの技法と向き合い、その演奏に挑んでくれました。
 1782年製作のハープシコードの音色も鮮やかに、
 一曲一曲生き生きとした演奏を重ねています。 

2022.01.08.
 日本の大家ついに
 "Die Kunst der Fuge" ALM RECORDS ALCD-1209,1210
  渡邉順生 (Harpsichord)
 国内屈指の鍵盤奏者、渡邉順生氏がついにリリース。
 出版譜全曲に加え、自筆譜から異稿もピックアップし、
 フーガの技法の全体像をCD2枚で知ることができます。
 ブックレットも充実の内容。
 
 難解な曲集を素直に、丁寧に、実に聴きやすく奏し、
 落ちついた音色とあいまって何度でも聴きたくなる演奏です。

2022.01.01.
 フィリップス女史のオルガン全集
 "The Art of Fugue" Regent REGCD558
  Margaret Phillips (Organ)
 英国オルガン学校で講師も勤めるフィリップス氏が、
 バッハオルガン全集の第10弾としてフーガの技法を手がけました。
 
 控えめの音とテンポで曲集を知的に構築していくと思いきや、
 最後の未完フーガで豪快な音を響かせ、
 長い長い溜めからの開放のカタルシスを感じさせます。
 
 CDの最後にはシェパード氏のピアノ演奏にもあった
 ケヴィン・コーシン氏による補完版が奏されています。

2021.11.16.
 ベーメ氏のセルフ補完版
 "Die Kunst der Fuge" Rondeau ROP617475
  Ullrich Boehme (Organ)
 ライプツィヒのトーマス教会オルガニスト、ベーメ氏による新録音。
 2枚組のうち1枚は2000年に録音した自筆譜版。
 2枚目が今回の新録音で、トーマス教会のオルガンを駆使して、
 自筆譜から改作された曲や、新たに加えられた曲を網羅しています。
 
 荘厳かつ骨太な聴き応えのある演奏が、堂内に染み渡ります。
 時に即興的カデンツを加えながら、それでいて奇を衒わない
 堂々たる演奏、さすが現役のトーマス・オルガニストです。
  
 私にとってトーマス教会は20数年前に訪れた思い出の場所。
 その音色で、響きで、フーガの技法を聞けることはこの上ない喜びです。

2021.10.14.
 老ピアニストの熟練
 "The Art of Fugue" Zefir Records ZEF 9683
  Geoffrey Madge (Piano)
 ゴドフスキーの作品集や近代音楽の演奏で知られる
 ジョフリー・マッジ氏による、14曲のフーガの演奏。
 バッハ演奏はゴルトベルク変奏曲に続く2枚目となります。
 さすがの熟練振り、フレーズ一つ一つを丁寧に弾き、
 しっとりと纏め上げています。
 
 バッハに捧ぐ
 "The Art of Fugue" Haenssler HC21049
  Eloise Bella Kohn (piano)
 
 奏者であるコーン女史による企画アルバム。
 作曲家・オルガニストのエスカイヒ氏による
 未完フーガの補完を含みます。
 317小節に及ぶ比較的長大な補完は、
 奇を衒わずバッハらしさを尊重した堂々たるもの。
 随所に装飾を施し、抑揚をある演奏で聞かせます。
 
 音楽人生
 "The Art of Life" Deutsche Grammophon 483 8530
  Daniil Trifonov (piano)
 
 バッハの息子達の作品に始まり、
 アンナ・マグダレーナ・バッハの楽譜帳、
 ブラームス編曲のシャコンヌと続き、
 フーガの技法でクライマックスとなるユニークなアルバム。
 低音部を重音にしたダイナミックな第6曲や、
 ドラマチックに演奏される第8曲・第11曲はブラボー!です。
 未完成のフーガは奏者自身の補完が加えられ、
 瞑想的かつ幻想的なフィナーレを迎えます。
 大トリはヘス編の「主よ、人の望みの喜びよ」。
 


