受 賞 作 品

メニューへ戻る


芭蕉翁顕彰連句大会 入選作品 平成27年
     
脇起半歌仙「硯かと」の巻      矢崎硯水捌
   硯かと拾ふやくぼき石の露         芭蕉翁
     まらうど迎へ浦の観月        矢崎 硯水
   竹籠に色草むざと活けられて      吉本 芳香
     澄まし貌なる膝の狆ころ       三神あすか
   里山のベンチでしばし微睡まん        硯水
     撫でるが如き涼やかな風          芳香
ウ 祇園会の稽古囃子に浮き浮きと       あすか
     羽目を外して付け睫毛飛び         硯水
   ドンベリの酔ひが言はせたうふふのふ     芳香
     愚妻相手にLOVEの百乗        あすか
   「違憲」ではないと弄する二枚舌       硯水
     兎と亀のかりそめの夢           芳香
   月光ゲは雪見障子へ惜しみなく       あすか
     児啼爺の映り込む影            硯水
   健やかに老いる体操ヨガ擬き         芳香
     風土記の旅の準備整ふ          あすか
   瀞にきて流れあやなす花筏          芳香
     李白がわたる初虹の橋           執筆

        2015年6月 7日起首
        2015年6月16日満尾

脇起半歌仙「此の宿は」の巻      矢崎硯水捌
   此の宿は水鶏もしらぬ扉かな         芭蕉翁
    文字摺活けて開く俳席         矢崎 硯水
   絵タイルの道は波止場に続きゐて     山口 安子
    焙煎の香のほのと漂ひ         渡邉 常子
  耿耿とくまなく照らす月今宵       大江加代子
    ふいに現れいとど髭振り        矢崎 妙子
ウ 五右衛門のいよよ釜茹でそぞろ寒        硯水
    有為転変の浮世なるらん           安子
  マグカップ夢の一字を焼き付けて        常子
    アモーレミオと呟いてみる         加代子
  地味婚の果ての仕合はせ大家族         妙子
   窓の外には冬芽びっしり           硯水
  鐘撞けば月冴え冴えと池に落ち         安子
  
腹をかかへて笑ふ山姥            常子
  はっけよい肥後犬ころり投げ出され      加代子
   久方ぶりの旅の見聞             妙子
  千木までも覆ふばかりの花万朶         常子
   復興願ひ仰ぐ初虹              執筆

