それでも存在した「イアンフ」強制連行と性奴隷

                    2014年10月5日 弁護士 毛 利 正 道

 

吉田清治氏証言取消に端を発した、「日本会議」勢力による朝日新聞攻撃は、ついに、安倍首相がこの10月3日の衆議院予算委員会で「日本が国ぐるみで性奴隷にしたと、いわれなき中傷が世界で行なわれている」と答弁する事態にまでエスカレートした。日本が行なった「従軍慰安婦=性奴隷」(以下、「イアンフ」という)について、これを「中傷=事実に反すること」として、否定したのである。吉田証言取消に拘らず、1993年8月4日の河野官房長官談話がなんら揺るぐものでないことは、政府の「河野談話検証チーム」が本年6月20日に報告した検証結果や、このことを一層深く分析した本年9月27日「しんぶん赤旗」の「歴史を偽造するものは誰か」であきらかである。

 

にも拘らず、「日本会議」勢力と安倍首相挙げての、「戦前日本の不名誉=イアンフ問題」を抹殺しようとする嵩(かさ)にかかった動きは留まるところを知らない。このようななか、「イアンフ」にさせられた女性たちがいったいどのような処遇を受けたものだったかを、今、あらためて日本と世界の人々に周知する努力が必要とされている。日本国民の前に「イアンフ」の実態が次々に明らかにされた1990年代からすでに15年。分かりきっていること、と言わず、労を惜しまずに。

 

私は、18年前の1996年11月に、ある高校で全校生徒を前に「沖縄からイアンフを見たー今も「占領」されている沖縄の地で日本が占領地でしてきたことを考えるー」との45分間の講演をした。15歳で文字通り強制連行され、監禁された上約5ヶ月間に亘って連日強姦され続けた李秀梅(リシュウメイ)さんを主人公とするものであった。

 

彼女を含む4名の原告が闘った「中国人イアンフ損害賠償請求訴訟(第一次)」での2004年12月15日東京高裁判決は、次のように述べる。

 ―八路軍が1940年8月に行なった大規模な反撃作戦により、日本軍北支那方面軍は大損害を被ったが、これに対し、北支那方面軍は、同年から1942年にかけて徹底した掃討、破壊、封鎖作戦を実施し(いわゆる三光作戦)、日本軍構成員による中国人に対する残虐行為も行なわれることがあった。このようななかで、日本軍構成員らによって、駐屯地近くに住む中国人女性(少女を含む)を強制的に拉致・連行して強姦し、監禁状態にして連日強姦を繰り返す行為、いわゆる慰安婦状態にする事件があった。(判決は、続けて、全員が強制連行された李秀梅さんら4名が個々にどのような人権侵害を受けたかを控えめながらしっかりと認めている)―

 

 今回は、次の資料を公にすることにより、イアンフの実態の一端に迫るものである。

 

1 李秀梅さんの訃報  2014年4月15日

 

2 高校での講演録「沖縄からイアンフを見た」 1996年11月

 

3 東京高等裁判所判決 2004年12月15日

 

4 35人の原告全員強制的にイアンフにさせられたと認めた日本の裁判所

 2014年3月14日「しんぶん赤旗」「歴史の偽造は許されない」志位和夫

 

5 慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話

                          1993年8月4日

6 しんぶん赤旗「歴史を偽造するものは誰か」2014年9月27日