<全身倦怠感について>
(ご注意:薬の使い方は一般的でない部分があります。効果は見られますが、エビデンスはありません。そのことも踏まえた上でご使用下さい)
全身倦怠感(だるさ)についての説明


 がんが身体に与える影響の中で、全身倦怠感(だるさ)は非常に多くの人にあらわれる症状です。このだるさは、単に身体の力が少なくなったからということで説明できるものではない、「身の置き場がない」ほど強いだるさになることもあります。
 だるさを説明するのは難しいのですが、次のように考えると理解しやすいかもしれません。
 普通に歳をとっていく場合には、左の上の図のように脳を中心とした神経系の力の減り方(歳の取り方)と、身体の力の減り方は平行しています。これならば、身体の力の減り方も「仕方ないか」と納得できる程度におさまります。
 ところが、がんが進んで全身に影響する程度になってくると、身体の力の減り方は病気がない場合に比べて速くなります。頭は基本的にがんが進んでも力が落ちないので、力のレベルとしてはどんどん差が開いていくことになります。
 頭が「私の身体は○○歳だから、これくらいの元気があるはず」と思って神経を通して身体に指令を出しても、身体の力が減っているので、思うように動いてくれません。この「頭で思う体力」と「実際の体力」のずれが大きくなってくると、「だるさ」が強くなるようです。
 
<全身倦怠感の治療>

 全身倦怠感の治療は、簡単ではありません。なぜなら、病気によって起きている変化が元になっているからです。
 身体の力を増やすことが可能な場合は、その治療が倦怠感をやわらげます。余分に下がった体力を少し持ち上げると考えるとわかりやすいでしょう。そのためには、栄養のたっぷり入った点滴や栄養価の高い食べ物が役立つかもしれません。ただし、がんがある程度以上の状態に進むと、栄養が多いとがんも余分に成長してしまうため、身体が食欲を抑えて栄養を少なくし、がんと細く長く共存しようとするために食欲が減るという説があります。その状態なのかどうかを簡単に測定する方法はありませんが、点滴をしたり頑張って食べてみたら余計に具合が悪くなるような場合には、食欲を絞って身体のバランスを取ろうとしているのかもしれません。その状態に「食べなきゃ元気にならないから」と食べることを強要するのは、本人にとっては苦痛でしかない場合もあります。
 だるさに対してステロイド剤などのホルモン剤を投与すると、効果がある場合があります。ステロイド剤は、身体の中にある「元気を引っ張り出してくる」ような効き方をします。また食欲を増やす働きもあるので、身体の中の元気が引っ張り出されて、それを補うように食事の量も増えれば、エネルギーの回転が良くなり元気が出てきます。しかし、身体の中に少ししか元気がなくて増やしていくのが無理な状態の場合、最初の何日かは元気が出ますが、引っ張り出してくる元気が枯渇してしまうとステロイドの効果もなくなってきます。引っ張り出してくる元気がない場合には、余計にだるくなることもあります。
 体力がかなり減ってしまって、どうにも身の置き場もないぐらいだるい時には、精神安定剤とか鎮静剤などの神経を休ませる薬が、効果がある場合があります。
 このような薬を使うと余計だるくなりそうに思いますが、左の図のように考えると納得がいきます。つまり、頭で考える体力と実際の体力のずれが大きくなっていて、身体の力を増やすことが難しいので、頭を少し休ませて神経系のレベルを体力のレベルに近づけることで、ずれが少なくなりだるさが軽くなるということです。
 減っている体力に頭と神経のレベルを合わせていく治療になるので、場合によっては楽になるまで薬を増やすとずっと眠ったままになることもあります。一般的には、眠ってしまう薬の量の半分か3分の1程度で、だるさはかなり楽になる印象があります。場合によっては、全く眠くならずにだるさが楽になった人もいます。しかし、どれくらいの薬を使うと楽になるかは、やってみないとわからないというのが正直なところです。少なめの量から少しずつ増やしていって、眠気とだるさのバランスを見てちょうどいい量を決めるという方法もあります。
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