<浮腫(むくみ)について>

 浮腫(ふしゅ=むくみ)というのは、血管の外の細胞のまわりの水分が、正常より多くなった状態のことをいいます。細胞のまわりの水分のことを「組織液(そしきえき)」と呼びます(他の呼び方もありますが、ここでは組織液として説明します)。

<正常な状態では>
 血管の中を流れている血液の、液体の部分の一部が、血管の壁を通って血管の外に出ます。これが組織液です(水色)。組織液は細胞に栄養を配ったり、酸素を配ったり、細胞が活動してできた老廃物(ゴミ)を流し去ったりする重要な役割をしています。
 動脈からしみ出してきた組織液は、細胞のまわりで仕事をしたあと、静脈の壁を通って血管に戻りますが、戻りきれなかった水分は、リンパ管という下水管のような働きをする管を通って、排水されます。このようにして組織液が多くならなければ、むくむことはありません。

<むくんだ状態では>
 何らかの原因で組織液のできる量が多くなるか、静脈やリンパ管に流れる量が少なくなると、組織液の量が多くなります。これがむくんだ状態です。

<浮腫の原因>
 浮腫の原因にはさまざまなものがあります。
 全身の栄養状態が良くない時には、血管の中に水を保っておく働きのある「アルブミン」というタンパク質が少なくなっています。すると、動脈では水分が血管の外に出やすく、静脈では血管の中に戻りにくくなります。リンパ管で排水しても追いつかない時は、浮腫になります。アルブミンは肝臓で作っているので、肝臓だけが弱っている時にもむくむことがあります。
 リンパ管がうまく流れないためにむくむこともあります。乳がんの手術の時には、脇の下のリンパ節を取ることが多いのですが、リンパ節というのは下水管の途中にある浄化槽のようなものなので、取ってしまうとリンパ管の流れが止まってしまい、腕がむくみます。リンパ管は壁が薄くてつぶれやすい管なので、その他にもリンパ管の流れを妨げるような状態になっていれば、浮腫が生じます。
 腎臓が良くない時には、身体の中の水分を尿として外に出すことができずに、水分がだぶつきます。腎臓が原因でむくむのはこのためです。
 心臓が良くない時にも浮腫は生じます。心臓がよく働いていれば静脈の血液は滞ることなく流れますが、心臓の働きが悪いと静脈の血液の流れが悪くなり、静脈の圧力が上がって組織液が静脈に戻りにくくなります。また、リンパ管も最終的には静脈に流れ込みますが、静脈の流れが悪いとリンパ管の流れも悪くなり、浮腫を生じさせます。

<浮腫の治療>
 浮腫の治療は、原因によってさまざまです。栄養状態を改善すれば良くなる場合は、そのための治療をします。心臓・腎臓などがむくみの原因になっている場合は、それぞれの治療をします。肝臓で作るべきアルブミンが不足していてむくむ時は、アルブミンの点滴をすることもありますが、ある程度以上全身の状態が悪くなっているとアルブミンを点滴しても効果が出ないという学会報告があります。
 利尿剤(尿を多く出して浮腫を軽くする薬)もよく使われます。漢方薬も効果があります。ただし薬で浮腫を完全にコントロールできないことも、時々あります。
 リンパ管の流れが悪くてむくむことを「リンパ浮腫」といいます。リンパ浮腫は根本的な解決が非常に難しいむくみです。手術で治す漫画もありますが、通常の医療機関でおこなうのはまず不可能ですし、十分な効果が出ないことも多々あります。浮腫がさほど気にならない時はそのままで、浮腫が気になる時はリンパマッサージというマッサージをして、きついストッキングなどで押さえることで浮腫を軽くする方法もとられます。
 全身の体力が少なくなっていて、栄養や水分を受け止められる量が減っている時に、ずっと同じ量の点滴をしていると、次第にむくんできます。このような場合、身体の力に応じて点滴の量を少なくしていった方が、むくみも軽く抑えられますし、だるさなどの症状も少ないと報告されています。
 点滴を全くしていなくても、むくむことはあります。そのような場合には、苦痛につながっていなければ、命にはかかわらない症状なのでそのまま様子を見ることもあります。  



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