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錯誤捕獲でも殺される野生動物

▼錯誤捕獲でも殺されるキツネ

 シカが増えすぎたということで、ワナを使って通年捕獲をしている地域が増えた。手軽なククリワナが多く使われているが、これは、シカだけでなく、もちろん他の動物もかかってしまう。錯誤捕獲の場合は、目的のシカ以外は、放獣しなくてはならない。クマやカモシカが錯誤捕獲された場合は、県に連絡があり、基本的には放獣をしているが、キツネ、タヌキの場合は、闇に葬られてしまう。県に聞いたところ、ククリワナに掛かったキツネ、タヌキは大暴れをして、死んでしまっているケースが多いと言う。

 だが、個体数調整(有害駆除)の捕獲関係者の中に、キツネ、タヌキも悪さをするので、駆除した方がいいと思っている人が多いというのも事実だ。放獣は手間取るのでその場で殺してしまう人、或いは、殺すのは違反なので、死んでしまうまで、ワナをはずさずに放置する人もいると聞いたことがある。

 山林のあちこちに設置されるおびただしい数のワナで、シカの序でに殺されるキツネ、タヌキたち。だが、こんな哀れな状態でも、正すことが難しい。例え私が、錯誤捕獲で殺されるキツネの現場を見つけて、違法だと問題にしても、小さな波紋は起こるだろうが、その結果として、今度は、キツネ、タヌキも有害駆除対象として、簡単に捕獲許可が降りるのは、目に見えている。


▼シカを喰うクマ

 そして、ククリワナにはもう一つ重要な問題が起きている。ワナにかかったシカをツキノワグマが食べる例が出てきた。夏の山は餌不足になるクマ、普段は、シカを襲うようなことはないが、動かないシカがいれば、空腹でガリガリに痩せたクマには、ごちそうそのものだ。
 結果的にこれは餌付けになり、人間とのトラブルの原因になる。植物昆虫食のクマが肉食になる。誰もが、シカを減らそうと躍起になって、自然そのものが見えなくなっている。自然環境をこんな風にしてしまったのは人間なのに…。


(2012冬号 ALIVE森の生活 小林桂子
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