題詠短歌100首2006
001:風 風向きが変わるその日を待ちあぐねもうどれくらいあとどれくらい
002:指 指を折り5.7.5.7のステップでミソヒトモジの森を歩こう
003:手紙 祖母からの手紙にあった二文字はせうと読んでもしょうと言うべき
004:キッチン キッチンというカタカナのこそばゆさサンマを焼けばそこはお勝手
005:並 並がいい並が一番いいんだと並々ならぬ並な毎日
006:自転車 イマの風感じてみたい自転車でカーステレオはなくてもいいよ
007:揺 揺れている皆一様にロックってそういうものじゃないんじゃないの?
008:親 親になることなく終わる一生なり哀れむことの卑劣さを知る
009:椅子 継続は力なのかと悩ませる人間椅子の近況を知る
010:桜 来年も見るだろうかとおそらくは誰もが思う今年の桜
011:からっぽ からっぽにしてみることの難しさ脳内常に思考とまらず
012:噛 噛みしめる昨日の傷を悲しみをそして痛みを光に変えよ
013:クリーム 灰色の空を見上げるそんな日はクリームシチュー定番となる
014:刻 刻々が立ち止まらずに過ぎて行く今はもう過去今はまた過去
015:秘密 胸の奥の秘密のドアの合い鍵をちらつかせてはもてあそぶ罠
016:せせらぎ とどまらぬ事の強さを秘めながら根雪はやがてせせらぎになる
017:医 麗しき努力信念愛のひと 医女チャングムが好きになれない
018:スカート 超ミニのスカート丈に目をそらす女子高生よそれでいいのか
019:雨 君思うこと虚しさに変り行く3月の雨降りはじめたる
020:信号 午前2時彼方へ続く暗闇に瞬いている信号の赤
021:美 美佳さんが好きなんですねあの人じゃなきゃダメなのね桜井さんは
022:レントゲン 病巣を暴いて晒すレントゲン罪の深さを知らざるままに
023:結 独り身を貫くだろう今更に"結"ぶの文字に敏感となる
024:牛乳 ふざけるな ! 心の叫び収まらず振り上げた手で牛乳を飲む
025:とんぼ 学ぶとき考えるとき目の端で寝転んでいたとんぼ鉛筆
026:垂 "垂"るという文字のイメージ貧しくて火垂るの"垂"ると知ってときめく
027:嘘 何になる自分に嘘をついてまで円く収めていつもの自滅
028:おたく おたくとう言葉の悪意さらばあれまたぞろ我も短歌おたくぞ
029:草 草萌ゆる季節(とき)を好みて憂鬱はふいに背後に忍び寄るらし
030:政治 一枚のメールが乱す政治など諸刃の剣をかざす浅はか
031:寂 寂しさを知ってしまった子供らは作り笑顔の大人に変わる
032:上海 上海をふるさとに持つアミンという清らかなるを知っていますか?
033:鍵 次のドアの鍵をいつでも探してる探しあぐねて僕らの旅は
034:シャンプー シャンプーを選んでみても変わらない誰かに似てて強情な髪
035:株 かの人は独房室において今何思うらむ株を離れて
036:組 宙組をソラグミと呼ぶ歌劇団マイノリティーの少女が集う
037:花びら 花は咲き咲き乱るとき花びらが散り行くときぞげに美しき
038:灯 悲しみを燃料にして灯す火の明るきことを願う夕暮れ
039:乙女 ひからびた乙女心を震わせる桜井さんの倫ならぬ恋
040:道 この先は天に続くか濁流か さあいざ行かんこの獣道
041:こだま 優しさは自己防衛だそうだろう ? 内なる声がこだまする午後
042:豆 豆乳を飲ませる事も効果あり昔話を繰り返す母
043:曲線 魅せられてその直線と曲線が描くフォルムに自転車を撮る
044:飛 さあ今だ ! 誰も追っては来ないけど私が私であるために飛べ !
