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地球温暖化と不都合な真実
地球温暖化と不都合な真実 
ALIVE2007年9、10月号掲載  
長野県  小林桂子

 今年も陽気がおかしい。冬は暖冬で、春が早いかと思えば、気温が上がらず、作物の出来は遅れた。6、7月は毎日の雨に日照不足で、花の成長も色も、今ひとつ元気がない。ジャガイモも早々と病気になって枯れてしまった。山の方も心配だ。昨年は、どんぐり等の不足でクマが里に出没したが、今年の山の実りはどうだろうか?

 世界中で次々と起こる深刻な異常気象は、地球温暖化の現象なのだろうと、今では誰にも察しがつく。だから、対策を早くしないといけないと、誰もが思っているだろう。 

 スウェーデンの世論調査によると、4割の人が、地球温暖化を阻止するためなら、生活水準を下げても良いと考えているそうだ。そして国政として、国民にメリットのある誘導政策により、温暖化防止に取り組んでいるという。

 ところが日本では、のんびりと構えていて格好ばかり、かけ声ばかりで、削減どころか、ますます温暖化に拍車をかけている。国政が「真善美」とは、かけ離れてしまって、美しい国どころではない。

 確かに一人一人が、節電をすることも大切だが、日本中の自動販売機の数を半分に減らすだけで、かなりのエネルギー節約になる。そして、その結果、どれだけの人が不便を感じるだろうか?

 また、日本では、大量のゴミを燃やしているが、それは、結果的に石油資源と木材を燃やしていることに過ぎない。それも大量のエネルギーとお金をかけて、ダイオキシンや化学物質、重金属を空中に噴出させながら、ゴミを燃やす。そして、その焼却灰を、また、莫大なエネルギーをかけて1,300℃まで高温にし、溶融固化させている。二重三重にムダではないだろうか。ゴミは、資源だということを忘れている。

 地球温暖化のあおりで、何年かしたら海に沈んでしまうであろう島、大災害を受けている人々、環境の変化で絶滅をしていく生き物たちが、この日本のゴミにかけるムダなエネルギーの現実を知ったなら、どうだろうか?こんなことは、許せまい。それも、日本では環境省が勧めているのだから、情けないし、悲しいことだ。

 私は観ていないが、「不都合な真実」という映画が話題になった。まさに、これこそ不都合な真実ではないか。

 先日、地元の50代の男性が訪ねて来た。建設関係の仕事をやっていて、農業用水路のコンクリート三面張りの工事に反対する夫と激しく対立した男性だ。そんな彼が、「不都合な真実」を観てショックを受け、いても立ってもいられずに、早朝5時半にやって来たらしい。普通の農家ならとっくに起きているだろうが、うちは、まだ寝ていたので、午後になって出直して来たという。

 彼の話しを聞いていると、とてもいろいろな知識がある。「今まで見ない振りをしていたが、地球の現実を見てしまった、知ってしまった。建設業だが、生活もかかっているし、どうしたらいいのだろう?」と悩み、環境のことでうるさい小林さんは、どんな生活をしているのだろうと、訪ねて来たわけだ。「うちでは、電気も引いているしパソコンもある」というと、少し安心したようだ。全て便利なものを捨てなくてもいい。今は、無駄を省くだけでいいし、次のステップで、またひとつ選択すればいい。建設関係の仕事だって、全否定することはない。効率優先ではなく、自然にやさしい工法で、環境負荷の少ない仕事をすれば、これからの社会、逆にビジネスチャンスになるかもしれないなどと、夫が言うと、納得して帰って行かれた。

 そう、アンテナ、アンテナさえあれば、気付きがあると、いつも思う。同じ映画を観ても、それぞれに感じ方は異なる。人と人、激しく言い合った仲(不仲)でも、わざわざ訪ねて来てくれるつながりが、人間のよさではないだろうかと思った。




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