     2015年6月 1日起首
     2015年6月21日満尾

  芭蕉翁顕彰連句大会 入選作品 平成26年

脇起半歌仙「須磨明石」の巻      矢崎硯水捌

かたつぶり角振り分けよ須磨明石        芭蕉翁

 彩り変はる紫陽花の毬          矢崎 硯水

子どもらは宇宙飛行士夢に見て       三神あすか

 スマホを遣ふ技の速さよ         吉本 芳香

ペンションの玻璃に弦月映るらん         硯水

 隠沼ありて馬追の声             あすか

ウ 菩提寺に平癒を祈るそぞろ寒           芳香

道の往き来も恋歌案ずる            硯水

   口説きには慣れて靡かぬ姐御肌         あすか

 張子の虎は首をふりつつ            芳香

フラスコのSTAP細胞有か無か         硯水

 サファイア色を帯びる酢海鼠         あすか

燗酒に浮かぶ満月飲み干して           芳香

  異国の旅の旅愁しみじみ            硯水

悪戯の好きな妖魔に憑りつかれ         あすか

 おたすけ稲荷参拝の列             芳香

ひこばえの花の香まとふ花衣          あすか

 李白が化して舞ひ遊ぶ蝶            執筆

      2014年6月30日首尾


   2014 リンクト・ヴァース・コンテスト受賞  平成26年

十二詩潮「ピカソ自画像」の巻     矢崎硯水捌
A面

暮れ泥むピカソ自画像は何を視る      矢崎 硯水

 花もまばらな青の時代          嵯峨澤衣谷

背の羽を煌めかせつつ舞う天使       山口 安子
B面

 瀑布の雫に濡れる山脈          佐藤ふさ子

猿飛の風きて浮世を浮遊せん        矢崎 妙子

 PM警報の針は振り切れ            衣谷
C面

街中の眼鼻口閉じウォンテッド         ふさ子

 一寸法師の月影は伸びて            妙子

わが旅のどこでもドアを開け放ち         硯水
D面

 海賊どもが転がす地球儀            衣谷

五頭立ての馴鹿(となかい)跳ばす雪の原      安子

 カノン奏でるヴィオロンとチェロ       ふさ子

       2014年作品

形式「十二詩潮」について(バージョンアップ版)
A面・B面・C面・D面の四つの面の長短12句からなり、発句は当季で詠み、季節順に各面に一句ずつ季語を入れる。夏は「任意」、冬は「雪」、秋は「月」、春は「花」を詠む。四季によって連句の骨頂を残し、十二句の言葉の響きあう詩潮(ポエトリー・タイドゥ)を最大限に重んじ、疎句を以て非日常の万象に迫る。一句立ての詩情、四つの面の「三句の渡り」を尊ぶ。

 第67回芭蕉翁献詠連句入選(平成25年)

脇起半歌仙「雲雀より」の巻     矢崎硯水捌

  雲雀より空にやすらふ峠哉         芭蕉翁

   茶屋の媼のひさぐ草餅        矢崎 硯水

  登り窯煙を上げてうららかに      矢崎 妙子

   汽笛残して汽車は遠のき       嵯峨澤衣谷

  新任の誓ひを月に立てるらん      佐藤ふさ子

   門の脇には色変へぬ松           衣谷

ウ 虚無僧へ喜捨を弾んで秋逝かす        硯水

   雑記帳へと旅のかれこれ         ふさ子

  切れ長のこけしに君を思ひ出し        衣谷

夢で逢ふとき確りとハグ          妙子

  故障した介護ロボットドック入り      ふさ子

   阿漕ヶ浦の蟹も横這ひ           硯水

  月光のかけらきらめく涼み船      山口 安子

   しゃれた酒壺傍らに置き          妙子

  機嫌よく好きな寿限無を捲したて       安子

   初孫を抱きお宮参りに           衣谷

  匂やかに咲きも咲きたり花万朶        安子

   角を落してぴいと啼く鹿          執筆

     2013年5月20日起首  2013年7月7日起首

   第七回浪速の芭蕉祭受賞(平成25年)

  スワンスワン「ががんぼよ」の巻    矢崎硯水捌

壱面 ががんぼよ微分積分解く気分       矢崎 硯水

    漸近線のような葉柳          嵯峨澤衣谷

   手造りの胡粉を和紙に掃き立てて     澁谷 盛興

思いがけない客が訪れ         佐藤ふさ子

黒猫の眼は望月に光るらん        軍司 路子

案山子の影の揺れる畦道        高山 紀子

弐面 里人に追われこそ泥ひそむ寺          硯水

    GPSで居場所突き止め           衣谷

   引けば押し押せば引くのが恋の技        盛興

    男の仮病に敢えて騙され          ふさ子

   嬰児を真似て母乳をさぐり泣き         路子

オノマトペアは文芸の贅           紀子

   懐中に路銀ジャラジャラ神の旅         硯水

    月白の空よぎる寒雁             衣谷

   温暖化動植物も狂いがち            盛興

    山梨リニア試乗会へと           ふさ子

参面 邂逅にワイングラスの触れる音         路子

    記憶のままの故郷の湖            紀子

   稜線は利久鼠に濡れそぼち           硯水

    名高き絵師は筆を選ばず           衣谷

   侘住みにどっと吹き込む花嵐          盛興

    万愚節とて方便の嘘             執筆

      平成二十五年六月二十日首尾

形式「スワンスワン」について

アラビア数字22(句数)を二羽の白鳥に見立てる。春秋二句から三句。夏冬一句から二句。二月一花一鳥(鳥は非定座)。恋二句から三句(弐面か参面)。三つの面による序破急。


