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ツキノワグマについての勉強会
クマの勉強会   
ALIVE2010年1、2月号 
長野県  小林桂子

クマについての正しい知識が必要
  昨年11月初めに「クマの勉強会」を開いた。前号に書いたが、私の住む村で、初めてクマによる農作物等の被害が出た。そこが、別荘地に囲まれているため、住民たちの中で、「恐くて散歩も出来ない」という話を聞いた。

 モロコシ畑に3基のドラム缶檻を仕掛けたが、しばらくするとクマの形跡が消えた。「山に帰ってくれたならいいが・・」とひと安心。だが、住民の中に恐怖感が残っている。クマのことを何も知らないがために、ただ、恐いと想像してしまう。9月に乗鞍のバス亭で起こった悲惨なクマによる事故が、追い討ちをかける。

 マスコミがいけない。クマによる被害を大きく取り上げ、悲惨な犠牲者を映し、最後に射殺されたクマを映す。悪者は成敗したから一件落着、安心してほしい、ということだ。この繰り返しで、人々は「クマは恐いもの、悪いもの」というイメージが出来上がる。マスコミは、本質を映そうとしない。なぜ、クマが人を襲ったのか?なぜ、こんな大きな騒動になってしまったか?これから、何をどう気をつけるべきなのか?何の対策もないまま、毎年のように、クマとの悲惨な事故が繰り返される。

クマは自然の豊かさの象徴
  講師は、野生動物調査の会社で働いてきて、結婚を期にこちらに越して来た女性で、県のクマ対策員もしている。まだ若いのに、とてもしっかりしている。今回のクマ出没で、一緒に調査をして、「クマの勉強会」をやりたいねと言い出したのは、彼女のほうからだった。

 彼女の講義は、完璧で、「ツキノワグマの生態」から始まって、「クマは自然の豊かさを象徴している」ということを繰り返し説明してくれた。簡単だが、重要なことだけを以下にまとめたので皆さんにも参考にしてほしい。

生息域での暮らし方
  クマ棚や糞で、クマの痕跡を知り、ごみ処理の徹底をすること。人間の食べ物の味を知ると、クマは人を恐れなくなり、人を恐れなくなったクマは危険。危険なクマを作り出すのは、実は人間だという。

 そして、クマに遭わないために、人の存在を鈴などで知らせれば、臆病なので、遭う前にクマが逃げて行く。クマ鈴は高い音が効果的。

突然遭遇してしまったら
  クマを刺激しないこと。まず、落ち着いて、急激な動きはせず、ゆっくりと後ずさりして離れること。物などは絶対に投げない。もしクマが、走って向かってきても、絶対に走らずに、後ろ首に両手を組んでうつ伏せになれば、死ぬことはない。頚動脈と腹部を守ることが大事だ。クマがアタックしてきても、大概は威嚇で終わるので、絶対に走ってはいけない。走れば必ず追ってくるし、人間よりもずっと速く走るので勝ち目はない。

 クマの爪は襲うための爪ではなく、木に登るための爪で、ただ、鋭いので、引っかかれると大けがをする。
(以上講演内容)


 ※昨年9月に起きた悲惨な乗鞍でのクマの事故も、初めにクマを見た人が石を投げずに、そっとしておいてくれたなら、何事もなく、クマは山に戻ってくれたのかもしれない。さらに棒で叩かれ、恐怖でパニック状態のクマは、習性で、逃げる人を追いかけて大事件になってしまった。建物に逃げ込んだクマは、精神的にも疲れきって、猟友会が入った時は、身動きもしなかったそうだ。
 山にはクマがいて当然なのだから、クマに対しての認識をしっかりと持ってほしいものだ。(小林)



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