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参考文献

表に記載した発行年は私の手元にある文献のものです。改訂されたものや
新装版の出たものなど、発行年が改められたものは反映していません。

1.フーガの技法の楽譜

著者・編者 出版社
(発行年)
概要
Hoke, H.G. Bach-Archiv
Leipzig
(1979)
バッハ・アルヒーフ版ファクシミリ。手稿譜と出版譜のすべてを網羅しています。紙の表裏まで忠実に再現された未完フーガの自筆譜が生々しいです。現在絶版。
Barber, E.L. Riemenschneider
BachInstitute
(1986)
フーガの技法第2版(1752)のファクシミリ版(縮刷)です。少々見にくいのが難点。このリーメンシュナイダー版も現在絶版です。
Vartolo, S. S.P.E.S.
(2008)
ファクシミリ版です。手稿譜と出版譜のすべてを網羅しています。バッハ・アルヒーフ版よりも画像が鮮明で見やすく、表紙が薄くて楽譜としても使いやすいです。鍵盤奏者として名高いセルジオ・ヴァルトロ氏のコメント付き。
Broude Brothers
PF289
(2009)
ファクシミリ版です。掲載しているのは出版譜(第2版)のみですが、なんといっても30US$と非常に安価。画像も鮮明で、こちらもバッハ・アルヒーフ版より見やすいです。難点は楽譜のサイズがやや大きいことでしょうか・・・(このシリーズは皆もとの楽譜より一回り大きいのです)。
Guillart, G. Zurfluh
(2000)
フランスのオルガニスト、Boely, A.P.F.による筆写譜(1833)のファクシミリ版です。鍵盤用の2段譜で書かれています。出版譜の全曲(コラールを含む)を筆写しているほか、未完フーガはBoelyにより補完されています。
Czerny, C. Peters
(c.1839)
ベートーフェンの弟子、ツェルニー校訂によるピアノ譜です。コラールを除いた出版譜の全曲が含まれています。出版譜に基づいているため、未完フーガの最後の7小節はありません。出版譜以後の校訂版としては早い時期(1839年頃)のもので、現在でも入手可能。テンポや強弱、アクセントなど独自の解釈が盛り込まれています。ただし当初は指使いも付いていましたが、現行の版では省かれています。
Riemann,
K.W.J.H.
Schott
(1899)
ドイツの音楽学者リーマンによって編集・出版された楽譜です。現在絶版。総譜とピアノ譜の双方が出版され、随所に説明が記載されているほか、詳細なフレージングが施されています。編者による未完フーガの補完版や、10度のカノンのカデンツァも収録。
Graeser, W Breitkopf
&Haertel
(1927)
フーガの技法の管弦楽編曲で有名になったグレーザーによる校訂譜です。旧バッハ全集の補巻として出版されました。曲順について独自の見解を示しています。オープンスコアとピアノ譜が併記されているため、やや見にくいです。コラールを含めた出版譜の全曲が含まれています。
Busoni, F. Breitkopf
&Haertel
(1912)
作曲家・ピアニストのフェルッチョ・ブゾーニによる作品です。"Fantasia Contrappuntistica"(対位法的幻想曲)と題されており、未完フーガを材料とした新たな創作とも言える作品です。ピアノ独奏用のほか、2台のピアノ用編曲もあります。
Tovey, D.F. Oxford
University
Press
(1931)
バッハとベートーフェンの研究者として知られるトーヴィによる校訂版。出版譜に基づいてオープンスコアで書かれていますが、鍵盤演奏を考慮してL・R(左・右)の書き込みがあります。出版譜の全曲(コラールを含む)と、反行拡大カノンの自筆版が含まれています。また未完フーガはトーヴィにより補完されているほか、巻末には4つの主題による鏡像フーガ(トーヴィ作)が加えられています。
Hampe, C. 音楽之友社
(1976)
ベーレンライター原典版のミニチュアスコア。原典に従い、すべてオープンスコアとなっています。基本的に出版譜に従っており、楽譜としては見やすいのですが、曲によっては自筆譜に基づいて書かれているため、曲を研究する上では誤解を招きやすい楽譜です。出版譜の全曲(コラールを含む)と、反行拡大カノンの自筆版が含まれています。
Seidlhofer,B.G. 音楽之友社
(1992)
2台のピアノ用編曲です。部分的にオクターブの重複がありますが、新たな旋律を加えた箇所はほとんどありません。出版譜の全曲(コラールを含む)が収録されています。
Walcha, H. Peters
(1967)
ヘルムート・ヴァルヒャ(オルガニスト)校訂によるオルガン用3段譜です。フレージングやアクセントについて若干指示があります。コラールと2台鍵盤用編曲を除く出版譜の全曲を収録しており、未完フーガはヴァルヒャによって補完されています。また10度のカノンにはヴァルヒャによるカデンツァの例があります。
Moroney, D. Henle
(1989)
デヴィット・モロニー(鍵盤奏者)校訂による鍵盤譜です。出版譜と自筆譜の違いや自筆譜の修正箇所についてのコメントがあり、興味深いです。出版譜の全曲(コラールを除く)を収録しており、未完フーガはモロニーによって補完されています。
Bergel, E. MaxBrockhaus 下記の文献をご参照ください。
Zaszkaliczky, T. Editio
Musica
Budapest
(1991)
オルガン作品全集の第11巻として出版されましたが、すべて2段譜で書かれています。多くの曲が見開きに収まっていて演奏しやすいです。出版譜の配列に関する考察を掲載しているほか、出版譜と自筆譜の双方を全曲収録しています。他の版には滅多に含まれない反行拡大カノンの異稿も含まれています。
Guggenheim, P. Mellen
Research
University
Press
(1992)
ポール・グッゲンハイムによる未完フーガの補完版です。様々な作品との比較を交えて未完フーガを分析し、曲の構造を推測する論述があります。オルガン用の3段譜と、合奏用のオープンスコアが収録されています。また他の未完フーガ(BWV562)の補完も試みています。
Overduin, J. The
EdwinMellen
Press
(2001)
オルガン用の3段譜で書かれています。また個々の曲の解説や、曲に含まれるb-a-c-hの音列の例示、未完フーガの補完例とその比較なども掲載されています。コラールと2台鍵盤用編曲を除く出版譜の全曲を収録しています。
Ferguson, M. Holbrook
&Associates
(c.1994)
マイケル・ファーガソンによる未完フーガの補完版です。オルガン用の3段譜で書かれています。未完フーガ以外の曲は含まれていません。
Hofmann, K. Baerenreiter
(1998)
新バッハ全集版のピアノ譜です。最新の研究成果を踏まえており、現在最も信頼できる版と言えます。出版譜の全曲(コラールを含む)と、反行拡大カノンの自筆版が含まれています。また未完フーガの補完版(Schulenberg, D.による)やContrapunctus12の2台ピアノ用編曲(Hofmann, K.による)も収録。