2021.09.04.
 詩的演奏
 "The Art of Fugue" ALPHA 755
  FILIPPO GORINI (Piano)
 若手ピアニスト、ゴリーニ氏による演奏。
 ブックレットには前奏曲と題された各曲への詩が寄せられ、
 演奏も穏やかなテンポで詩的に繰り広げられます。
 秋の夜長にふさわしい演奏。

2021.07.01.
 ヒルデブラント・オルガンの響き
 "The Art of Fugue" AEOLUS AE-11291
  Samuel Kummer (Organ)
 若手オルガニスト、ザムエル・クンマー氏による、
 バッハの鑑定書付オルガンでの演奏。
 オルガン自体の音色が素晴らしいだけでなく、
 教会内の残響が夢見心地にさせてくれます。
 
 2枚組のうち1枚目は第11曲で堂々と締めくくられます。
 また2枚目の最後にはクンマー氏による
 未完フーガの補完があり、これまた荘厳で素晴らしい。

2021.05.07.
 ライブとレコーディング

 "Mitteilungen vom unteilbaren Werk" telos music TLS240

 "French Overture / Italian Concerto / Four Duets /
  The Art of Fugue / Four Canons" Sunrise 8598

  Pi-hsien Chen (Piano)
 2003年にフーガの技法を全曲録音しているチェン女史が、
 ライブ録音と新録音をリリースされました。
 
 音を一つ一つ置くような独特の奏法は健在、
 さらに個々の曲の解釈に深みが増し、
 時に快活、時に静寂、深い瞑想すら感じさせる演奏です。
 
 2つの、あるいは過去のものも合わせて3つの演奏を
 聴き比べできるのがまた嬉しい。
 
 スカルピーニの名演再び

 "discovered tapes | Bach" Rhine classics RH-017
 
 以前Polistampaから解説本つきで発売されていた録音が、
 平均律1・2巻と抱き合わせでリマスターされました。
 
 1976年にして第6曲の主題を複譜点で弾いているのは、
 ピアノ奏者ながら古楽に精通していることの現われです。
 
 素朴なピアノの響きと、曲に素直な解釈が、
 なんとも良い聴き心地を与えてくれます。
  

2021.04.20.
 鮮烈なるライブ演奏
 "Art of the Fugue" Centaur CRC3851
  Musicians of Aston Magna(Ensemble)
 モンテベルディからシューベルトまで、
 古楽を中心に演奏に取り組む合奏団が、
 音楽の捧げものに続いてフーガの技法もリリース。
 
 管弦、弦楽のみ、時に鍵盤独奏もはさみながら、
 さまざまな楽器の組み合わせで楽しませてくれます。
 中でもバスを通奏低音としたアンサンブルの第6曲や、
 弦楽三重奏で颯爽と駆け抜ける第8曲は見事です。
 後者は時ならぬ拍手が起こったほど。

2021.04.10.
 現代日本のバッハの大家、待望の演奏
 "Die Kunst der Fuga" ALM RECORDS ALCD-9214, 9215
  近藤伸子(ピアノ)
 バッハの鍵盤作品の多くをリサイタルで取り上げ、
 近年はバッハの初期から後期までの作品を集めたアルバム
 「音楽の捧げもの」(ALCD-9153)も出された近藤伸子先生が、
 ついにフーガの技法をリリース。
 
 声部が絡み合う曲の構造を浮き彫りにしながら、
 音楽として全体を纏め上げ、快く聞かせる素晴らしい演奏。
 さまざまなストレットが繰り広げられる反行フーガ群を、
 主題を明瞭に響かせながら軽快なテンポで弾く様は圧巻です。
 
