蚕の繭(マユ)をご存知ですか
明治から昭和初期にかけて蚕産業がさかんな時代には、蚕や繭は誰でも見たり触ったりしたものですが、今ではそのような経験をした人はほとんどいないようです。
蚕はご存知のように昆虫の一種で鱗翅目(リンシモク)に分類されている蝶や蛾の仲間です。幼虫は桑の葉を食べて成長し、人差し指ほどの大きさになって繭をつくります。繭は蚕が幼虫から成虫の蛾に変態する蛹の期間、外敵から身を守るためのシェルターなのです。
十分に桑の葉を食べて準備のできた蚕は吐糸口から出る糸で足場をつくり、自分の周囲に糸の壁をつくっていきます。蚕は1000メートルから1500メートルの糸を吐き、繭ができあがります。
蚕の体内には絹糸腺と呼ばれる絹物質を製造する細胞による貯蔵用の袋があり、液体状の絹が蓄えられます。袋は吐糸口につながっていて、外部に引張り出された瞬間、液状絹は結晶化して強力な絹糸となります。こうしてつくられた絹糸はセリシンと呼ばれる”にかわ”のような糊状たんぱく質をまとっていて、この糊を利用して絹糸の壁をつくるのです。
このようにしてできた繭は最初から最後までひと続きの糸でできているため、接着剤の役割のセリシンをお湯などで適度に溶かせば、蚕が繭をつくったのとは逆の手順で1000メートルから1500メートルの長さの糸が取り出せるのです。
ただし、一本一本の糸は人間が利用するにはあまりにも細すぎるので、何十本かを束ねて巻きとっていきます。この作業を繰糸といって製糸工場で行っていて、できた糸を生糸(キイト)と呼んでいます。この糸には絹のまわりに糊の成分であるセリシンが残っています。このセリシンを洗いおとして美しい絹織物が出来上がります。
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