      2013 リンクト・ヴァース・コンテスト受賞
平成25年

十二詩潮「少年は老い」の巻     矢崎硯水捌
A面 

水切りの小石飛ばして少年は老い    河童

 ごろた縄にも引っ掛かる玉響     うみ

塞翁が馬いななけば今日の月      もくれん
B面

 留学生を迎えシャンパン       もくれん

無神論は地平線へと旅つづけ      河童

 ブルカ脱ぎすて放つ鸛        ディジー
C面

手品師が指を鳴らせば花の束      衣谷

 肝臓移植し角膜も植え        うみ

山折りと谷折りの過去なじゃもんじゃ  河童
D面

 宙吊りされたグランドピアノ     衣谷

雪の精オーロラのベール翻し      ディジー

 金銀積めばかしぐ方舟        河童

    2013年5月14日首尾
形式「十二詩潮」について
A面・B面・C面・D面の四つの面の長短12句からなり、捌手や連衆の自由な発意で、任意な面に「雪」「月」「花」を詠みこむ。それ以外は季語なし。雪月花によって連句の骨頂を残しつつ、十二句の言葉の響きあう詩潮(ポエトリー・タイドゥ)を最大限に重んじ、疎句を以て非日常の万象に迫ろうとする。一句立ての詩情、四つの面それぞれの「三句の渡り」の変化を尊ぶ。


         第六回浪速の芭蕉祭受賞(平成24年)

  スワンスワン「無何有の郷」の巻  矢崎硯水捌

壱面 夕されば無何有の郷の亀鳴きぬ         矢崎 硯水

    瓢を播いて千成の夢             三神あすか

   新築のヴィラの大きな窓開けて            硯水

    誰が弾くのかピアノ連弾             あすか

   いざよひの月現はるる頃ならん            硯水

    案山子の並ぶ鄙の海道              あすか

弐面 竹庵は雀羅を張って寝て候              硯水

    文房四宝猫が跳び越え              あすか

   振り向けば匂ふばかりの若衆髪            硯水

    法螺吹きなれど手管甘やか            あすか

   くっさめをつづけ遊ばす大阿闍梨           硯水

    冬青空にうかぶ繊月               あすか

   淋しさにロボット犬を買ふてみん            同

    南極めざしバーチャルの旅             硯水

   赤ちゃんと児啼爺との泣き比べ           あすか

    とんとん囃す七草の音               硯水

参面 歳徳神崇めをろがむ有馬富士            あすか

    銀糸にも似た雨も上りて              硯水

   マジシャンの指が生み出す白小鳩          あすか

    緑酒酌み交ふ刎頚の友               硯水

   しろがねの人魚も痩せて花氷            あすか

    泉のほとり過ぎる刳舟               執筆

平成24年5月7日首尾

形式「スワンスワン」について。

アラビア数字22(句数)を二羽の白鳥に見立てる。春秋二句から三句。夏冬一句から二句。二月一花一鳥(鳥は非定座)。恋二句から三句(弐面か参面)。三つの面による序破急。

 



       第六回浪速の芭蕉祭入選(平成24年)

  スワンスワン「酔生夢死」の巻    矢崎硯水捌

壱面 ぼうふらの酔生夢死の浮沈かな          矢崎 硯水

    たらい舟漕ぐ蓴菜の池             三神あすか

   百号の画布のイーゼル組み立てて         渡邉 常子

    ワイン片手に訪れる友             吉本 芳香

   懐かしの校歌朗々歌うらん            嵯峨澤衣谷

    雲行き過ぎて昇る名月             山口 安子

弐面 しんしんと閻魔の庁のそぞろ寒             硯水

    可視化進んで明けっ広げに           矢崎 妙子

   地球から電波で探るビッグバン          澁谷 盛興

    テレパシー以て契り合う愛           佐藤ふさ子

   もて男年貢納めのときと決め           八尾暁吉女

    偏食癖は膏肓を出ず                あすか

   摺り上げし雪見障子に月射して            ふさ子

    分福茶釜しっぽ覗かせ                硯水

   トップ屋のやっと掴んだ特ダネは            衣谷

    マリオネットの縺れたる糸              芳香

参面 風やめば波も静もり逆さ富士             あすか

    旅先にみる鳳凰の影              大江加代子

   勾玉で占う巫女の緋の袴                安子

    卒業近く心晴れやか                 常子

養花天三三五五と茣蓙の陣              あすか

    李白の化した蝶蝶の舞                執筆

       平成24年7月12日首尾

形式「スワンスワン」について。

アラビア数字22(句数)を二羽の白鳥に見立てる。春秋二句から三句。夏冬一句から二句。二月一花一鳥(鳥は非定座)。恋二句から三句(弐面か参面)。三つの面による序破急。