 学術と音楽の統合を成したバッハ作品の理想的な演奏。

2020.08.29.
 自筆譜を弦楽で
 "Die Kunst der Fuga" Challenge Classics CC72842
  Accademia Strumentale Italiana (Strings)
 / Luca Guglielmi (Organ)
 Alberto Rasi 率いるイタリア器楽アカデミアの演奏。
 鏡像フーガまでの14曲に未完フーガを加え、
 時にオルガン独奏を交えて演奏しています。
 軽快なテンポが心地よい好演。
 Study を何と訳すか
 "18 Studies for Two Pianos
  based on J.S.Bach's "The Art of Fugue" "
 SONY 19439784132
 Yaara Tal & Andreas Groethuysen (2 pianos)
 Reinhard Febel 編曲で、フーガの技法のピアノ演奏に
 もう一台のピアノが一見気ままな音を重ね合わせる怪演。
 時に幻想的、時に前衛的、時に混沌とした音世界です。
 この場合 Study はもちろん勉強ではなく、
 探求とでも言えば良いでしょうか・・・

2020.04.06.
 3つの補完版揃い踏み
 "Die Kunst der Fuge" Aldila Records ARCD009
 Christoph Schlueren / Salzburg Chamber Soloists (Strings)
 民俗音楽からポップス、フュージョンまで幅広く作曲・演奏を手がける
 シュリューレン氏の指揮で、弦楽版の演奏がリリースされました。
 フーガの技法から、4声の曲のみを演奏しています。
 
 注目されるのはK.H.ピルネイ、D.F.トーヴィ、K.アホの三者による
 新旧補完版を取り揃えたところで、特にピルネイ版は私の知る限り
 これまで正規録音が発売されていなかったものです。
 
 ほかにシューマンやシュヴァルツシリングの
 バッハの名によるフーガも弦楽編曲で収録。

2020.02.18.
 ニコラーエワのヘルシンキライブ
 "The Art of Fugue" First Hand Records FHR95
 Tatyana Nikolayeva (piano)
 ニコラーエワといえば以前メロディヤから
 1967年の古い演奏が出ていましたが、
 今回は1993年、亡くなる数ヶ月前の演奏となります。
 
 しかしその演奏に衰えは感じられず、
 長大な三重フーガも淀みなく弾きこなします。
 ライブゆえ多少のミスタッチは否めませんが、
 まだまだ現役バリバリの鮮やかな演奏の数々。
 
 平均律の全曲暗譜で知られる彼女ですが、
 このCDのライナーによれば、ショスタコーヴィチの
 24の前奏曲とフーガ、そしてこのフーガの技法も
 全て暗譜で演奏に望んだとのこと、驚異的です。
   

2020.02.11.
 バルシャイの伝説の補完版復活!
 "Rudolf Barshai Anniversary Edition"
 Melodiya MEL CD 10 02600/1-5 (5CD)
 Rudolf Barshai / Moscow Chamber Orchestra
 LP時代の名演奏をCD化し続けるメロディヤが、
 ついにバルシャイのフーガの技法完全版をリリース。
 Yedangから出ていたもの(1969年演奏)とは別録音(1971年演奏)で、
 未完フーガをバルシャイが補筆完成したものです。
 12:30-16:50の4分20秒はファンにとって至福の時間。
 DVD”The Note”で語られたショスタコービッチお墨付きの
 バルシャイサウンドが重厚に繰り広げられます。
 
 もちろん他の曲もバルシャイ自身が編曲を手がけたもの。
 編曲によってはもたつきがちな管弦楽演奏のイメージを
 一掃してくれる爽快でクリアな演奏。
 
 4つのカノンとフーガの2台編曲はM.ムンチャンのハープシコード。
 こちらもインターミッションと呼ぶのは恐れ多い好演奏。
 
 なおジャケットには"early version"の文字が。
 そう、バルシャイは生涯にわたってフーガの技法の編曲を続け、
 ここに収められた演奏はその一過程の記録でもあるのです。
 Youtubeには1992年演奏の未完フーガ補完版が紹介されています。
 また補完版の楽譜も出版されており、今後のCD化、新録音にも期待。
 
 他の収録曲はヒンデミット、モーツァルト、ショスタコービッチなど
 多彩な面々で、いずれ劣らぬ名演奏。
 (詳しくはメロディヤ公式サイトをご覧ください)
  