045:コピー "コピハンジャン"コピー1枚ハングルは初心者マーク2年経っても
046:凍 自己否定人間不信思い込み いつか凍土を崩す太陽
047:辞書 これは何 ? 言葉の意味を親に聞く経てまた今日も辞書に訊ねる
048:アイドル ねぇピエロ悲しくっても笑っちゃう誰か私をアイドルと呼ぶ
049:戦争 半島を分かつ起こりは己らに在ると知らざり戦争の影
050:萌 萌ゆるもの心の奥に兆すれば育たぬように摘み取る弱さ
051:しずく 「好きなもの選んでみて」と母に言い栗のしずくを探す店内
052:舞 姉という立場の微妙妹に先を越されて浅田舞・真央
053:ブログ リアルより大切なものマイブログみんなそんなに淋しいのかよ
054:虫 つまらないことにイライラしておりぬ生理日前の虫のいどころ
055:頬 「変わらなきゃ」思う心と裏腹に頬づえついて現実(そと)を見ている
056:とおせんぼ ここからは侵入禁止とおせんぼ誰あれも来るな(※カギは開いてます)
057:鏡 女より見た目気にするナルシスト鏡を捨てよキミは男だ
058:抵抗 趣味短歌・音楽・写真 抵抗は空回りして父親に似る
059:くちびる 口紅を差すことも無きくちびるよ女未満の我を許せよ
060:韓 老年のお嬢さんらの夢乗せて韓流熱風駆け巡り行く
061:注射 ツベルクリン予防注射に大袈裟にはしゃいでみせたあの子の歪み
062:竹 群れて立つ竹を好んで撮る父は己が孤独を持て余すごと
063:オペラ モーツァルトのオペラが好きと言う女(ひと)のコンプレックス見えてしまえり
064:百合 出身校問われたならば"白百合"とシャレで答える粋な先輩
065:鳴 鳴き声はそれぞれであるミーちゃんはウガンといって味海苔ねだる
066:ふたり インド系こってり顔と大和系あっさり顔に惹かれたふたり
067:事務 将来の夢を問われて事務員と答えるキミがオリジナルだよ
068:報 彼方より届く報せか右脳にて知らぬ時空の映像を見る
069:カフェ シュガーレスライフさそんなもんだよとつぶやいてみるカフェの一隅
070:章 ともすれば秋章だろう人生の歌握りしめ歩いて行かむ
071:老人 他人事と思う長らく他にもれず老人となる我が親たちも
072:箱 深層の抑圧された意識下に潜む私と遊ぶ箱庭
073:トランプ 安心を買わねばならぬ憂き世です吹けば飛んじゃうトランプの城
074:水晶 眠れない夜を重ねるAさんに送ってみたい安眠水晶
075:打 打ってやる直球狙いの一発で人生逆転大ホームラン
076:あくび 窓際にウトウトとする猫と居てあくびをひとつあああシアワセ
077:針 どうしても理解できない構造がナンなんだろう針穴カメラ
078:予想 気がつけば猫が2匹の予想外それすらいつか日常になり
079:芽 手をかけて発芽させたるスミレなら風に向かいて生を誇れよ
080:響 週一度"みなさん毎度"の声響き在日二世松田さん来る
081:硝子 こう見えて硝子のような性格をしているらしくカタイしモロイ
082:整 完璧な整理整頓する女(ひと)の心の奥にドアひとつ見え
083:拝 「すみません、拝見させて頂きます」へりくだるのもイヤミなんだよ
084:世紀 何くれと右往左往の世紀末越えてどうってことなくカオス
085:富 生まれつき虚弱体質母方は越中富山の薬屋である
086:メイド メイドインチャイナに押され気がつけばデフレの谷で喘ぐ日本ぞ
087:朗読 FMの朗読劇のヒロインは老女優なり静寂を聞く
088:銀 笑ってるポートレートの目の狂気つれづれ詩人銀色夏生
089:無理 "無理しない"甘い理想に笑われて無理を重ねて今日をつないだ
090:匂 曇天の湿の匂いにせかされて洗濯すればいつか梅雨晴れ
091:砂糖 砂糖くん、キミの旨味は一匙の塩のお陰で引き立つのだよ
092:滑 上ったら落ちてくだけの滑り台笑っていたか落ちる刹那に
093:落 尾張よりの落人らしと遥かなる母の祖先に吾の弱さ見ゆ
094:流行 赤信号皆で笑って渡るよな流行り病が蔓延したる
095:誤 「医療過誤」過誤では甘し正しくは医療犯罪まかり通りぬ
096:器 見栄子いわく「私は器用貧乏で」なんか不愉快自慢じゃんそれ
097:告白 ユウコさん告白します愛してる ! ツヨシくんより(うちの猫です)
098:テレビ 清濁を併せ呑めよと言い捨てのテレビと暮らす日々の危うさ
099:刺 嫌なこと言われたみたいあの人にローズマリーの刺し芽の尖り
100:題 一題の言葉の向こう 新しい自分に出会う旅を終えます