       えひめ俵口連句大会大賞 二巻 (平成23年)

歌仙「星の刺繍」の巻             矢崎硯水捌

   蜘蛛の巣が紡ぐは星の刺繍なり        矢崎 硯水

汐の香を乗せよぎる涼風          山口 安子

ジョギングの少年息を弾ませて        渡邉 常子

ヘッドホンにて音楽を聴き         矢崎 妙子

観月の支度整うころならん          大江加代子

尻張りのよき猿酒の壷              硯水

ウ  爽やかに祝詞をあげる宮司様            安子

背ナに感じる熱きまなざし            常子

ようやくに彼のハートを射止めたる         妙子

栗鼠出迎えるメルヘンの旅           加代子

   八百もあるから一つ嘘どうぞ            硯水

    聞いても見てもここは極楽            安子

   半月の弦のこぼれも深雪晴             常子

    どこからとなく笹鳴きの声            妙子

   登り窯奈良三彩を復元し             加代子

    慶事が続く鬚をしごけば             硯水

   爛漫の花曼荼羅の尊さよ              安子

    朧となりて紅きぼんぼり             常子

ナオ 蹌踉いて波紋を追うて残る鴨            妙子

    死亡届を出せと遺言              加代子

   火の玉の取扱いの許可下りず            硯水

    ドバイあたりが燐の買占め            安子

   カルメンのような悪女と知りつつも         常子

    喃語むにゃむにゃ抱籠を抱き           妙子

   肝病みに土用蜆の御ン見舞            加代子

    上がり框にちょこなんと猫            硯水

   飾り棚木偶人形が畏まる              安子

    記念撮影顔を揃えて               常子

   城閣にくっきり浮かぶ望の月            妙子

    団栗ころりまろぶ石段             加代子

ナウ ハロウィンのとんがり帽に襤褸の服         硯水

    明日の天気をコイン占い             安子

   清掃に老いも若きも狩りだされ           常子

    裏山からの流れ温みて              妙子

   思い出を蘇らせる花篝              加代子

    李白の詩句を口遊む春              執筆

      2010年7月23日起首

      2010年10月12日満尾

   

歌仙「竜宮」の巻               矢崎硯水捌

   海月つと流れ竜宮指呼ならん         矢崎 硯水

    卯波ゆったり遥か沖合           山口 安子

   大窓を開けてシャンパン栓抜きて       三神あすか

    バンド演奏テンポよろしく         澁谷 盛興

   しらじらと狭霧ただよう望の夜        大江加代子

    刈入れ近く垂れる稲の穂          渡邉 常子

ウ  うそ寒く鼠小僧の晒し首              硯水

    忍者くノ一髪を下ろせば          嵯峨澤衣谷

   柴折戸の人の気配にときめける        吉本 芳香

    尻尾を振って甘え寄る猫          八尾暁吉女

   傾いて釣り合い悪き弥次郎兵衛        矢崎 妙子

    抜けた乳歯を投げる年の瀬         佐藤ふさ子

   痛そうな冬繊月が山を突き          山川逸仙人

    石のアーチを潜るゴンドラ            衣谷

   ヴェネツィアの旅のアルバム捲りつつ        芳香

    九官鳥が真似る民謡              ふさ子

   瑞雲を被けるごとく花の杜            あすか

    駘蕩として揺れる風船              盛興

ナオ 香を聞く会に招かる目借り時            妙子

    痺れ切らしてと見こう見する           常子

   約束の合図気づかぬ呆気者            暁吉女

    押し出しよいがマシュマロの彼         加代子

   サイボーグ抱擁すればショートして        ふさ子

    まぼろしの渓なぞの滝壺            暁吉女

   胡瓜以て河童生け捕る仕掛けあり          硯水

    かごめかごめの子等の唄声            芳香

   お地蔵は左手に宝珠ささげ持ち          あすか

    達者倶楽部はきょうも盛況            盛興

   寄せ書きの筆も鮮やか月の宿            芳香

    千草八千草抛込みにする            加代子

ナウ 蓑虫はもののあわれの美学にて          あすか

    貧乏神を映すウインドー            ふさ子

   白黒がオセロの如く入れ替わり           衣谷

    趣のある麗らかな景               常子

   花守は猩猩舞いて得意顔              安子

    伊予の訛をはこぶ陽炎              執筆

       2010年7月18日起首

       2010年12月25日満尾

     