2019.08.20.
 ベルダー氏の独奏を心行くまで
 "Kunst der Fuge" Brilliant Classics 96035
 Pieter-Jan Belder, Harpsichord
 鈴木雅明氏のもとバッハ・コレギウム・ジャパンで
 通奏低音も奏するベルダー氏の演奏。
 ハープシコードの音色をたっぷり響かせ、
 装飾豊かに弾き上げています。
 
 カップリングは4つのデュエットと2つのリチェルカーレ。
 デュエットはクラヴィコードで奏されます。

2019.03.25.
 大学教授のコラボCD
 "The Art of Fugue" Romeo Records 7328
 Craig Sheppard, Piano
 シェパード氏といえば近年平均律のCDを出しているので、
 ご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 70過ぎてなおはつらつとした演奏は健在。
 複雑な旋律の絡み合いを弾きこなしています。
 
 未完フーガはケヴィン・コーシン氏による補完版。
 ワシントン大のシェパード教授とミシガン大のコーシン教授、
 2人のコラボレーションによるフーガの技法の結実です。

2019.01.18.
 ヘンレ版をオルガンで
 "L'Art de la Fugue" Editions Hortus 165-166
 Vincent Grappy, Organ
 奏者のグラッピー氏は
 マリー・クレール・アラン女史に学んだとのことですが、
 アラン女史がフランスらしく華々しい音色だったのに対して、
 グラッピー氏は落ち着いた音色で淡々と奏しています。
 
 未完フーガはヘンレ版のモロニー氏補完ヴァージョン。
 オルガンの音色で聴く機会はなかなかないのでは?

2019.01.07.
 快活なる弦楽四重奏
 "Die Kunst der Fuge" OEHMS OC468
 Delian quartett, Strings
 若手の弦楽四重奏団が弾むように軽快な、
 それでいて軽くならず、深みのある演奏を聞かせます。
 拡大反行カノンの初期稿や二台の鍵盤編曲(ピアノ演奏)など、
 盛りだくさんの内容でフーガの技法の世界を堪能させてくれます。
 
 カップリングは現代作曲家シュテファノ・ピエリーニの
 "Cantai un tempo..."、モンテヴェルディのマドリガーレを
 自由にアレンジした作品群です。

2018.10.31.
 18世紀のハープシコードの響き+α
 "Die Kunst der Fuge" Aeolus AE-10154
 Bob van Asperen, Harpsichord
 基本的にフーガの技法以外聴かない私にとって、
 アスペレン氏といえばレオンハルト氏の第二チェンバロの方・・・
 ブックレットの写真を見ればすっかりお年を召されて。
 
 楽器は1741年のクリスティアン・ツェルを使用とのこと。
 楽器にふさわしく落ち着いてしっとりと・・・
 と思いきや、最初から装飾豊かに飛ばしまくります。
 見かけに似合わず、お若いですね。お見それしました。
 
 今回の第二チェンバロはベルンハルト・クラップロット氏。
 氏の今後の活躍にも期待します。
 ドレスデンのジルバーマンオルガンにて
 "Die Kunst der Fuge"Ambiente Audio ACD-2037
 Matthias Maierhofer, Organ
 たまたま時代楽器の演奏がもうひとつ。
 ジルバーマンオルガンの重厚かつ荘厳な響きで、
 自筆譜を全曲弾いています。
 飾り気はないけれど、いいところでたっぷりためる好演。
 
 全開で弾いても心地よく響き、うなる低音にしびれる。
 ああジルバーマンオルガンって良いなあと
 うっとり聞き入ります。

2018.03.18.
 吹きまくるサックス
 "Die Kunst der Fuge" Gramola 99142
 Austrian Art Gang, Ensemble
 のどかな田園風景を背にトラクターに乗る五人組。
 そんなジャケットのCDを見たら、
 フーガの技法だとは思わないのでは。
 
 そのアートギャングを名乗る男性五人組は、
 異種音楽ジャンルから集まったらしいのですが、
 サックスの彼がもう吹きまくる吹きまくる。
 旋律の原形をかろうじてとどめるくらいのアレンジを施し、
 ジャジーな雰囲気のカデンツも披露します。
 副題は"Die Improvisationskunst"。
 
