「私はベッドに寝かされました、そして――うーん―
―そうですね、今でも憶えていますが、その晩は実に恐
ろしい体験をしました。なぜって、私は――私の感じで
は――うーん――私はそのとき――自分が死んだと感じ
たからです。そして、他人が私のベッドのまわりをぐる
りと取り囲んでいる感じがし、その人たちは皆、死んで
しまった人だと思ったのです――そしてその連中はそこ
にいて――皆次のところへ移るのを待っている
……」。

 彼は身体的には死にませんでしたが、彼の「自我」は
死んだのです。この自我−喪失、この死とともに、すべ
てのものが高められた意味と関連性をもつといった感じ
が現れたのです。
(中略)

 「それから私は、この――ほんとうに時間が逆転する
という感じをもち始めました。私の感じは実に異様なも
ので――生きている、いやただ生きているだけでなく
――そのう――感じている、そして――そのう――経験
しているといったものです、私の感じでは或るものに関
係があるすべてを経験しているといったもの――そうで
す、動物の生命とかそういったものに関係があるすべて
のものです。あるときには、私は実際に一種の風景の中
をさまよっているようでした――うーん――それは砂漠
のような風景で――私は動物――それもかなり大きな動
物のようでした。こんなことを言うとばかばかしいよう
に思えるでしょうが、私は一種の犀みたいなものになっ
た感じで、犀のような音を出し、同時に恐怖心ももち、
同時に攻撃的でもあり警戒もしているといった具合でし
た。それから次に――うーん――ずっと昔の時代に退化
し、脳が全然ない生物みたいにただ身をもがいているだ
けの時代にもどり、まりで自分に対立しているものと対
抗して自分の生存のために闘争しているようでした。そ
して――ええと――それから、ときにはまるで赤ん坊に
なったような気持のこともありました――私は――私は、
自分が子供のような泣き声を出しているのが耳に入った
のです
……」。

 「こういった感じはすべて、きわめて鋭いもので――
ええと――現実感があって、そして、同時に私は――私
にはそのことが意識されていたのです。おわかりでしょ
うが、私はまだはっきりとそれを憶えています。つまり
私は、こういったことが自分の身にふりかかっていると
いった意識があったのです――何か漠然とした意識です
が。それで私は自分の観察者でありながら、しかも自分
でそれを経験していたのです
……」。

                                  (同上)

ジェシー・ワトキンズの報告(3)

画題:残念ながら著作権の関係でお見せできませんが、
   具象のなかに抽象が入り交じった画像というと、
   
Wassily Kandinsky (1866-1944)
          Sketch for Composition II (Skizze fur Komposition II), 1909?10.
              Solomon R. Guggenheim Museum.

     がもっともふさわしいのではなかろうか。
     次のURLをクリックして鑑賞してきてください。

       http://www.guggenheimcollection.org/site/artist_work_lg_7121.html

写真:本文とはまったく関係のない代替画像です。
        Bellagio (Tremezzoの対岸)
        14/07/'98