インタビュー

研磨とはどういう加工ですか?
ガラスの表面を透明にする加工です。
精研削が終わった時点では、写真左端のようにレンズの表面は曇っています。
研磨することで写真右端のようにレンズ表面が透明になります。
表面粗さが光の波長の1/10くらいまで小さくなると、光の散乱が減少して透明になります。
この「表面粗さを小さくしてガラス表面を透明にする加工」が「研磨」です。
研磨はどういう原理で加工が進むのですか?
切削説や流動説などもありますが、主として「物理作用+化学反応」だと思います。
流動性もあるのですか?
わずかですが、あります。
研磨剤の役割は何ですか?
主にガラスを削り取る物理的な作用で、補助的に化学的な作用もあります
水の役割は何ですか?
ガラス表面に水和層を作る役割です。この水和層を削り取ることで研磨が進みます。
研磨と研削との違いは何ですか?
研削は削り取るのに対し、研磨は前述のような反応を使った加工で、結果として表面粗さに差が生じます。大雑把に言うと、透明になるかならないか、傷の集合体が見えるか見えないかの違いです。
これまでに印象に残った研磨はどのようなものがありますか?
カメラ用途では問題ない微細な傷でも、レーザー用途になると問題になる場合があり、検査の厳しさに驚いたことがあります。レーザー用途は外観(傷がないこと)が絶対条件です。
林さんは光学ガラスだけでなく、光学結晶の研磨も得意にされていますが、これまでにどのような光学結晶を研磨したことがありますか?
CaF2(蛍石)は数多く研磨しています。
ZnSe(セレン化亜鉛)は有毒なのでやっかいでした。
LiF(フッ化リチウム)の研磨は水が使えないので難しかったですね。
BaF2(フッ化バリウム)、Ge(ゲルマニウム)、Si(シリコン)、Al2O3(サファイア)、
ニオブ酸リチウム、石英なども研磨しました。
金属では、タングステン、超硬合金、ステンレスなども研磨しました。
柔らかい光学結晶はガラスとは違い、ニュートンリングが形にならず、磨くのが難しいのです。
光学結晶を扱うことで研磨を展開することができました。
水晶も研磨したことがありますが、結晶軸があるのでやっかいでした。
林さんは大学や研究所の先生とも交流があるようですが、先生方との交流でどのようなことを学びましたか?
視点が違う点です。ものの見方を変え、磨き方の組み合わせを考えればよりよい精度の追及ができる点が斬新でした。
試作に特化したのは何故ですか?
経済的な理由です。量産品は価格競争に陥りますが、試作なら技術力で競争できるからです。それにメーカーと直接取引できる点も仕事を行う上でやりやすいです。
最後に、「研磨の面白さ」について聞かせてください。
研磨の面白さは「やってみないとわからない」ですね。この手で加工しないとできないところに面白味があります。言葉にはできないところが魅力かもしれません。