竜樹による『中論』

 初期の大乗経典である般若経、法華経、浄土三部経、華厳経などは、
原型のできたのが紀元前後頃、ないしはその少しあとで、その後、大天
才といわれる竜樹(ナーガールジュナ、
Nagarjuna)という人が、西暦
150-250年頃インドに出現し、大乗仏教の論理を確立した。龍樹について
は、長くなるから、
Wikipediaを参考にしていただくとすることにしましょ
う。昔のことであまり詳しくは来歴がわからないのです。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AB%9C%E6%A8%B9

 今現在日本で入手可能なもっとも詳しい解説書は、私の考えでは、

              『龍樹・親鸞ノート』三枝充悳、宝蔵館 1997

だと思います。メモを作ってありますので一度目を通しておいてくださ
い。内容が難しいので、内容とはまったく関係のない写真を加えて、写
真集仕立てとしてあります。

写真:
      花
      なんという花か知りません。
          20059月撮影。

写真:
獅子狩文錦(ししかりもんきん)国宝
中国 隋時代
絹製
丈 250.0cm 幅 134.5cm
大宝蔵殿
日本美術全集 第二巻 
『飛鳥・白鳳の
美術』法隆寺と斑鳩の寺

鈴木嘉吉、学習研究社 1978

円文の内には果樹を中心にして有髯(ゆ
うぜん)の武人が翼馬にまたがり、襲い
かかる獅子に向かって弓を射る狩猟文を
上下二段に向きを変えてあらわしている。

ササン朝からもたらされた錦を模してつ
くったものではないか。

 三枝充悳氏の『龍樹・親鸞ノート』は実にうまく簡潔に記載されていて、
P53まで読めば、ほかのいかなる解説書よりも物知りになれる、と思います。


 彼はまず、

1.
              八不
の解説からはじめ、
              縁起」−「無自性」−「
の系列を述べ、
              「観燃可燃品」における「薪(まき)と火」の譬え
を実に要領よく解説する。


2.
 ところが、龍樹の『中論』はここで突然飛躍して、
              世俗諦・・・言葉を用いて明らかにされる真理
             
              勝義諦・・・ニルヴァーナ − 涅槃・・・言葉のない最後の悟
           りの世界

に跳躍してしまう。

  1.の論理と2.の境地のあいだの関連性の説明がされていない、だから困る、
ときわめて明快に問題点を指摘されている。


 参考書としては

 『龍樹・親鸞ノート』三枝充悳、宝蔵館 1997
のほかに、
 『宇井伯寿著作選集4』宇井伯寿、大東出版社 1968
 『中論の頌』平川彰 訳、世界古典文学全集 第七巻 中村元 昭和40


など、沢山あるのですが、三枝論文以外は、お読みになっていただいても、
意味がさっぱりわからないはずです。訳者自身が、本当は「わからない」の
に、「わかったふり」をしているからかもしれません。この点、三枝論文は
きわめて明快で、信頼がおけます。


 この『中論』は鳩摩羅什の漢訳本がありますから、聖徳太子の時代の日本
でも、太子のお手元には届いていたはずだとおもいます。