「2歳の時の写真から」

平成十六年四月一日

 これは私が2歳の時の写真です。子どもの頃の写真は戦災で殆どが焼けてしまいましたが、これは戦災を免れた親戚から最近になって返してもらったものです。
2歳ということは、東京の荻窪に住んでいたときの物と思われますが、戦前の昭和十二年に台北から引き揚げてきた当時の物で、この時私は胃壁が溶けるほどの消化不良をやって、生死をさまよった直後の頃の写真だと思われます。

小学校の担任の堀田先生が海軍下士官だったこともあって、小学生当時の私は海軍に憧れていましたが、2歳の時にすでに海軍が好きだったかは知りませんが、こんな服を着ています。両親はクリスチャンでモあり、軍人が好きな方ではありませんでしたから、この服は両親の見立てではなく、もしかしたら私の希望で購入したものかも知れません。

もう5年早く生まれていたら、私は間違いなく海軍に行き、何処かで死んでいた可能性の方が高いでしょう。今この写真を自分で見てみると、こうしていま生きていることの方が不思議な気さえします。
小学生の頃といっても、ただ軍隊に憧れていただけでなく、何か使命感のような物をはっきりと感じていたことを思い起こします。

その頃の記憶をこんな風に辿ってみれば、死を前提にして人生が組み立てられているともいえるのに、とても今では考えられないような、何か子供の胸にも、心ふるえる充実感のようなものが在ったとことをハッキリと憶えています。