金箔の製造技術ではまだ改善の余地はあるとはいうものの一物
に二価はありえない。

 世界の金箔価格は中国価格に関連して設定され、生産面でも中
国一国集中化は進行するであろう。


 金沢市の金箔の将来はどうなる?
とノスタルジアに耽ることに
は利益がない。

 金箔にかんする将来の方向性を考えなければならない時期とな
っている。

 皆で考える必要があろう。

 いや、中国箔は完璧な品質を求める日本人には満足を与えない
という人もいる。

 確かに、中国品はピンホールが多い。また、品質にたいする考
え方が違うから
商品の中に穴の明いた箔がまじることもある。
商品の品質についての認識がお互いに確立していないところがあ
り、
そこをバイヤーに付け込まれて、金沢金箔を必要以上に安値
で売ってしまうのが実態だ。

写真:
2002/10/15 中山陵、南京
紫金山(鐘山)の第二峰茅山南麓にある
孫文の墓。

中 国 金 箔 と の 競 合

画像:
箔移し風景
金陵金箔股肦有限公司のbrochureから

 ちょうど四国の今治市のタオルの例で示されるように
国品との間で住み分けすべき、だと考える。

 仲間うちでの金箔製造の闇討ちコスト競争が、江戸時代
以来の金沢市の金箔製造業の発展の伝統と基本であった。
だが、このような箱庭産業時代はすでに終了している。製
造コストで中国と戦っても勝ち目はない。金箔製造業を取
り巻く環境は、経済学的に、決定的に、完璧に変質してい
る。

 このような場合には、誰が技術流出の企画実行者であっ
たかの詮索は一旦横に置き、金沢市の金箔製造関係者が中
国メーカーとの交流を開始して、コミュニケーションをと
れる態勢にする必要がある。

 そして、金沢市の金箔産業の業容を中国と競合しない領
域に限定し、右傾させ、次世代後継者が育成される環境を
緊急に
整える必要がある。具体的には、金箔需要を内側に
抱える複合事業体を創出する必要がある。


 これが金沢市の金箔製造業を永続させる唯一の方法であ
るように見える。
 

  適切な施策を施せば、金沢市の金箔業は近い将来飛躍的
な発展を遂げる、と思われる。

写真:
2002/10/16
夫子廟、南京
秦淮河のほとりに建てられた孔子廟。

 金箔の製造がいままで見てきた
ように労働集約的な手作業の集積
であり、
金箔のコストはその約半
額の金価格をのぞくと、
残りはす
べて人件費と関連する材料と経費
であることを考えれば、
人件費が
日本のそれの
1/10しかかからない
中国では
生産コストが世界で最低
となる。

 この結果、中国の金箔は世界中
の金箔需要を一手に集める結果と
なり、
2002年の段階でその生産量
は年間
2億枚に達し、いまや中国
は世界一の金箔生産国となった。