【 事例レポート 】

 財政検証/駐車場会計  

  修繕積立金不足が話題になりますが、管理費の方は大丈夫でしょうか。

特に駐車場使用料を管理費会計に繰入れている管理組合では「空き駐車場が増え、収入が次第に目減りしてきた」「消費税改定など通常経費は着実に増え続けている」という現状が散見されます。結果としては単年度収支が赤字となり、次期繰越金(正味財産)が減少してしまいます。

 

  

 

 正味財産の推移を検証してみる   

 

下記はAマンション(築20年、170戸)管理組合の、管理費会計貸借対照表の抜粋です。      単位:万円

 

会計年度

第16期

第17期

第18期

第19期

第20期

第21期

2015年

2016年

2017年

2018年

2019年

2020年

前期繰越金

2,233

2,202

2,123

1,908

1,829

1,802

当期収支差額

△31

△79

△215

△79

△27

 

次期繰越金

2,202

2,123

1,908

1,829

1,802

 

 「次期繰越金」を「期末繰越金」「正味財産」と呼ぶ管理組合もあります。

 

A管理組合の場合、収支差額は慢性的に赤字で、ここ5年間で431万円の手持資金(蓄え)を減らしたことになります。企業会計の目線では5期連続赤字となれば、相当の覚悟で財政再建を図らないと、倒産の危機に瀕します。

 

 

 仕訳は区分経理だが、預金口座は一つで収納の実態   

 

 ところがA管理組合では、この問題がさほど重要視されていませんでした。その理由は預金通帳の管理にありました。A管理組合の預金通帳は1冊(○○BK決済性普通預金口座のみ)だけで、管理費と修繕積立金が一緒にプールされていました。管理組合会計の特有原則として「区分経理の原則」がありますが、ここの管理組合では仕訳上、管理費と修繕積立金を区分していたに過ぎず、資金的には区分されていませんでした。ですから管理費が不足しても、(残高がある限り)同じ財布の修繕積立金の資金を「ちょい借り」して操業していたことが明らかになりました。

管理費と修繕積立金を同一口座で収納保管していたとしても、規約上誤りという訳ではありませんが、資金も別々に保管しておくことが望ましいとされています。

加えて機械式駐車場を有する場合は、これら2会計とは区分して別途、駐車場会計を設定することもできます。

駐車場会計を独立させることにより、収入と支出の均衡が明確になり余剰金があれば設備改修の備えとして修繕積立金に繰入れる、不足金が生じた場合にどの会計から資金を補填するのかが問題になります。

 

 

 駐車場会計を精査してみる   

 

A管理組合ではプロジェクトチームを編成し、これまでの駐車場収入推移・空き区画の実態・設備稼働率調査、さらにこれまで要した保守費用・修繕費の実態を細かく洗い出し、駐車場会計の問題点整理を始めました。

管理組合の収入および支出は、未来予測により「予算編成」されます。総会で決定した予算に基づいた運営を行なうことを「予算準拠の原則」と言い、これも管理組合会計の特有原則です。

 

機械式駐車場の維持管理には多大なコストが発生しますが、マンションによっては「長期修繕計画書」の中に『機械式駐車場』の項目が除外されている例も見られ注意が必要です。

また販売側はマンションを売りやすくするために「駐車場使用料を回して、管理費を安く見せてきた」社会情勢も背景にあり、分譲されてから数年後にこれに気付き、後で苦労するのは管理組合・区分所有者という図式があちこちに散見されます。

 

 

A管理組合は、自分たちで駐車場を経営するのだという意識を組合員に訴え、適正な駐車場使用料の試算、そして現行管理費・修繕積立金の見直し作業に入っています。

 

 

 

 

 

 

 

2019年9月

 

 

 iida マンション管理士事務所

 

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