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妖怪連句『1』

   もけもけ歌仙「箒の魔女」の巻            矢崎硯水捌

虹わたる箒の魔女の見え隠れ         矢崎 硯水

サングラスして仰ぐ一つ目         児玉 俊子

垢舐(あかなめ)が環境フェアに招かれて   吉本 芳香

長靴履きの化け猫もくる          田村 昌江

けつまずき月のお暈をふっ飛ばし       矢崎 妙子

おじゃんとなりし虫の演奏            硯水

ウ  凄まじき世にセコムする厠神(かわやがみ)     俊子

浦島太郎介護申請                芳香

びっくらの仕種いかにも芝居めき          昌江

笑い般若に藪睨みされ              妙子

毛もつれのエルフ寝乱れしどけなく         硯水

熱きベーゼに燃える火の玉            俊子

月冴ゆる庭においおい夜泣き石           芳香

亡き児に似たる雪達磨あり            昌江

謎解けず心の迷路どこまでも            妙子

NASA発ちてよりいそがしが憑き        硯水

天涯にアポロン奏づ花ポエム            俊子

フェニックス舞う長閑ろかな昼          芳香

ナオ マグマ沸きおどろおどろの春の海          昌江

南無三宝と印を結んで              妙子

自来也はソース顔なる男前             俊子

恋の煉獄「なめくじの技」            硯水

猛暑でもET君は遊び好き             昌江

出臍をねらう虎褌(とらふん)の雷        妙子

騒がしくトランポリンの霊が跳び          芳香

サイバーステース旅をしょうよ          俊子

舟盛りの若狭人魚が売りの宿            硯水

月の客には河童連衆               昌江

かりがねは整然として鉤十字            妙子

迷宮殿は冷やかに建ち              芳香

ナウ 妖怪のオリンピックはすぐそこに          俊子

武者震いするメディアゴースト          硯水

大口をたたき竜巻飲むんだと            昌江

お歯黒べたり漫ろ歯が浮き            妙子

見晴るかす崑崙(こんろん)花の万朶なる      芳香

ふらここを漕ぐ悟空・八戒            俊子

☆2000年9月15日首尾

 

   鬼魅鬼魅歌仙「置行堀」の巻    矢崎硯水捌

笹藻さも置行堀は淋しうて          矢崎 硯水

吸ひ寄せらるる鵺の鳴く方         八尾暁吉女

せこどちの地獄ツアーに集ふらん       沖津 秀美

ドラえもんにも携帯のナビ         児玉 俊子

飛び交ひし諜報網にかかる月         本屋 良子

小豆洗いが小豆しょきしょき           硯水

ウ  諸霊祭厚化粧なる卑弥呼様            暁吉女

世の大乱を告げる夢占              秀美

彼の地には異類婚姻はやりとか           俊子

鳥籠に飼ふ彼はハンサム             良子

パンジーの粒と並べてエルフの矢          硯水

お金の亡者任務忘れて             暁吉女

寒の月送り提灯ふらふらと             秀美

狸囃子の遠く近くに               俊子

おとろしが酒気運転のハイウェー          良子

キジムン見んと沖縄の旅             硯水

門番に赤鬼のたつ花屋敷             暁吉女

よなぐもりして鳴らぬ鳴釜            秀美

ナオ 侏儒たちはやどかりの宿レンタルし         俊子

町ふみ倒すガリバーの靴             良子

白呪術やめてけふから黒呪術            硯水

あっといふまに手足透明            暁吉女

物干しにのっぺら坊の海水着            秀美

ジュラパークには九色の虹            俊子

龍王に魅入られたるが運のつき           良子

小雨を孕む蛇の目姐さん             硯水

ストーカー許さぬ道のキャッツアイ        暁吉女

コンビニ前に化け地蔵立ち            秀美

琵琶べんべん桂男のお出ましか           俊子

木の葉山女となりし山姥             良子

ナウ ITの雀ドロンで蛤に               硯水

パワー過剰も欝の元です            暁吉女

死口に父母現れて呼びたまひ            秀美

三途の川の汚染嘆きつ              俊子

東西の化け物つどひ花の宴             良子

画霊うららな猩々の像              硯水

☆2001年10月5日首尾

 

 