    「えひめ俵口」連句大会大賞 (平成21年)

歌仙「自然薯の」の巻               矢崎硯水捌

   自然薯の髭さおいらの人生は          矢崎 硯水

    肩に担ぐは上弦の月             吉本 芳香

   運河ゆく船の汽笛の爽やかに          城  依子

    挽きたてがよきコーヒーの店         渡邉 常子

   ベレー帽かぶり似顔絵描くらん         小山 柚香

    杖突虫は枝を弛まず             三神あすか

ウ  賞罰のなき身ながらも閻魔市             硯水

    盗んだ恋は内密にして            八尾暁吉女

   軒先の笊は亭主のいる合図              柚香

    圧力釜が蒸気ぽっぽと            矢崎 妙子

   北端をめざし鈍行ひとり旅           山川逸仙人

    痩せた狐は即かず離れず           佐藤ふさ子

   雪月夜シャッターチャンス到来し        大江加代子

    勇むばかりにライブ会場           山口 安子

   青春の抜け殻いまも大切に             暁吉女

    傘寿と卒寿酒は二合半                同

   金色の旭まばゆき花浄土              あすか

    琴弾鳥の琴の巧さよ                 同

ナオ 読み止しの放屁論あり炉の名残            硯水

    なべて此の世はビッグバンから            同

   産まれ立てすやすや眠るベビーちゃん         芳香

    拳のなかに大いなる夢                同

   外つ国の砂漠化とめて万緑に            ふさ子

    魔法教えてくれよ古代魚               同

   時空越えわたしはいつか風になる           依子

    晴れ着あでやか女正月とて              同

   繭玉が揺らぐそのとき出逢いしが           常子

    鏡の奥に想い切なし                 同

   待宵のあかり仄めく甕の水              妙子

    墨絵ぼかしに秋の山並                同

ナウ うそ寒くピサの斜塔の影を踏む           逸仙人

    バッグのなかにカメラ・熊の胆           安子

   良寛の草書のごとき雲流れ             あすか

    ひいふうみいと紙の風船              柚香

   盛られたる馳走に花のはんなりと          加代子

    湖のほとりの麗らかな苑              執筆

2008年8月8日起首

2008年12月1日満尾

河童連句会


           第二回浪速の芭蕉祭大賞

スワンスワン「落し文」の巻           矢崎硯水捌

壱面

うぐひすの付句なるらん落し文        矢崎 硯水

     涼しき風の運ぶ言霊            矢崎 妙子

    海望むカフェに憩ひて和やかに        吉本 芳香

     リズムに合はせ躍るロボット        渡邉 常子

    幼らは月の雫に濡れもして         三神あすか

     ぶらりと揺れる棚の千生り         大江加代子

弐面

    危ふきは己がこころと指南力            硯水

     志功版画の菩薩優しく           山口 安子

    傍らに大型犬がおっとりと          八尾暁吉女

     信号変はり歩きだす人           小山 柚香

    念願のiphoneやっと手に入れて     城  依子

     UFO探す旅支度せん             加代子

    月読の仕掛けし恋の罠におち         佐藤ふさ子

     お多福睦び神楽めでたき            あすか

    雨上がり清やかなりし石畳             安子

     時計台ある白い洋館                同

参面

    羽根ペンにインク含ませ詩を紡ぐ          硯水

     ロゼの香りが琴線に触れ            暁吉女

    鼓笛隊山の湖畔に勢揃ひ           山川逸仙人

     鯰髭ありちょび髭のあり            あすか

    名苑をこんじきに染め花篝             常子

     浪速おぼろに夢屋繁盛              執筆

・2008年8月8日首尾

・「iphone」タッチパネル式の次世代ケーター

形式「スワンスワン」について。

アラビア数字22(句数)を二羽の白鳥に見立てる。春秋二句から三句。夏冬一句から二句。二月一花一鳥(鳥は非定座)。恋二句から三句(弐面か参面)。三つの面による序破急。