 7曲のフーガと1曲のカノンを奏していますが、
 残りの曲にもぜひ挑戦してもらいたいです。 

2017.11.16.
 アンサンブルで軽快に
 "The Art of Fugue" DECCA 4832329
 Accademia Bizantina (Ensemble)
 Ottavio Dantone(チェンバロ)を中心に、
 オルガン、弦楽を合わせて様々な組み合わせで演奏しています。
 軽快なテンポが心地よく、重厚な作品をさわやかに奏でます。
  
 第12番を一分半はかつて無い早さですが、
 サラバンド風という既成概念にとらわれない、
 古楽器ながら斬新な演奏です。
 
 自筆譜をピアノで
 "Die Kunst der Fuge" Thorofon CTH26402
 Christian Kaelberer(piano)
 自筆譜14曲をゆったりしたテンポで弾き上げています。
 自筆譜や印刷譜の画像を交えたブックレットからは、
 奏者が曲集を詳しく研究したことが伺われます。
 

2017.6.21.
 ピアノデュオで挑む
 "The Art of Fugue" New Focus Recordings FCR181
 Stephanie Ho & Saar Ahuvia (piano)
 連弾で、時に独奏、時に2台演奏も交えながら、
 2人の奏者が旋律の絡み合う難曲に挑みます。
 両者の表現が見事にシンクロしていて、
 時に2人であることを忘れてしまうほど、
 そこがやや窮屈に感じたり物足りなくもあり、
 個人的にはもっと冒険してもらっても良いかと。
 その点2台で弾いている9番、13番などは、
 2人の奏者ならではの音の広がりや伸びやかさを感じます。
 (意見には個人差があります)
 最後は「悲しい別れ」として拡大カノンで締めくくられます。
 

2017.6.5.
 リコーダーの流麗な音色
 "The Art of Fugue" ARS Production ARS 38 230
 Quinta essentia (4 recorders)
 リコーダー四重奏に編曲しての演奏です。
 フーガをタイプで分け、間にカノンを挟んでいます。
 装飾を加えながら軽快なテンポで流麗に演奏します。
 リコーダーならではの歯切れのよさが心地よい。
 未完フーガは長三和音で穏やかに締めくくられます。
 弦+管で織り成すハーモニー
 "The Art of Fugue" Oehms Classics OC1854
 Ensemble L'Arte della Fuga (4 recorders)
 弦楽四重奏とファゴットによるバス線強化で、
 時に激しく、時に瞑想的に、旋律を織り上げていきます。
 2台の鍵盤編曲までアンサンブルで弾いているのは珍しい。
 
 偶然かどうか、今回の新譜は2つとも
 拡大カノンの初期稿を含んでいます。

2017.3.25.
 若手奏者による鍵盤演奏
 "The Art of Fugue" Hungaroton HCD 32784-85
 Balint Karosi (organ, harpsichord, clavichord)
 ハンガリーの若手鍵盤奏者による演奏です。
 主にオルガンを用いていますが、
 カノンや鏡像フーガはチェンバロなどで弾いています。
 曲全体に転回対位を用いたこれらの曲を、
  他の一連のフーガと区別しているのでしょう。
 
 テンポを上げ気味に、歯切れのよい演奏をしています。
 欲を言えばオルガンにもっと音色の変化が欲しいところ。
 最後は未完フーガのオルガン演奏で締めくくられます。

2017.3.17.
 マルコム盤ついに登場
 "Harpsichord Concertos / The Art of Fugue (arr. Isaacs)" DECCA 482 5187
 Karl Munchinger / George Malcolm, Menbers of the Philomusica of London
 この演奏がLPで存在することはファンの間では旧知の事実だったのですが、
 なかなかCD化されず、レコードプレーヤーを捨ててしまった私も、
 発売を心待ちにしておりました。
 
 イザーク版による演奏ですが、曲順には工夫が凝らされています。
 こと二重対位法によるカノンとフーガを交互に奏する配置は、
 作曲原理を踏まえた上で、バッハには無い新たな秩序をもたらしています。
 
