カラコルム・ハイウエイ(2)

                             2007/09/19&20

 あまりにも過酷な現実で、私のような甘
甘の人間には聞くのも耐えられないような
話ばかりだった。

 常に強力な圧力がかかっている地層
ですから、しばしば最大級の地震が発
生する。
2005108日、べシャムの
近辺で発生した地震は
M7.8という巨大
地震だった。なにもかもがずば抜けて
巨大になってしまう地帯なのでしょう。

(ちなみに大正
12年の関東大震災が
M7.8だった。兵庫県南部地震でM7.3。)

 では、皆様御機嫌よう。

国境の町、ススト。二重の虹です。

なんという花かまったく
分かりませんが、妖精の
ような花ですね。標高が
3,000mに近くなると、花
は繊細さが強くなるよう
です。

カリマバードのBaltit Fortにあ
る大砲。背後にウルタル峰。
昔はこの城のすぐ後ろまで氷
河がきていたという。

 だからこの旅行記もしばらくは書くに書
けなかった。

 高度の高い場所だから、花が非常に繊細
な色となる。花でも眺めて苦界の辛さを忘
れましょう。そういう旅だった。

地形でさえもこの苛酷な現
実。カラコルム・ハイウエ
イは左上に見えるが、岩壁
を爆破して辛うじて作り上
げたように見える。自然に
対しての反抗姿勢だ。カリ
マバードの
Altit Fort下の写
真。

ナガール村の老婆。年寄りの
女性の顔は一様に険しい。

 人間はこのような過酷な現実にひ
たすら耐えるものらしい。フンザで
は子供たちが実に可愛いのだが、可
愛いのは子供までであり、女は結婚
すると、農作業を一切背負わされる。
だから、歳をとると、苦痛で顔がひ
んまがるのだそうだ。

 石川信義というひとが、昨年、岩波書店か
ら『鎮魂のカラコルム』という本を出版した。
この内容も凄まじい。登山家が凍傷で手の指
を切断する。その切断の仕方など読むにたえ
ない。
 

 現実は法顕どころではないのだ、現代の人
間はもっといさどく、鋭角的に、チャレンジ
するのだ、とはっきり実感できる。しかし、
そもそも一体
何のためにチャレンジするのだ
ろうか?

顔立ちや肌の白さがパキスタン人と
異なる。アレキサンダー大王はこの
地帯を征服するや必ず、ギリシャ人
の駐屯兵を置いていったという。そ
の駐屯兵の末裔なのかもしれない。

フンザからヒスパー川を遡り、
ナガール村に到着する。家々は
ご覧のように地震で壊れたまま
だ。女性が農作業を行い、男性
はシェルパをして生計を立てて
いるらしい。ひどく貧しい様子
だ。

この山塊の左側に石川氏がそ
の若い日に盟友を失ったクン
ヤンキッシュがある。左手前
に見える白い山塊を左に曲が
ったところにクンヤン氷河が
あるのだろう。ここからは見
えないが。

氷河を上から覗き込むと、このよう
なクレバスの連続だ。登山家はこの
ような氷河を歩き渡るのだ。私には
できない。

 もともと、この地帯はユーラシア
・プレートの下にインド・プレート
がもぐりこみ、その圧力で高山にな
ってしまったのです。
K2という山は
パキスタンの山なのですが、標高は

8,611mもあってエベレストについで
世界第二位なのです。
K2でなくても、
このあたりには
8,000m級の山がごろ
ごろしているのです。
6,000m以下の
「低い」山には名もつけられてい

せん。

 思い出しても、胸がいたくなる旅だった。人様にはあまり
お勧めできないコースかな。

二重丸の場所が地震発生地だ。
崖に構築されていた家はほとん
ど崩れ落ちたらしい。

ナガールの村から振り返って
見るウルタル峰。

カラコルム登山の基地ナガールより見た
ヒスパー氷河。下流のほうは塵で黒ずん
でいるが、すべて氷だ。全く巨大だ。