経 験 の 必 要 性
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Where Do We Come From? What Are
We? Where Are We Going?
Boston,
Museum
of Fine Arts
純粋経験Aならびに純粋経験Bをみずから経験す
る必要はない。
私たちはそろそろこの論文を締めくくらねばな
らない時点にやってきた。
筆者が、Aだ、Bだ、と読者に新しい観念を与え
て、Aの状態はこう、Bの状態はこう、とお話して
も、経験しないものは信ぜられないと経験主義を
標榜される方が大部分だろう。筆者は(A+B)混
合論を押し売りするものではないのだが、少なく
ともAオンリーのoptimistic dogmaよりは(A+B)混合
論の方が人間性を理解しやすいし、このモデルの
方が人間の直面しうる最善と最悪の精神状態をよ
り丁寧になぞることができる、と考えているのだ。
だが読者が、仮に筆者の唱える(A+B)混合論を理解して下さっても、
そのご理解になんの価値があるのだろう。記述したとおり、(A+B)混合
論の世界に絶対価値と絶対基準はもはやないのである。女性にとってみれ
ば、安心して倚りかかることのできる男性が居ることは正しく価値である
が、人間にとって安心して倚りかかることのできない哲学など無用の長物
なのだ。
諸君、にも拘らず筆者は主張する。数学の問題を解くときに方程式があ
ればより簡単に問題は解ける。そして新しい方程式を用いて問題が解けれ
ば、今までわからないといって頭を悩ませてきた苦労は過去のものになる。
つまり、この論文の主目的は、過去の種々の人たちの経験を通して、人間
性の理解のための雛形を作ってみたということに過ぎない。
この雛形より導き出される結論が、
理性で理解できる
自分で納得できる
合理的で
かつ
合目的的
であれば、これに従えばよい。