2.フーガの技法やフーガ・対位法に関する文献

著者・編集者 出版社
(発行年)
タイトルと概要
Marco, G.A.
Palisca, C.V.
Norton
(1976)
"The Art of Counterpoint"(英訳)

ツァルリーノの"Le Istitutioni Harmonische"(1558)第3部を全訳しています。もちろん譜例付きです。日本語訳が出版されていない現在、この読みやすい英語で書かれた本は、研究者にとって貴重な一冊です。
Mann, A. Norton
(1971)
"The Study of Counterpoint"(英訳)

フックスの"Gradus ad Parnassum"より、対位法に関する部分が全訳されています。譜例付きです。パレストリーナとフックスの会話としてかかれた文体が面白いです。
Mann, A. Dover
(1987)
"The Study of Fugue"(英語、英訳)

フーガ研究のバイブルです。フーガ発展の歴史が多くの資料に基づいて的確に記されています。またいくつかの理論書からフーガに関する著述が抜粋されており、フックスの"Gradus ad Parnassum"も譜例付きで抄訳(英語)されています。
東川 清一 全音楽譜出版社
(2000/2003)
「正しいクラヴィーア奏法」T・U(日本語訳)

バッハの息子、エマニュエルの労作を邦訳しています。運指法から装飾音、通奏低音まで詳細に説明。即興演奏についても述べられています。バッハの作品演奏で悩んだ時、まず手にするのがこの本です。
池内 友次郎
余田 安広
白水社
(1986)
「フーガ」(日本語訳)

Bitsch, M.とBonfils, J.による名著の邦訳です。譜例を交えて多くの作品に触れながら、現在に至るフーガの歴史を概観しています。上記の"The Study of Fugue"に比べると、音楽理論書にはほとんど触れていないのが物足りないところです。
角倉 一朗
音楽之友社
(1988)
「バッハへの新しい視点」(日本語)

バッハに関する研究論文を10編収録しています。作品の真偽問題や音楽の象徴性など、興味深いものばかりです。フーガの技法に関する様々な謎を、国内で初めて一般に知らしめた本でした。
Bergel, E. Max
Brockhaus
(1980)
"Bachs Letzte Fuge"(ドイツ語)

エリヒ・ベーゲル(指揮者)によるフーガの技法の詳細な分析。曲の順序や未完フーガの構造について研究しており、自筆譜の書き込みや出版譜の挿絵にまで言及しています。ベーゲルによる未完フーガの補完版も収録されています。
角倉 一朗 白水社
(1999)
「バッハ資料集」(バッハ叢書10、日本語訳)

バッハを知るにはまず背景から。ということで、バッハの生活ぶりから職場でのいさかい、悪い噂にいたるまで、様々な文献からバッハに関する記述が集められています。「個人略伝」や、フォルケルの「バッハの生涯と芸術」も収録されています。
礒山 雅 講談社
(1990)
「J.S.バッハ」(日本語)

バッハのカンタータ研究の第一人者、礒山雅先生の名著です。音楽だけでなく、バッハの生活や信仰についても触れられています。フーガの技法と詩篇とを結びつけるプラウチュの著述が紹介されており、興味深いです。
Schleuning, P. Baerenreiter
(1995)
"Johann Sebastian Bachs Kunst der Fuge"(ドイツ語)

個々の曲について、時に他の作品と比較しながら作曲年代順に分析し、作曲の過程をたどっています。曲に含まれるb-a-c-hの音列についても言及しています。
小林 義武 春秋社
(1995)
「バッハ−伝承の謎を追う」(日本語)

ゲッティンゲンのバッハ研究所に勤める小林義武先生の名著です。近年の研究が反映されており、作品の真偽やロ短調ミサの製作年代など、出版当時としては目から鱗の内容ばかりでした。フーガの技法について、「バッハへの新しい視点」と比較して読むと、研究の成果がよくわかります。
Walker, P.M. University
of
Rochester
Press
(2000)
"Theories of Fugue
from the age of Josquin to the age of Bach"(英語)

上記の"The Study of Fugue"を補って余りある膨大な情報量の本です。音楽理論に関する文献について詳しく書かれており、また様々な作品について譜例付きで説明されています。ツァルリーノの"Le Istitutioni Harmonische"の受容史に付いても知ることが出来ます。
Yearsley, D. Cambridge
University
Press
(2002)
"Bach and the Meanings of Counterpoint"(英語)

のっけから対位法と死とのつながりが繰り広げられ、研究書としてだけでなく、読み物としても面白い本です。作曲者の意図を汲み取る参考になります。豊富な譜例に原典のファクシミリなど資料も充実しています。


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