   びっくら歌仙「子狸」の巻     矢崎硯水捌

子狸や初手は木の葉のお札より        矢崎 硯水

空ッ風吹き元の杢阿弥           冨田一青子

そこここに百面相が跋扈して         永見 徳代

まじまじ頃はラッシュなりける       矢崎 妙子

宇宙船月見学の流行るらん          田村 昌江

精霊ばった函にひそめし          東浦 佳子

ウ  酒も出すお化け屋敷の文化祭         児玉 俊子

たてがみ分けて持てる水棲馬(ケルビー)     硯水

モンローもクレオパトラも嫁候補         一青子

にんまり笑う石膏の像              徳代

日栄は「目玉・腎臓売れこら!」と         妙子

雀の涙金銀となれ                昌江

赤帝は月を丸ごと焼き尽くし            佳子

河童団扇は涼を呼ぶとか             俊子

ノブ廻る音がして開く開かずの間          硯水

祟りの神が鎮座まします            一青子

眠りからまだ覚めやらぬ花の精           徳代

ずんべら坊の好きなブランコ           妙子

ナオ ゴーストは陽炎さんにおんぶして          昌江

怪獣探しのぞく湖                佳子

鬼太郎が図鑑事典を必携に             俊子

ヤマンバ姫の遊ぶかまくら            硯水

逢引に座敷童の春着とは             一青子

おびんずるさま機嫌損ねし            徳代

二枚舌シュークリームを舌にのせ          妙子

油が切れて消える行灯              昌江

化けられぬ病気の猫の呻きつつ           佳子

狗尾草(えのころぐさ)は尻撫での悪      一青子

芳一の琵琶びょうびょうと月の海          俊子

卍染め抜く紋の冷やか              妙子

ナウ 噴射式タイムマシンで異次元へ           硯水

小人の国の首相あたふた             徳代

連立の鼠は逃げて最後っ屁             佳子

千鳥足して残る鴨どち              昌江

いなせぶり置行堀に夜の花見           一青子

魑魅魍魎をつつむ春靄              俊子

☆2000年5月3日首尾

 

