| ■伝説・民話
その1 「音無川 」
その2 「八ヶ岳と富士山
」
八ヶ岳が富士山のように、もうもうと煙をはきだしていたころのことです。
そのころは、富士山もやはり、もくもくと煙をはいていました。いつも周りの山に向かっては、「見たところ、わたしが日本一高い山のようですね。......雨でも、雪でも自由に降らすことができますよ、えへん。」と、高いはなを、ツーンとさせて、得意になって自慢していました。
ある日のことです。いつものように雲の上から、「えへん。わたしは、日本一高いですよ。」といい気分になって言いふらしました。
すると、とつぜん遠くから、「日本で一番高いのは、このわしじゃ。」とごぶとい声がとんできました。
―まあ失礼な。一体だれでしょう。―
富士山はその声がする北のかなたを見ました。それは雲の上へちょこんと頭をだしている八ヶ岳の神様でした。
「まあ、八ヶ岳の神様なにをおっしゃるの。わたしが日本一高い山にきまっているじゃありませんか。」富士山はぐっと背伸びをしていいました。
「いやいや、とんでもない、わたしが日本で一番高い山だ。」八ヶ岳も負けずに肩をいからせていい返しました。
「いいえ、わたしです。」
「いや、わたしじゃ。」
富士山と八ヶ岳は、お互いに自分のほうが高いんだと言い合って、一歩もひきません。こんなことが、5年も、10年も続きました。
この様子をごらんになった阿弥陀如来様は、「神様同士が争いをするなんて、本当に困ったものだ。」と顔をしかめました。なにか、いい知恵はないものかといくにちも考えました。
―ああそうだ、これはよいぞ―
阿弥陀如来様はポンと手を打ちました。
それは、富士山から八ヶ岳まで長いトイをかけて、水を流すのです。水は正直ですから少しでも低いほうへ流れます。
さっそく阿弥陀如来様はトイを作りました。
トイは富士山のてっぺんから八ヶ岳のてんみねまでかけられました。
まるで一本の橋のようです。
さあ、いよいよ水を流します。富士山と八ヶ岳の神様はじっと見守りました。
さあて、水はどっちに流れるでしょう。
あっ!水はピシャ、ピシャと音をたててどんどん富士山の方へ流れていきました。
富士山が低いことがはっきりしました。
さあ、大変です、富士山はだまっていません。「そんなことがあるもんですか......。」
髪をふりみだしカンカンに怒りました。富士山は女の神様ですが負けず嫌いでした。
「ああ、くやしい。」
いきなりありったけの力で八ヶ岳をけとばしました。
ガアーン!天も地もこわれてしまうかと思われるほどの、すごい音がしました。
ザア、ザア、ザア、ガラ、ガラ、ガラ。
八ヶ岳が頂上から崩れ落ちました。
なんにちも続いてやっと止まりました。
そのために、八ヶ岳は八つに裂けて、富士山より低くなりました。
|