私の考えでは、現代人にたいして最良の辞書を提供してくれるのは、18世紀の英国人歴史家エドワード・ギボンであり、彼の著書『ローマ帝国衰亡史』であろう、と思っている。『ローマ帝国衰亡史』については、近年中野好夫氏による、それこそ「学殖を傾けつくした」立派な翻訳本が出来上がっており、この秀麗な参考書を完全に理解することにより、アウグスティヌスも自動的に理解できるようになる。

アウグスティヌス

 アウグスティヌスについては、他の項目と同じようにすぐさま解説をはじめたいところだが、なかなかそうはいかない。彼の暮らしていた時代背景が頭に入っていないと、完全な理解に到達できない。たとえば彼の『告白』を読んでも、告白の頂点で「奇蹟」が問題を解決してくれるのだが、現代人はこの「奇蹟」などというものは信じていないから、(もっともカトリックでは今でも、「奇蹟」が宗教上の最重要ポイントのひとつになっているのだが)、どのように対処すればよいのかわからないまま取り残される。つまり、この『告白』を読むには、現代語に翻訳するための「辞書」が必要になる。

 前置きはさておいて、アウグスティヌスに移ろう。

 ⇒ アウグスティヌスの時代背景
 ⇒ アウグスティヌスの神秘体験A
 ⇒ 自己矛盾の整理の仕方
  ⇒ 神秘体験Aは自己の全体を構成するか。
  ⇒ 悪心の除棄法−アウグスティヌスの場合
  ⇒ 回心の妥当性
  ⇒ 奇跡という名のショートカット(ギボン)
 ⇒ イエス・キリストのプラトン化

写真: サン・ガルガーノ修道院、
         Abbazia ed eremo di San Galgano
         2001年5月撮影

     サン・ガルガーノ修道院と
     アウグスティヌスとの間に
     なにか関係があるか?
     わたしは知らない。
     多分なにもないだろう。

     ただただ静かな、心洗われる場所である。