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10. Alio modo, per syncopationes et per ligaturas a 2
/ Evolutio
シンコペーションと連結音による(カノン?)別法、2声

/その展開


タイトル中の語句 Alio modo はフーガの技法の
2台の鍵盤のためのフーガにも見られます。
また Evolutio はブクステフーデのBuxWV76を始め、
ベルンハルトやヴァルターなどの作品にも見られます。
いずれも2重対位法による転回形が Evolutio と題されています。
こうしたほかの作品との語句の一致は、この曲自体が
転回対位法による作品である事を示していると考えられます。

そして、a 2 (2声)という記述から考えると、
この曲だけは例外的にカノンではないのかもしれません。
というのも、この曲はすでに2声部で書かれているのです。

楽譜は以下のように2種類記されており、互いに上下転回された
メロディーになっています。定旋律と新たな旋律が示され、新たな旋律には
定旋律の 1/4 縮小形(楽譜に青い音符で表示)が含まれます。
なお、この楽譜には後続声部の開始を示すマークが付いていません。




この2種類の楽譜は、単に上下転回しただけではありません。
定旋律は第3音(b)を軸に、新たな旋律は第2音(a)を軸に、
それぞれ転回されているのです。
言い換えると、両旋律の音程間隔が3度ずれているのです。
仮に新たな旋律も第3音(b)を軸に転回すると以下のようになります。




つまりこの曲には転回対位法と同時に
10度の2重対位法も用いられているのです。

(補足)

先ほども述べたとおり、この曲の楽譜には後続声部の開始を示す記号が
付いていません。しかし、第3カノン第5カノンから類推して、
楽譜に示された2組の旋律を組合せ、2重カノンとする解決が可能です。




またもう1つの可能性として、以下のように2小節遅れで
同度カノンとすることも出来ます(少々音の衝突はありますが)。




ただし、Evolutio と記された転回形で同様に同度カノンを実施すると、
2重対位法による3度差のために、後続声部と定旋律との間に並行5度を
生じてしまいます。下の楽譜の並行5度の箇所を赤い音符で示しました。




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