  ろりろり歌仙「UFO」の巻      矢崎硯水捌

UFOは麦藁帽のかたちなり           矢崎 硯水

金縛りから醒めて涼風             高山 紀子

鳥葬にガンダンの笛鳴り出して          山本 秀夫

宝樹のもとで開く吟行             吉本 芳香

鏡文字たどれば月の亭ならん           矢崎 妙子

へっぴり虫のきつい一発               硯水

ウ  砒素(ひそ)入りのカレー召しませ踊の輪        紀子

女怖いと逃げる震々(ぶるぶる)           秀夫

いまさらとお歯黒べたりにた笑い            芳香

猿の電車でフルムーンとか              妙子

バーチャルの山はリアルでのぺらぽん          硯水

ちらと振りむく黄泉の人たち             紀子

三界はまほろばならず冴ゆる月             秀夫

風邪にて伏せる福の神様               芳香

しめしめと座敷わらしの盗み酒             妙子

ここを先途と舞首がとび               硯水

花陰にサロメのすがた悩ましく             紀子

尻ひくつかせ牛虻の王                秀夫

ナオ 自自公の会議にきしむ喜見城              妙子

ペガサスに乗り急ぐ番記者              芳香

行灯を舐め筆をなめ升目埋め              紀子

婿にほれぼれ嫁が君どの               硯水

橋姫に変身せんと初湯浴み               秀夫

憑き物落とすしぐさ念入り              妙子

音もなく精霊風がたたく窓               芳香

自然木乃伊の眠りしんしん              紀子

オーロラの空のかなたに魂遊び             秀夫

凄まじきまで蒼きドラゴン              妙子

「月光の曲」の音符に烏瓜               硯水

百鬼めかして重陽の宴                芳香

ナウ バカチョンの写真はみんな岩の顔            紀子

夕暮れ迫りいたこ口寄せ               秀夫

ふんわりと天の羽衣舞い降りて             妙子

ちりめんじゃこは目玉ぱちくり            硯水

夢霊(むれい)さと旅は道づれ花の島          芳香

馭者(ぎょしゃ)も麒麟もかぎろいの中        紀子

☆1999年9月26日首尾

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  おおどろ歌仙「のぺら坊」の巻    矢崎硯水捌

蚊遣火の底より生るるのぺら坊         矢崎 硯水

黴の香さげて来たる古庫裏婆(こくりば)   山本 秀夫

おいてけと堀の内より声のして         渡辺 梅子

肝試しなるチェックポイント         久我 妙子

月光もおどろおどろの黄泉ならん        高山 紀子

百目どれもがこちら見る秋             硯水

ウ  「はっけよい」妖怪ランド寄相撲           秀夫

ろくろっ首は娘島田で               梅子

真実の愛が魔法を解いたとか             妙子

骨の髄までどうぞ召しませ             紀子

左利きで鋏をつかうカニ坊主             硯水

一反木綿不安げな顔                秀夫

餅搗けば餅撥ねさらに月兎跳ね            梅子

バイキンマンが風邪を土産に            妙子

パーティのメインディッシュの髪魚(はつぎょ)これ  紀子

二口女尽きぬお喋り                硯水

今日だけは地獄針山・花見山             秀夫

大蛤が吐ける楼閣                 梅子

ナオ にんにくに慌てて逃げるドラキュラー         妙子

韋駄天小僧脇をすり抜け              紀子

掏られたる旅銀「金霊たのみます」          硯水

貧乏神が勢揃いして                秀夫

エアコンに着たきり雀胴震い             梅子

天井なめは蜘蛛の巣を舐め             妙子

黒玉がいつの間にやら忍び込み            紀子

思われニキビ噴火寸前               硯水

恋語るコロポックルは草の陰             秀夫

逢魔が刻の生臭き風                梅子

月の杜呪いの釘を打つは誰?             妙子

祠のはたにヤブレベニタケ             紀子

ナウ ITも不況をかこち蛇穴へ              硯水

してやったりと笑うウイルス            秀夫

旅人の目鼻を塞ぐ野鉄砲               梅子

いやみひょこひょこ春の城下に           妙子

怪しげにきしむ車の花の屑              紀子

高天原は亀の鳴く頃                硯水

☆2001年9月18日首尾

   妖怪歌仙「河童」の巻      矢崎硯水捌

河童棲み淵なすところ月涼し        矢崎 硯水

鵺おどろしく生臭き風          冨田一青子

大魔王紳士の仮面脱ぎ捨てて        東浦 佳子

隣の人に混じるET           近藤 蕉肝

はじめての妖怪サミット開かんと      沖津 秀美

透明の手でパンフ渡され         田村 昌江

ウ  うらめしと戸板返しのお岩殿           硯水

魂はゆらりとすれ違ひつつ        矢崎 妙子

あだし野は狐火つらね小糠雨        吉本 芳香

閻魔好みの黄泉のミスコン           蕉肝

艶やかな美女が操る二枚舌         永見 徳代

蛸入道もどぶろくに酔ひ         本屋 良子

波しぶき真珠に変へて登る月        吉池 保男

フェアリーの弾くハープ爽やか         佳子

手踊りの物の怪出でて金縛り        牛山 悦男

黒木の御所に集ふ式神             秀美

盛り上がる天狗俳諧花の下         児玉 俊子

尻尾隠さず日永つちのこ         矢崎 高史

ナオ 親子連れのっぺら坊の遍路笠           芳香

金霊落ちる裏の竹薮              良子

テレビではネス湖が荒れてネッシーが       妙子

箒を飛ばし野次馬の魔女            秀美

弔ひに白無垢着たる天邪鬼           一青子

がしゃどくろつい惚れてしまって        俊子

花子さん厠にこもり蒸し暑く           佳子

呪文を唱へ蛆をやっつけ            徳代

ひゅるひゅるとハーメルンの笛聞こえ来る     秀美

キノコの城で木の実ケーキを          硯水

騙されてゐるとも知らず月の舟          良子

怒り凄まじ龍の目ン玉             妙子

ナウ ミサイルにやをら起き出すスフィンクス      俊子

謎を解きつつタイムトラベル          芳香

疫神を除ける古文書探し当て          一青子

囀り石が揺らす鞦韆              俊子

花大樹花咲の爺見栄を切り            秀美

瑞雲かぶり笑ふ山並              芳香

☆1998年6月16日首尾