<肝不全(肝臓の力が落ちていること)の説明>

<肝臓は身体の状態を保つための工場>

 肝臓は腹部の右上に位置する、1.2キロほどもある大きな内臓です
 肝臓は身体を良い状態に保つために、たくさんの仕事をしています。その中でも大切な二つ、全身に栄養を配る働きと、要らないものを処理する働きについて、まず説明します。
 一つ目は、全身の細胞に栄養を配ることです。口から食べた栄養は、消化の働きによって細かく分解され、小腸から吸収されます。吸収された栄養は、門脈という専用の血管を通って肝臓に運ばれます。肝臓に入った栄養は、フィルターのようになっている肝臓の細胞(肝細胞)の間を必ず通ってから、全身を回る血液に合流します。
 フィルターを通る間に、肝臓はさまざまな仕事をします。栄養を肝細胞に取り込んだり、全身の細胞が使える栄養に作り替えたり、身体にとって有害なものは全身へ回らないように処理したり、余った栄養を蓄えたりします。つまり肝臓は、全身の細胞が使うエネルギーを一手に供給する、エネルギー工場の役割をしているのです。
 二つ目の仕事は、身体にとって不要になったものを処理することです。身体の細胞が生きていくためには必ずエネルギーを消費します。エネルギーを使うと、老廃物(燃えかす)が出ます。老廃物は身体にはじゃまなので、処理する必要があります。老廃物の全てを肝臓で処理するわけではありませんが、ほとんど肝臓で処理されます。
 肝臓の二つの働き、「全身の細胞に栄養を供給する」ことと「要らない老廃物を処理する」ことは、人間が生きていく上でとても大切な働きだということになります。
<肝臓の力が不足した時の症状>

 肝臓の力が減ってくると、栄養が足りないことによる症状と、要らないものが身体にたまってくる症状の両方が出てきます。
 栄養を供給する能力が減ってくるので、身体の力がうまく出なくなります。肝臓以外が悪くない時は、自覚的にはあまり具合が悪くないのに身体の力が出ない、おかしな感じになります。さらに進むと、立ち上がったり起きあがったりするのも大変になってきます。
 また、老廃物を処理できずに、血液の中にたまってきます。その老廃物は、神経を余分に刺激したり、神経の働きを妨げたりします。そのため、話すテンポが遅くなったり、まわりのことを認識する力が減っておかしなことを言ったり、さらに混乱した状態になることもあります。
<肝不全の症状が出てくると、急速に悪化するように見える>

 激しい運動をした時などにも全身にエネルギーを供給するために、肝臓の能力には大きな余裕があります。普通に生活をするのに必要な能力の5倍くらいの能力があるといわれます。もともとの肝臓の力の20%ぐらいに力が下がらない限り、全身への影響は出てきません。左の図を見るとわかるように、病気によって肝臓の力が減り始めても、症状が出るまでにはかなりの余裕があることになります。
 逆に考えると、肝臓の症状が出始めた時には、余裕を食いつぶす期間が終わって、いよいよ肝臓が悲鳴を上げ始めたと考えなければいけません。そうなった時、肝臓はすでに余裕を使い果たしており、これから先は残っている全部の力を使っても、全身をきちんと養っていくことができなくなります。また、肝臓を守るための薬を使って治療をしても、病気はそれまでと同様に進んでいくので、肝臓の力はより少なくなっていきます。このような理由で、肝不全の症状が出てくると、急速に悪化するように見えるのです。

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