「EVERYTHING MUST GO」 Review

Songs Composed and Arranged & Produced by Donald Fagen and Walter Becker



前作の「アゲインスト・ネイチャー」が、2000年2月リリースで、このアルバムが2003年6月リリースですので、3年4ヶ月ぶりのニューアルバムです。
前作は、再結成後の始めてのスタジオアルバムということもあり、話題作でグラミー賞選考委員会のおじさん達も「お帰り、復活おめでとう」て 感じでグラミー賞も4部門受賞しました。2000年5月には、3度目の来日をし、全国4ケ所5公演を行ない、6月から7月にかけて36ケ所を回るアメリカツアー を行ない、8月から9月にかけて15ケ所回るヨーロッパ公演までした精力的なスティーリーダンであった。
そして、このニューアルバムは、ツアーが終わり、2001年半ばからスタジオに入りレコーディングが始まった。
さて、ニューアルバムですが、固定メンバーによるライブ・レコーデイング(ベーシックトラックを一発録りし、ギター、サックスのソロなどを重ねてゆく) で行なわれ、レコーディング方式が、現在一般的なデジタルレコーディングでなくアナログレコーディングで録音された。(最高のハイファイの探求者の Roger Nichols,Elliot Scheinerらが挑戦したアナログ・レコーディング)その為か、今までのクリック音に 阻害されてきたグルーブが、このアルバムでは、アルバム全体が心地よいグルーブに溢れている。そして、そのグルーブに大きく貢献しているのが、ドラムスのキース・カーロックである 前作で、あのラテンの曲を叩いていたようですが、あまり目立つドラムでは無かった為チェックしていませんでしたが、他にも2曲「West Of Hollywood」 「Negative Girl」をレコーディングしていたようですが没になったようです。このアルバムでは、全曲叩いていて特に「Blues Beach」「Pixeleen」でシャッフルを 「The Last Mall」「Godwhacker」「Green Book」でのファンキーなグルーブを全開させている。べッカー、フェイゲンは、ドラムの善し悪しにこだわりが強くその出来次第で求める音を 現実にしていることもあり、キース・カーロックが、このアルバムをライブ・レコーディングすることを決断させた要因にもなっていると思われる。もちろん、多くのツアーを 経験しライブの音の心地よさを2人が再認識した事も想像できるが。



 1. the last mall

9・11の同時テロの影を歌詞から垣間見る事ができる曲。ベッカーのいつものトーンのギターが全編に聴かれる。 テッドのピアノが良い。今回のアルバムのキーは、アコースティック・ピアノの音が多くの曲に聴かれる事かもしれないと思っている。 (前作は、ローズとウーリッツァーが多かった)リズムは、ファンクなんだけどメロディー展開が複雑なのは、まさに、Steely Danです。 「KAMAKIRIAD」からブラスのアレンジもフェイゲンが行っているが、確実に自信を感じる。

 2. things i miss the most

歌詞は、50年代に思いを馳せ懐かしさに癒される内容、同年代の「おじさん」の共感を誘う。「The Talk,The Sex,Somebody to Trust,the Audi TT,The comfy Eames chair, The good copper pans,The 1954 Strat,The house on the Vineyard,The house on the gulf coast」      

 3. blues beach

アルバム発売前にシングルカットされた曲。フェイゲンのピアノのメロがキャッチーですね
現在ベッカーは、ハワイで暮しているが、70年代には、ビーチという言葉が似合わない2人でした。まあ、ブライアン・ウイルソンも ビーチは似合わないけどね。歌詞は、ブルースだが、リズムは弾んでいる。 シャッフルのビートに、フェイゲンの多重ボーカルとツアーでもお馴染みのCarolynのバッキング・ボーカルが気持ち良いナンバーです。      

 4. godwhacker

ちょっとべッカーのギターがうるさいかな(すみません)。さびのメロディーが良いです。フェイゲンがシンセでソロを取っています。 ドラムのキース・カーロックがこの曲でも好いぞ。


 5. slang of ages

ベッカーが、オリジナル・アルバムで初めてメイン・ヴォーカルを取った記念すべき曲。(ライブ盤のアライブ・イン・アメリカで自身のソロ「Book Of Liars」を 歌っているが、スティーリーダンのオリジナル・スタジオ盤では初めてである) ライブではお馴染みですが、粘っこいボーカルを聞かせる。歌詞はベッカーが歌うべきして 作られた曲、ベッカーのヴォーカルが上手く乗っている。「Drop me off in Groovetime」の歌詞ベッカーだよね。

 6. green book

green bookとは、政府刊行の旅行者向けガイドブックの事。この曲でもドラムのキース・カーロックとテッド・ベーカーのピアノが心地よいグルーブを作っている。 フェイゲンのシンセとベッカーのギターの掛け合いがある。この曲からラストの曲までの流れが好きです。フェイゲンのオルガンのプレーも好いですね。


 7. pixeleen

歌詞は、六本木のヌードル・ショップの床でずぶ濡れになった、ソウルフルなサイバークイーンのピクセリーンという女の子の話。 もちろん、スティーリーダンの歌詞の中に、日本の地名が出たのは初めてである。メロディーが綺麗な1曲、Carolynのバッキング・ボーカルのアレンジも良いね。   

 8. lunch with gina

良い曲が続きます、メロがよい、アレンジが良い、チューニングが難しいシンセのソロは?、フェイゲンのソロ「ナイト・フライ」の ニューフロンティアで、ハーモニカをプレイ 、「Katy Lied」からの付き合いのヒュー・マクラッケン(ギター)の 渋いギターが聴けます。彼はこのアルバムでは、スタジオ参加ミュジシャンのディレクター的存在だったようです。

 9. everything must go

アルバムのタイトル曲、1曲目と同様、同時テロ後のアメリカを歌った曲だと推測する。喪失感に包まれたバラード。サックスのソロは、このアルバムでほとんどのソロを取っていて、03年のツアーにも同行した、Walt Weiskopfです。「リアル・サイドを歩く時が来た、自尊心はどこかにいってしまった。すべてを売りつくすしかないようだ。」


Vocals,Rhodes,Wurlitzer : Donald Fagen  Bass,Solo guitar : Walter Becker
Drums : Keith Carlock  Guitar : Jon Herington  Hugh McCracken   
Piano,Rhodes : Ted Baker   Rhodes : Bill Charlap
Trumpet : Michael Leonhart  Tony Kadleck   Sax : Walt Weiskophf  Chris Potter
Trombone : Jim Pugh Roger Rosenberg Percussion : Gordon Gottlieb
Backing vocal : Carolyn Leonhart Cindy Mizelle Catherine Russell
Tawatha Agee Michael Harvey Ada Dyer
Engineers : Elliot Scheiner  TJ Doherty  Dave Russell  Roger Nichols



Reprise Records  ワーナーミュージックジャパン BMGWPZR-30009/10 CD+DVD ¥3,570(tax in)
http://wmg.jp/steely_dan/


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