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2009夏、選挙、クマとミツバチ

2009夏、選挙、クマとミツバチ
 
 ALIVE2009年11、12月号 
長野県 小林桂子

 この夏は、本当に忙しい夏だった。ただでさえ、忙しいのに、野菜セット90箱送付という注文を請けてしまい、嬉しい半面かなり大変だった。でも冠婚葬祭の品返しに「有機野菜」を選んでくれた知人には感謝したい。

 そして夏の忙しさが山を越え、ひと息つけるかなと思った時に、畑で働く夫に「衆議院選挙比例出馬依頼」の電話がきた。告示4日前、「こんなのあり?」という感じだが、当選確率はゼロに近いので、夫は「じゃあ床屋にでも行ってくるか」といった感じで請けてしまった。「半分畑仕事をやりながら」と思っていたのだが、実際は、記者会見のために東京に行ったり、選挙カーがくれば、だれも乗らない訳にはいかないので、事務から勝手連の協力者への手配、遊説と、夫ひとりでこなし、畑とヤギの世話は私ひとりでやることになった。選挙事務所である自宅は、当然だれもいない。ヤギだけだ。記者の人にもさぞ迷惑をかけただろう。

 そして、9月初め、たまりにたまった畑作業に追われている時に、「クマによる養蜂箱の被害」がでた。私の住む原村は、八ヶ岳山麓にあり、カラマツなどの造林ばかりで、クマは生息出来ない環境から、クマはいないと言われていた。山の方での目撃情報は、年に何度かあるのだが、今回は巨大別荘地の下にあたり、流行りのIターン者が移住している住宅地のすぐそばだ。

 村では初めてともいえるクマの被害。「殺されないでほしい」それだけが私の願いだ。そのためには、絶対に人身被害を起こしてはならない。鳥獣保護員としてまず、周辺に「クマに注意」のチラシを配布した。「クマは臆病なので、鈴などをつけて人間の存在を知らせれば、クマの方が逃げることや、生ごみを外に放置しないとか、夏期は、山にクマの食べ物が少なくなるので、ときどき里に現われることがある」とかいうことを簡単に書いたチラシだが、クマに対しての知識が皆無の一般住民に、少しでも正しい知識をもってほしかった。

 別荘地などは、クマがでるとイメージが悪くなるのか、価値が下がるのか知らないが、あまりオープンにしたがらない管理事務所がある。だから、住民には、山にはクマがいて当然だという認識がまるでない。

 養蜂箱の被害の後、農業大学校のトウモロコシ畑がやられた。被害は、何箇所かあり、広大な飼料用モロコシ畑では、畑の外からはまるでわからないが、数メートルほど入るとぽっかりと10畳くらいの空間ができていて、1週間位ここで食べ続けているような様子だった。

 猟友会と役場でクマ用のドラム缶檻を設置した。長野県では基本的にクマを捕獲しても奥山放獣という形をとっている。ただ、捕獲が2度目だったり、状況によっては、檻にかかったら捕殺ということになる。

 結局、3基の檻を仕掛けたが、3週間経つ今も捕獲はされず、被害も広がっていないような感じだ。そろそろドングリのなる頃、山に帰ってくれたならいいのだが・・・。

 ただ、今回のクマ騒動で、大きな問題が見えてきた。広大な畑をクマ用の電気柵で囲い、下草刈りをし続ける管理の大変さ、これを農業者が全部負担するため、実際は、電気柵設置を前向きに検討してもらえない。それと、電気柵もいろいろで、メーカーによってかなり品質の差がある。また、クマに対して有効な張り方を知らないため、せっかく設置してもクマがくぐってしまい、養蜂家などは、あきらめている節がある。つまり、被害を黙認されると結局はクマの餌づけになってしまい、いつかは大きな騒動になるだろう。

 さて、こんな夏だったが、一番嬉しかったことは、日本ミツバチが我家に来てくれたことだ。巣箱を作って置いたら、8月初め、雨上がりの午後、大群が飛んで来た。嬉しくてかわいくて、毎日ただただ働くミツバチを眺めている。無事に冬越しをしてほしい。



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