           第62回芭蕉祭特選

脇起半歌仙「山路来て」の巻          矢崎硯水捌

  山路来て何やらゆかしすみれ草        芭蕉

   帽子の鍔に止まる初蝶             矢崎 硯水

卓上でルーペを使ふ長閑さに           鎌倉 史子

図鑑のページ窓に向けつつ           武藤 さき

新任の地を月光ゲの照らすらん          山川逸仙人

鼻曲がり鮭くぐる鉄橋             近藤 たま

ウ 青鬼のお面を買ふて秋祭                硯水

鴨居にかけて恋の呪文を               史子

耳元の甘いささやき正夢か               さき

ときに自分を褒める葛餅              逸仙人

勤勉に仕事こなして旅に出む              たま

 伊勢にも寄って偲ぶ熊楠               硯水

嗄れ声のこだま響かす寒鴉               史子

 氷柱きらりと冴え渡る月               さき

あのときの金剛杖をさすりつつ            逸仙人

 スピッツじゃれて鞠を転がす             たま

わらんべに盃奪はれる花の宴              史子

 珍事も多き平成の春                 硯水

2008年5月31日起首

2008年6月23日満尾

河童連句会
      この作品の著作権は芭蕉翁顕彰会に帰属します


        第20回新庄全国連句大会優秀賞

半歌仙「G線上の」の巻              矢崎硯水捌

  軽鳧の子のG線上のアリアかな          矢崎 硯水

   ジャスミンの香を運ぶそよ風          三神あすか

  開き癖つきし詩集をひもときて          佐藤ふさ子

   燻べ色なる眼鏡おしゃれな           矢崎 妙子

  写真家は名月しかと写すらん           渡邉 常子

   虫鳴きしきる野辺の草叢            大江加代子

ウ 五右衛門が京・三条に茹だる秋             硯水

   罪になるまい心ぬすびと            八尾暁吉女

  ペルソナを付けてグラスを交し合ひ        城  依子

   さざなみ寄せる旅のラグーン          吉本 芳香

  宛先は岩礁小路うつぼ殿             小山 柚香

   生臭坊主ちゃんちゃんこ着て             妙子

  月寒く煎じ薬に舌を焼き             山口 安子

   秒に追はれて睨む盤面             山川逸仙人

  スパコンの思ひがけなき手強さに            依子

   知らん振りする脇の愛犬              暁吉女

山並みの花の裳裾のゆれる宵             あすか

   霞褥にねむる龍神                 執筆

    ・ペルソナ=仮面 ラグーン=潟

      2008年4月11日起首

      2008年6月7日満尾

河童連句会


    芭蕉翁顕彰連句大会入選  令和2年10月

脇起半歌仙「木曽の秋」の巻  矢崎硯水捌

送られつ別れつ果ては木曽の秋       芭蕉翁

列を正してとんばうの群れ      矢崎 硯水

月の客大吟醸を手土産に        杉本さとし

   寸暇惜しんで鼎談をせん          硯水

  ハ短調いつしか変はるト長調        さとし

   アロマを焚けば些かの涼          硯水

ウ 桜桃忌乳色の街彷徨ひて          さとし

   水晶のよな涙ぼろぼろ           硯水

  誰彼にすがりて仮面舞踏会         さとし

   小型拳銃挟むガートル            同

  海賊の多きカリブの海の旅          硯水

   聖樹囲んで歌ふ賛美歌          さとし

  電波飛び世界つながり月も冴え        硯水

   在宅勤務これは楽ちん          さとし

  ひもすがら猫撫で声で猫呼んで        硯水

   ふざけ鴉が屋根で代返          さとし

  花ふぶき見上げる空は万華鏡         硯水

   此岸彼岸をむすぶ初虹          さとし

令和二年六月十八日起首

令和二年六月二十七日満尾