 大胆に未完フーガを排し、
 曲集の最後を三重フーガContrapunctus11で堂々と締めくくります。

2016.11.17.
 贅沢な付録ですねえ。
 "The Art of Fugue"(arr. Mahan Esfahani) BBC MUSIC Vol.25 No.2
 Mahan Esfahani (harpsichord/director), Academy of Ancient Music
 BBCミュージック誌12月号の付録としてついているものです。
 いままでまったくチェックしていなかったので、
 過去にもフーガの技法の演奏があったのではないかと
 気がかりではありますが、それはともかく。
 
 なんとも贅沢な付録がつくものですね。
 既存音源ではなく未発表の録音を付録としてつけるとは。
 もちろん演奏はCDとして単売しても良いくらい優れたものです。
 
 アンサンブルにアレンジされており、
 管弦の音色を曲ごと巧みに組み合わせて奏しています。
 私もホームページのトップでそのようなものを流していますが、
 エスファハニさんの演奏は、私の妄想をはるかに上回る形で
 音楽に新しい命を吹き込んでくれました。
 
 曲順にも工夫が見られますが、
 最後は未完成のフーガとコラールで締めくくられます。
 
 これが付録でついて2000円しないんだから、すごい雑誌ですね。

2016.10.18.
 ジルバーマンオルガンの素朴な音色
 "Die Kunst der Fuge" IFO Classics ORG 7260.2
 Jorg Abbing (organ)
 アビングさんはドイツ生まれのオルガニストで、
 ブックレットによればリテーズさんやイゾワールさんに学んだそうです。
 
 1777年建造(のちに改修)のジルバーマンオルガンによる演奏は、
 素朴な音色を生かして穏やかなものとなっています。
 
 カノンを除いた全曲を演奏しており、
 自筆譜の曲順をベースに工夫が凝らされています。
 最後は未完フーガで締めくくられます。

2016.08.24.
 巨匠カラヤンの音源、ついに発売!!!
 "The Art of Fugue" melo classic MC 5005
 Herbert von Karajan (conductor) / Reichs-Bruckner-Orchester
 正直に言いますと、いままでカラヤンのバッハを聞いたことがなかったんです。
 なぜなら、カラヤンの演奏はバッハではなくカラヤンだと思っていたから。
 でもフーガの技法となれば話は別です。
 フーガの技法はだれが弾こうが振ろうがバッハのフーガの技法だろうと。
 
 聞いてみてびっくりしました。 軽くないし重くない。
 弦楽合奏の心地よいテンポと歯切れの良いアーティキュレーション。
 そして曲をクライマックスまで導き築き上げる見事なダイナミクス。
 これがカラヤンなのですね。
 
 曲は抜粋で、自筆譜の曲順をベースにバランスよく配列しています。
 Contrapunctus6から11へと続く配置などは序曲とフーガを思わせて絶妙。
 1944年の録音とのことで、多少音のゆがみもありますが聞くのには差し支えなく、
 むしろよくぞこれだけいい音で残ってくれていたものだと思います。
 
 フーガの技法である以前に、いやフーガの技法である以上に、
 音楽とはかくあるべきと思い知らされる爽快な名演奏です。
 
 グレーザー/シュベプシュ版によるピアノ2台演奏
 「フーガの技法」 King International KKC-4068
 Amadeus Webersinke / 豊増 昇
 こちらも1971年の古いライブ録音が掘り起こされました。
 2台のピアノといえばザイドルホーファー版が良く知られていますが、
 こちらはフーガの技法に関する著作でも知られるシュベプシュ版。
 
 全体的に早めのテンポで2台のピアノが絡み合います。
 時にオクターブ重音を加えて楽器の響きを生かしつつも、
 旋律の成す網目模様を描き出していきます。
 
 ほぼ原曲のまま弾かれる3声の鏡像フーガ(2台版)などは、
 良くこのテンポで合わせたものだとうならされました。
 
 最後は未完フーガに続いてコラールで締めくくられます。
 


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